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紹介料の支払い(1) [弁護士倫理]

 弁護士は、依頼者を紹介してあげたことに対し、紹介料を受け取ってはいけないことになっています。逆に、依頼者を紹介してもらったことに対し、紹介者に紹介料を支払うこともいけないことになっています(弁護士職務基本規程13条1項、2項)。違反は、懲戒の対象です。

  ところで、不動産取引の際には、紹介者が不動産仲介業者にお客さんを紹介してあげ、その紹介してあげたお客さんと仲介業者との間で契約が成立した場合、不動産仲介業者はお客さんを紹介してくれた人に紹介料を支払うという慣行があります。

そのため、弁護士が不動産の売却に関わった場合、律儀にも、弁護士に紹介料を持ってくる不動産仲介業者の方がみえます。が、さきほど述べましたように、弁護士には「紹介料を受け取ってはいけない」というルールがあるので、業者の方には「紹介料を受け取れないことになっている」とお伝えし、お引き取りいただくことになります。

弁護士と不動産取引で初めて関わった業者の方は、弁護士にそんなルールがあることをご存じではありません。

そのため、「紹介料を渡せば、弁護士も多少は潤うことになるのだから、紹介料を喜んで受け取ってくれるだろう」と思って、満面の笑みで、弁護士に紹介料を持参し、差し出してみたところ。

弁護士からの予想外な「受け取れない」という返事を聞き、業者の方は「何が起こったんだ」という感想を持たれるようです。

業者の方の中には、「弁護士が紹介料を受け取らないのは、弁護士が今回の取引の件で自分に不満を持っていて、今後は取引しないことを分からせるために、いじわるで、『紹介料を受け取らない』と言っているんだ」と誤解をして、「それは困る」と、是が非でも、紹介料を弁護士に受け取らせようする人もいるそうです。

商売をしている人の感覚からすると、「紹介者からお客さんを紹介してもらい、その紹介してもらったお客さんとの間で取引が出来たのであれば、それは、紹介者がお客さんを紹介してくれたからこそのことだ。取引することが出来たのも、売上を立てることが出来たのも、儲けも出すことが出来たのも、正に紹介者のお蔭じゃないか。

そんな紹介者に報いるのは、人として当然のことで、紹介者に紹介料をお支払いするのは、何も問題はないはずだ。紹介者に紹介料をお支払いさせていただくのは、正当な取引慣行のはずだ。それなのに、紹介料を受け取れないという弁護士の考え方はおかしいんではないのか?」と言うものではないでしょうか。

弁護士が紹介料を受け取っていけない理由について、解説「弁護士職務規程」(自由と正義2005年[平成17年]vol.58臨時増刊号)では、要約すると、「弁護士が、依頼者の紹介をしたことについて、紹介した先から紹介料を受け取ってもいいということにすると、弁護士は依頼者を紹介をすることにより紹介料を受け取ることも目論んで事件集めをすることことになってしまう。そんな事態となれば、弁護士の品位は失われることになるので、弁護士が紹介料を受け取ることを禁止する趣旨だ」という内容の解説がなされています。

この解説が、説得力のあるものではあると言えるかどうかについては考え方が分かれるものだと思います。

ですが、これが弁護士の現在の紹介料に関するルールであることには間違いなく、弁護士としては遵守しなければなりません。

(参考) 弁護士職務規程

(依頼者紹介の対価)

第13条 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。

2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。


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コメント 2

NO NAME

>そのため、弁護士が不動産の売却に関わった場合、律儀にも、弁護士に紹介料を持ってくる不動産仲介業者の方がみえます。が、さきほど述べましたように、弁護士には「紹介料を受け取ってはいけない」というルールがあるので、業者の方には「紹介料を受け取れないことになっている」とお伝えし、お引き取りいただくことになります。

不動産仲介業者に弁護士が「客」を紹介した場合、その「客」は弁護士職務基本規程に言うところの「依頼者」に含まれるのでしょうか。

>「弁護士が、依頼者の紹介をしたことについて、紹介した先から紹介料を受け取ってもいいということにすると、弁護士は依頼者を紹介をすることにより紹介料を受け取ることも目論んで事件集めをすることことになってしまう。そんな事態となれば、弁護士の品位は失われることになるので、弁護士が紹介料を受け取ることを禁止する趣旨だ」

不動産仲介業者に「客」を紹介することは不動産取引の手助けであって、不動産取引=「事件」なのでしょうか。
by NO NAME (2013-11-05 23:45) 

tomo-law

NO NAMEさん
(前半)
不動産屋に紹介をした「客」が、受任事件とは関係なければ、弁護士職務基本規程13条2項の「依頼者」には当たらないと理解します。
(後半)
不動産の売主である依頼者の不動産を売却することが、弁護士にとって、受任した法律事務(事件)の全部ないし一部であるとの理解がされています。その意味で、不動産取引=弁護士のお仕事(の一部) ということになると(私は)理解しています。
弁護士による「紹介料」の受領は、本来、依頼者に渡るべき、お金の一部を、「紹介料」名下に掠め取り、その分だけ依頼者が損をすることになるのと同じである。
弁護士は、不動産屋から紹介料を貰うのではなくて、依頼者と取り決めをした上で、依頼者から ちゃんと報酬としてもらいなさい、というのが職務基本規程13条2項の趣旨ということなのでしょうね。

by tomo-law (2013-11-06 08:57) 

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