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年金とインフレ目標 [旬の話題]

日銀は2月14日の金融政策会合で、金融政策として当面、物価上昇率1%を目指す方針を全会一致で決定しましたが、これによって日銀はインフレ目標の導入を決めました。

日銀政策決定会合20120214.jpg   でも、この日銀のインフレ目標1%の実現の可能性について、市場は疑問視しているとのことだそうです。

理由は、1990年代末以降、物価が低迷するデフレ状況が目立ち、日銀が今回目標に掲げている消費者物価指数が前年比で1%を超過したのが、2008年(平成20年)の1.5%だけしかなく、しかも、その理由が、世界的な原油高という特殊要因が働いたためだったからで、日銀にはインフレ目標1%を自力で達成した実績が一回もないという理由からだということです。

ここ3年だけを見ても、3年連続のマイナスを記録しており、日銀の能力に ? が、明々と灯っているというわけです(毎日jpの2月15日の「日銀:『インフレ目標』道険し 『当面1%』市場は実現疑問視」)。

(上の写真は「2月14日の金融政策決定会合に臨む日本銀行の白川方明総裁(中央)ら=東京・日本橋の日銀本店」だということで、毎日jpの記事から引用したものです。)

ころで、デフレは、貨幣価値を増大させます。そのため、定額の年金を受け取る年金生活者にとっては、デフレはwelcomeです。でも、反対に、貨幣価値を減少させるインフレはNOと言うことになります。

日銀は(日銀が望むと望まぬとにかかわらず)、間違いなく1990年代末から今日まで、10年以上にわたって、日本経済をデフレ状態に安定的に保ち、年金の価値を高めて年金生活者を擁護してきました。

今回の日銀のインフレ目標の導入は、その日銀が(実際にその目標が実現できるかは別として)、『年金生活者の守護神の地位から降りる』と宣言したとの見方をすることも可能だといえます。

ころで、年金については、マクロ経済スライドという仕組みが取られいますが、物価が前年比1%上昇したぐらいの場合には、年金受給額の調整(つまり、加算)は、ほぼ なし  ということになります。

また、生活保護制度では、生活扶助額に物価の上昇を連動させる仕組みとは、そもそも、なっていません。そのため、後追いで生活扶助の額を見直すということになり、物価上昇後、見直しまでの間、生活保護受給者の購買力は減少することとなり、受給者は打撃を受けることになります。

日銀のインフレ目標1%が、市場の予測に反して、実現されてしまうと、年金生活者、生活保護受給者は不利益を被ることになります。

その数ですが、年金受給者は約3800万人(予測)、生活保護受給者は207万人。したがって、4000万人程度(人口の3割程度)の人が不利益を被る可能性があるというわけです。

本弁護士連合会は、大阪市が今月9日、市職員に対し、政治活動、組合活動等についてアンケートを実施した件について、素早く、16日に「大阪市のアンケート調査の中止を求める会長声明」を発表しました。

16日がアンケートの提出期限だったとので、声明を出すのであれば16日中でないと意味がなかったわけですが、極めて素早い対応でした。

しかし、14日の日銀のインフレ目標に対しては、1週間経過した今日になっても、「国は、インフレ目標を導入が導入されることによって、年金生活者や生活保護受給者への生活に影響を与えないような制度的な配慮をせよ」といった声明を日弁連は出していません。

日本弁護士連合会は、人権擁護活動の展開として、貧困問題対策本部を設けて貧困問題に力を入れているとしていますが、どういうことなのでしょうか(日弁連の活動)。

年金支給額を年間50兆円だとすると、その1%は5000億円。生活保護支給額を年間3兆2626億円だとすると、その1%は326億円。

日銀のインフレ目標1%は、4000万人に影響を与える可能性があるというだけでなく、これだけのお金の価値を消失させることになるわけでもあります。

この日銀のインフレ目標の導入のインパクトは、「人権問題として、大阪市長のアンケート、光市の判決と、遜色ないか、それよりも勝っている」と私は考えますが、日弁連はそうは考えないということなのでしょうか。

それとも、単に、声明を出すための組織決定が遅れているというだけなのでしょうか。


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