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労働組合のコンプライアンス [はてな?]

昨日(7日)、大阪市交通局(職員数約6800人)が、内部調査によって、大阪交通労働組合(大交、中村義男委員長)が交通局の人事に介入していたこと、昨年11月の市長選を巡り、選挙活動への職員の関与を示す庁内電子メール延べ689件が見つかったことを発表したということです(毎日jpの8日の記事 「大阪市:労組が人事介入 交通局発表」)。

労組側のコメントは、朝日、産経、毎日の記事にはありませんでしたが、読売には載ってました(yomiuri onlineの8日の記事 「大阪市交通局 人事を労組と事前調整 内部調査で判明」)。

読売の記事では、「大交が加盟する市労働組合連合会の幹部は、『ショックを受けている。詳しいことがわからないので何とも言えない』と話した。」ということになっています。

幹部氏が「何に」ショックを受けたのか、この記事からは、はっきりしません。

私は、大阪市労働組合連合会の立場は、

「労働組合が、経営に参加していくことは許されることである。したがって、大阪交通局内の人事について大交と局側と事前調整することは、良いことではあれ、悪いことではまったくない。」、

「むしろ、大交が関与することによってこそ、交通局内の(コーポレート・)ガバナンスが図られていくことになる。」

というものだと、てっきり思っていました。

コメントを述べた幹部氏も、連合会の幹部であるわけなので、当然、「大交が交通局の人事に関与することは何も悪いことではない」という考えをお持ちだと思っていました。

そうだとすると、幹部氏がショックを受けた理由は、組合が人事に関与していた点についてではなく、その幹部氏が、カヤの外に置かれていて、「大交が交通局の人事に関与していたこと」について、何も聞いていなかった点にあったということとなります。

しかし、そんな何を聞いてなかったということはありえないでしょう。

もしかすると、私の「組合側は『人事への関与は何も悪いことではない』と理解しているはず」との理解が、間違った思い込みで、組合は「人事への関与は悪いこと」と思っているのではないかとも、思えてきました。

どちらなんでしょう?

読売の記者さんには、幹部氏にしっかりと突っ込んだ追加取材をしてもらいたいと思います。

 ちなみに、20年前ほどは、労働組合の機能は(1)相互扶助的機能、(2)経済的機能、(3)政治的機能の3つの機能があると言われていましたが、

昨今は、上の3つの機能のほかに組合の機能には「経営参加機能」もあると言われているようですね。

近畿大学の西谷敏教授の「労働組合法第2版」(3頁)では、経営参加機能について、次のように解説しています。

経営参加機能

労働組合は、様々な形で経営に参加する。ドイツのように、株式会社などの監査役会への労働組合代表の参加が法定されている国(とくに1976年共同決定法)もあるし、日本のように労使協議会が事実上その役割を果たしている国もある。

経営参加の動機のひとつは、労働条件の維持・改善のために経営のあり方に関与しようとするものであるが、今日では、より積極的な意味での労働組合参加(いわゆるコーポレートガバナンスの一環)が論じられている。

とくに、企業の犯罪行為や反社会的行動が頻発するなかで、労働組合が経営に対するチェックの機能を果たすことが社会からも強く期待されている。

労働法の世界では、「労働組合は存在自体が善である」というのが、これまでのスタンダードだったんですね。

その意味で、大阪市の職員労組の問題は、労働組合という組織自体のコンプライアンス、(コーポレート)ガバナンス、あるいは社会的責任(CSR)という労組法上の新たな研究対象を提供したという積極的な意味があると言えそうです。

野村修也先生が頑張っているのも、そのためなのではないかと思います。

ここで市労働組合連合会等側が、「組合から独立した委員のみで構成される第三者委員会を設置し、失墜した組織の信用を回復するために、徹底した事実調査と原因究明をしてもらい、第三者委員会に再発防止等を提言してもらう」と表明したら、組合も多くの人の支持を得ることができるのではないかと思いますが、そんな動きは見受けられないようです。今回は、黙ったままやり過ごすだけではすまないだろうと思いますが…。


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