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配当金の除斥期間 [豆知識]

上場会社の多くでは、配当金の受取りを放置していると3年の経過で配当金を受け取ることができないこととなってしまいますが、ご存じでしたか?

株主の会社に対する配当金支払請求権の時効期間は10年です(民法167条1項)。

でも、会社が、定款で「配当の効力発生日から満3年経過したときは、会社は(株主に対する)配当の支払義務を免れる」という規定を定めれば、株主の配当請求権の行使期間を制限できるとされています。

実務は、定款に除斥期間を定めれば、その期間が短すぎない限り、有効だという理屈の下、除斥期間3年の定款の定めも有効だとしています。

そして、この実務に対し、「裁判所もお墨付きを与えていますよ」という意味で、必ず、大審院昭和2年8月3日判決民集6巻484頁以下が引用されることとなっています。

日は、判決では実際、何が判示されているのかを調べるため、大審院昭和2年8月3日判決をチェックしてみました。

この大審院の事案は、株主の配当金請求権の行使を5年とする定款が有効かが争われた事案ですが、

大審院は、

定款の定めが、株主権の権利の本質に反せず、公序良俗に背かない限り、定款は有効であるとした上で、

除斥期間を5年とする定款も有効である

と判示しています。

しかし、この大審院判決が判断しているのは、除斥期間5年とする定款の有効性であり、除斥期間を3年とした定款の有効性などは何も判断していません。

当たり前ですよね、争点になっていないんですから。

確かに、権利の本質に反せず、公序良俗に背かない限り、定款の除斥期間の定めは有効であるとする、この大審院判決のロジックからすれば、会社が除斥期間を3年とする定款を定めたとしても、大審院は、除斥期間5年の場合と同様に、定款は有効だという判断を示すであろうことは十分推測できるところがと言えます。

でも、それは一つの解釈(=意見)であって、大審院昭和2年8月3日が判示していること(=事実)ではありませんよね。

したがって、配当金の除斥期間を3年とする定款の定めを有効と判断した判例として大審院昭和2年8月3日を引用するのはミスリードだということになりそうです。


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