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尖閣沖漁船衝突事件は終結?  [検討]

那覇地裁(鈴木秀行裁判官)が、昨日(7日)、尖閣諸島沖で平成12年9月に起きた中国漁船衝突事件で公務執行妨害罪で強制起訴された中国人船長(42)の件で、検察官約の指定弁護士2人の指定の取消決定をしたということです(YOMIURI ONLINE「刑事事件としての手続き、終結…尖閣沖漁船衝突」)。

指定弁護士は中国人船長を公務執行妨害で那覇地裁に起訴しましたが、中国人船長に起訴状謄本が送達できず、先月(17日)に公訴棄却(刑訴法第329条1号、同法第271条第2項)なっていました(朝日com. 「尖閣衝突、中国船長の公訴棄却 期限内に起訴状送られず」)。

刑事訴訟法第339条   左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。

第271条第2項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。

刑事訴訟法第271条

1項 裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。

2項 公訴の提起があつた日からニ箇月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。

中国側が協力しないため、指定弁護士が中国人船長を再度、起訴したとしても、起訴状が送達できないことが予測されます。

中国人船長に対する公務執行妨害罪の審理が始まらないのだから、指定弁護士の指定の取り消しは当然と言えば当然と言えます。

読売が「これで刑事事件としての手続きは事実上終結した。」と報じているのは、そういう意味なのでしょう。

ですが、もし、将来に、中国人船長の公務執行妨害罪の公訴維持が可能となった場合(例えば、中国政府が態度を改め、起訴状の送達に協力することとなった場合。あるいは、中国人船長が日本に入国し、公訴維持が可能な場合など。)には、

那覇地裁は、指定弁護士を指定して、その指定弁護士に中国人船長を起訴させて公訴を担当させなければいけないはずです。

仮に、那覇地裁が、中国人船長の公訴維持が可能となったのにもかかわらず、指定弁護士を選任せずに、放置しておくことなど許されません。

もし、裁判所が指定弁護士の指定もしないで放置しているのであれば、検察審査会法第41条の9第1項(ないし同法第41条の11第2項)違反になると理解します。

 読売は「これで刑事事件としての手続きは事実上終結した。」としていますが、私に言わせれば、「手続は、当面 、何も進展しないことになった」と報じるべきだと考えます。

 この点共同通信は、「検察審査会法の規定上は新たに弁護士を指定する必要があるが、起訴状が送達できる見込みは薄く、公判を開くのは困難な状況だ。」と報じていますが、

こちらの表現の方が正確だと言えます。

(補足) 

指定代理人の指定の取り消しの根拠規定について

検察審査会法を見ますと、第41条の11第1項には、

「指定弁護士が公訴を提起した場合において、その被告事件の継続する裁判所は、当該指定弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、いつでもその指定を取り消すことができる。」

と規定されています。

そのため、私は、那覇地裁が「再起訴しても送達は見込めず、指定弁護士の職務遂行は期待できない」として、検察審査会法第41条の11第1項の「特別の事情がある」と判断して、指定弁護士の指定を取り消したのだと思っていました。

ですが、 毎日jpの記事(「中国漁船衝突事故:指定弁護士の取り消し決定/沖縄」)によりますと、

那覇地裁の指定弁護士の取り消し決定要旨では、中国側の送達協力の拒否姿勢から、再起訴したとしても起訴状送達が見込めないことは明らかと判断。

検察審査会法41条の9第4項の「指定弁護士がその職務を行うに適さないと認めるその他特別の事情がある」として、公訴の提起と維持の指定を取り消した。

ということで、那覇地裁は、指定弁護士の取り消しの根拠規定は検察審査会法第41条の9第4項であるとしているようです。

検察審査会法第41条の9第4項と、第41条の11第1項の全文を引用しましたが、

二つの規定の違いは、

第41条の9第4項は「公訴提起の指定弁護士の指定の取り消し」を、

第41条の11第1項は」公訴提起の指定弁護士の指定の取り消し」を、

規定している点です。

那覇地裁は、

「中国人船長の第一回目の起訴は公訴棄却で終了しているので、指定代理人の指定の取り消し時点では、公訴提起前の状態にある」

との理解で、検察審査会法第41の9第4項での指定弁護士の指定の取り消しをしたということになります。

検察審査会法第41の9

第1項  第四十一条の七第三項の規定による議決書の謄本の送付があつたときは、裁判所は、起訴議決に係る事件について公訴の提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定しなければならない。

2項(略)

第3項(略)

第4項  第1項の裁判所は、公訴の提起前において、指定弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、いつでもその指定を取り消すことができる。

第41条の11

第1項  指定弁護士が公訴を提起した場合において、その被告事件の継続する裁判所は、当該指定弁護士がその職務を行うに適さないと認めるときその他特別の事情があるときは、いつでもその指定を取り消すことができる。

2項  前項の裁判所は、同項の規定により指定を取り消したとき又は審理の経過その他の事情にかんがみ必要と認めるときは、その被告事件について公訴の維持に当たる者を弁護士の中から指定することができる。


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