パチンコ店従業員の特別背任罪 [検討]
パチンコホールの経営者の方から、
「スロット台の責任者が、客に高設定の台を教えているようだ。
従業員を とっちめてやることは出来ないか」
という内容の相談がありました。
従業員に対して、民事上の損害賠償をするにせよ、何をするにせよ、
その前提として、
「従業員が客に、当たる確率が高いスロット機を教えている」
と証明できる 確たる証拠 を握った上での話です。
実際には、証拠の収集が難しいわけで、
それが出来なければ、客と従業員をとっちめてやるなど、夢のまた夢の話ではあるのですが … 。
では、従業員が客に設定を教えている証拠が手に入ったとして、客やスロットの責任者を刑事上の責任に問うことは可能でしょうか ?
(民事上の損害賠償は当然可能ですので、すっ飛ばします。)
客は通常の遊戯方法でスロットをやっているだけで、体感機を使っているわけではありません。
不正な方法でコインを取ったとは言えなさそうです。
被害届をだそうとしても、刑事には「窃盗(罪)とはならない」 と言われそうです。
他に、詐欺との構成も考えられますが、やはり、刑事には「詐欺(罪)も無理でしょう」と言われて、相手にされなさそうです。
困ったときのインターネット検索をしてみたところ、
平成21年(2009年)に静岡県警富士署、翌22年(2010年)に兵庫県警姫路署が、
パチンコ店の従業員の(会社法の特別)背任という構成をとり、
従業員と客を逮捕している事例があることが分かりました(pachimura.comの公式ブログ「公式ブログ/高設定教えて特別背任 」参照)。
判例検索(私の場合はEOCの「弁護士秘書)で検索をかけてみましたが、パチンコ店従業員の特別背任の裁判例は見当たりませんでした。
そのため、逮捕後、正式な公判請求がされたのかどうかを含め、確認はできませんでした。
ですが、 兵庫県警姫路署の逮捕は、静岡県警富士署の事件がどう処理されたのかを知った上でのものだったと考えられます。
静岡県警富士署の事件では、パチンコ店の従業員と客らは裁判で有罪となっているものと推測できます。
今回の相談のケースは、
従業員はスロットの責任者
です。
持って行き方次第では、警察も
特別背任で捜査してくれないわけでもなさそうです。
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