TPP参加は、どの時点での GDP 3.2 兆円分を押し上げるのか ? [困惑]
政府は、先週15日(金)夜、
日本がTTPに参加した場合、国内総生産(GDP)が 実質 3.2 兆円(0.66%)増加するが、国内の農林水産業の生産額は3兆円減少する
との試算を公表しました。
内閣官房のホームページの「経済連携・TPP関係情報」では、この公表に関連した資料として、
「統一試算資料」【PDF:183KB】 と 「農林水産物への影響試算の計算方法について」【PDF:444KB】 (修正版)
を公表しています。
このうち、「統一試算資料」 は、
GDPを、消費が3.0 兆円(0.61%)、投資が 0.5 兆円(+0.09%)、輸出が2.6 兆円(+0.55%)、それぞれ押し上げる一方、
輸入の増加 が GDPを 2.9兆円(0.60%)押し下げ、
トータルで 3.2 兆円のプラスになること、
を説明したもので、内容を分かりやすいようにするためなのか、下のポンチ図が付いています。
もう一つの「農林水産物への影響試算の計算方法について」 の方は、
農産物の主要品目ごとの生産額の減少額がどれほどかを試算し、農林水産業で総額 3 兆円の生産額が減少することを説明する資料となります。
この15日の政府のTTPに関した公表内容の テレビ報道 を見ていると、
GDPが 3.2 兆円増えること
が強調されています。
GDPの増加 3.2 兆円 > 農林水産業の生産額の減少 3 兆円
となるので、「(農家への補償を前提として、) TPP参加もやむなしか」と思ってしまうような報道内容です。
ですが、朝日新聞デジタルの記事「TPP 、関税ゼロなら農業打撃 GDP は増加 政府試算」 を読んでみると、
GDP3.2兆円増加の試算結果は、
TTP に参加しない場合と参加した場合とを比べ、しかも、10年後のGDPの差額を計算した結果
によるものであるとのことです。
「TPP協定発効後、毎年、GDPが 3.2兆円増加し、その増加が持続していく」
という試算結果を表しているわけではないようです。
「統一試算資料」 には、それに関した脚注など、何もありません。
この朝日の「10年後」の部分は、
TPP担当相に任命された甘利明大臣が、3月15日の夜に、試算を公表の際に、口頭で補充説明をして、明かにされたことなのでしょう。
今回、試算について喧伝されている 「GDP 3.2兆円増加」 は、
下表末尾の「 差 3.2 兆円 」の部分だけを説明した 数字だということになります。
平成22年に公表されていた「EPAに関する各種試算」では、下に同試算8頁の試算総括表を揚げておきますが、
1 内閣官房は、マクロ経済効果分析の結果、 TPP参加により実質GDP 2.4~3.2兆円増。
2 農林水産省は、TPP参加により、農業及び関連産業は GDP 7.9兆円程度減少。
3 経済産業省は、日本がTPP等に参加せず、韓国がFTAを締結していくと、実質GDP 10.5兆円減少。
と、それぞれの試算を公表していました。
今回の公表における 「農林水産物への影響試算の計算方法について」 では、
農林水産業の生産額は 3兆円減少、
「農業の多面的機能の喪失額 1兆6千億円程度」となっています。
農水省が平成22年試算した「農業及び関連産業でGDPは7.9兆円減少」よりは、減少幅は減っていますが、
それでも今回の試算でも、
「農業及び関連産業で GDPは 4.6 兆円(=3兆円+1.6兆円)減少」
ということになるようです。
今回の試算の要旨は、
「日本がTTPに参加すれば、農業及びその関連産業のGDP 4.6兆円の減少することとなるが、
それでも、トータルでは、長期的に見れば 3.2兆円のGDPの増大となる」
という理解で正しいのでしょうか。
政府の公表した試算は、
日本は、TPP参加により、GDPが増大し、持続的な成長をしていく
ことを指し示してくれているものなのでしょうか。
よく分かりません。
たしかに何だか数字を見てるだけだと、これはどういうことだと思います。気になったので農林業センサス累年統計書なるものを見たのですが、そもそも農業従事者は、毎年減少しているし、はたしてTPPの影響で農業が衰退するというのも本当なのか?と思えてきます。これは穿った見方かもしれませんが、補助金10兆円をJAに入れる為の方便のような気もしますが、考え過ぎでしょうか?
by ひろ (2013-03-18 21:42)