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医療機関債の有価証券性 [検討]

医療機関債の販売を巡る詐欺事件を受けて、警察庁が今年2月27日、厚生労働省に対して、金融庁と協議して、医療機関債を金融商品取引法の規制対象となる「有価証券」に指定するよう法整備を要請したということです(2月28日の日経電子版「医療機関債を『有価証券』に指定を 警察庁が厚労省法整備要請。」)。

ここで言われている 医療機関債詐欺事件とは、

川野伝二郎容疑者を首謀者としたグループが、

医療法人社団「みらい会」の名前で、14都府県の111人の被害者から計 4億2900万円を、

また、

医療法人社団「真匡(しんこう)会」の名前で、11億8000万円を、

それぞれ騙し取ったとの一連の事件のことで、医療機関債の被害総額は約20億円ではないかといわれています。

 

  

  

今年2月6日以降、大阪府警が関係者を逮捕し、全容解明に向けて捜査を続けている状況にあります(産経ニュースwestの2月7日の「12億円秘匿?捜索するも金庫に現金ゼロ! 医療機関債詐欺事件の法人社団」、同月28日の「111人から4億2900万円詐取 山梨県の医療法人でも販売 元理事ら6人を再逮捕」参照)。

金融商品取引法上の「有価証券」については、登録業者しか取り扱えないことになっていますが、医療機関債は、現行法上は「有価証券」ではありません。

そのため、医療機関債は、登録業者でなくても、医療法人でありさえすれば、厚労省のガイドラインに沿って発行することが可能となっています。 

そう言うわけで、警察庁が、厚労省に、金融庁と協議して、

医療機関債を金融商品取引法の規制対象となる「有価証券」に指定するよう

要請したのはもっともと言えばもっともです。

学校債も、かつては同じであったわけで(グーグル検索の結果画面参照)、

金融商品取引法への全面改正の際に、「有価証券」指定を受けることとなったわけですから(大和総研グループのHPの2007年8月15日コラム「学校債が有価証券指定へ」参照)。

  

ですが、医療機関債が、金融商品取引法の「有価証券」指定を受ければ、全てが解決すると言った単純な話ではありません。

川野伝二郎容疑者を首謀者としたグループは、医療機関債を扱う以前には、

08年6月設立の石油会社「アフリカントラスト(現ワールド・リソースコミュニケーション)」という会社を使って、「ガーナでのダイヤモンド採掘で学校や病院を建てる」と偽って、社債販売で約78億円を集め、

10年1月に設立した「東亜エナジー」(東京都新宿区)を使って、東南アジアの石油会社の日本営業窓口と偽って、社債販売で約27億円を集め

ていました(2012年2月8日の毎日jp「医療債詐欺:7社使い126億円販売 商材替え次々」)。

  

           

社債は金融商品取引法上の有価証券です(同法第2条第1項第5号)。

登録業者しか販売できないこととなっています。

川野伝二次郎一派はそんなことおかまいなしです。

  

川野伝二次郎一派が 08年6月から社債を用いた詐欺を働いていたにもかかわらず、警察沙汰となることなく、ずっと放置されていたことが一番の問題なのであって、

医療機関債が(金融商品取引法上の)有価証券でなかったことなど、直接は関係ないことです。


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