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空っぽな箱 [困惑]

MRI インターナショル事件は、

昨年(2012年)12月に、商品投資家から金融取引等監視委員会(監視委)に、配当償還が遅延しているとの情報が寄せられ、

監視委が今年3月4日に検査に着手し、発覚しました(ロイター4月26日の記事「米MRIインターナショナルの登録取消 、投資資金を配当に流用=金融庁」)。

   

金融商品取引業者などに対する証券検査は、監視委が担当することとなっていますが、

監視委は毎年度の初頭に、

証券検査基本方針及び証券検査基本計画

を策定し、その計画に基づいて検査を実施します(金融庁HPの「平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画について」、「金融商品取引業者等の証券検査について」参照)。

この平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画 では、   

証券業者や金融先物業者などの第一種金融取引業者については年間150社を対象とした 検査計画 を定めていました。

そして、それ以外の、

昨年問題となったAIJ投資顧問のような投資助言・代理業者 、あるいは、 MRI インターナショルのように第二種金融商品取引業者に対する検査については、

「随時」

としていました。

平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画は、その説明として、

業態、規模その他の特性及び証券監視委の人的資源に比し検査対象者極めて多数に及んでいる状況等を踏まえ、

これまでの集中的な検査に基づく建議により改正された法令等の遵守状況、自主規制機関への加入状況等を勘案しつつ、監督部局からの情報、外部から寄せられる情報等を積極的に活用し、戸別に検査実施の優先度を判断する、

との説明を加えていました(10頁の第2、2. (2) ①「ロ. 随時検査を行う対象」参照)。

   

この説明ですが、

私には、監督委が、   

第二種や投資顧問は数が多いので 検査計画を立てるだけの人手がいないため、検査計画など立てることなどできない。

なので、他からのタレ込みがあれば検査をしますが、そのようなことがなければ検査しません。

と、

開き直って言っているのと、同じように聞こえてしまいます。

   

そんな無責任なことを言っていることなど、ありえないことなのですが。  

平成23年度の検査実施状況.jpg 

上図は、平成24年6月29日に証券取引等監視委員会が公表した「証券取引等監視委員会の活動状況」の本文32頁の表「平成23年度の検査実施状況」を引用したもの。

平成23年度における第二種金融商品取引業者への検査が14件、投資顧問・代理業者への検査が40件だったということが分かります。

第二種業者は1294社、投資顧問・代理業者は1108社もあるので、今の態勢のままで、証券取引等監視委員会に第二種業者や投資顧問業者などの検査をやれというのは、現実的には無理だと言えます。

仮に、第二種業者は年30社を検査、投資顧問業者は年50社を検査するとしても、

検査の頻度が第二種は40年に1度、投資顧問は22年に1度、

となりますので、そんな計画、恥ずかしくて示すことなどできないでしょう。

この機会に、組織の見直し等を含めた、実りのある議論をしていただきたいと思います。

 総括表(証券取引等監視委員会).jpg

上図は、平成24年6月29日に証券取引等監視委員会が公表した「証券取引等監視委員会の活動状況」の附属資料178頁の総括表を引用したものですが、この総括表からは、

平成4年度~平成23年度の間の第二種金融商品取引業者の検査総数は45件、

他方、投資顧問業者へのそれは332件、

であったことが分かります。

第二種金融商品取引業者は、よっぽどのことがなければ検査されないということが分かります。

                                                                                                                            

                                                                       

   

(参考)

「平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画」の項目は下記のとおりです。

項目立てだけは、豪華絢爛です。

第1 証券検査基本方針

  1. 具体的な考え方 

   (1) 証券検査の役割

   (2) 検査対象業者の多様化・増加

   (3) 検証分野の拡張等

   (4) 検査対象先の特性に応じた効率的・効果的で実効性ある証券検査の実施

  2. 検査実施方針

   (1) ① 業態その他の特性に着目した検証

          イ. 金融商品取引業者等の市場仲介機能に係る検証

          ロ. 法人関係情報の管理(不公正な内部者取引の未然防止)等に係る検証

          ハ. 公正な価格形成を阻害するおそれのある行為の検証

          ニ. 投資勧誘の状況に係る検証

          ホ. 投資運用業者等の業務の適切性及び法令等遵守にう係る検証

          ヘ. 信用格付業者の業務管理態勢の検証

          ト. ファンド業者の法令等遵守状況の検証

         チ. 投資助言・代理業者の法令順守状況の検証

         リ. 自主規制機関の機能発揮のための検証

        ヌ.  無登録業者に対する対応

      ② 内部管理態勢・財務の健全性等に係る検証

        イ. 内部管理態勢等に係る検証

        ロ. システムリスク管理態勢に係る検証

        ハ. 財務の健全性に関する検証

   (2) 効率的・効果的で実効性ある検査に向けた取組み

      ① 業態その他の特性等を踏まえたリスクに基づく検査実施の優先度の判断

       イ. 継続的に検証を行う対象

       ロ. 随時検査を行う対象

       ハ. 無登録業者

      ② 実効性のある検査の実施

       イ. 予告検査の実施

       ロ. 双方向の対話の充実

       ハ. 検査の実効性を阻害する行為に対する厳正な対処

      ③ 金融庁・財務局等との連携強化

      ④ 自主規制機関との連携

      ⑤ 検査基本指針及び検査マニュアルの見直し・公表

第2 証券検査基本計画

   1. 基本的考え方

   2. 証券検査基本計画


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コメント 1

何の用件だったのだろう・・・

二次被害の記事とこちらの記事、大やけどをしておきながら恥ずかしいのですが、とても勉強になりました。ありがとうございます。

金看板のように見えたものが、こんなに杜撰なものだったとは・・・。

蓋を開けてみると、本当に「空っぽ」ですね。

聞こえの良いものや見栄えの良いものに対して、懐疑的に思いながらも、自分で何かしらの理屈をつけて黒いものを白いものにしてしまう自分の愚かさを深く反省するばかりです。

二次被害に遭って、傷つく方がいらっしゃらないことを祈るばかりです。
by 何の用件だったのだろう・・・ (2013-05-01 00:09) 

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