通訳人の誤訳まで問題にするのはいかにも意地悪

外務省が、マオド・ド・ブーア＝ブキッキオ国連 児童の性的搾取に関する特別報告者が先月26日に日本記者クラブで行った会見について、抗議を申し入れたということです(Sankei Biz2015年11月10日「『日本の女子中高生の13％援助交際』発言  外務省が特別報告者に抗議」)。

 

外務省の発表(「児童売買、児童買春及び児童ポルノ国連特別報告者に対する申入れ」)を読むと、

今月11月2日が国連高等弁務官事務所(OHCHR)に援助交際13％という数字の情報源と根拠を開示すべきであるとの抗議を申入れた、

13％という数字の情報源と根拠が示されなかったので、11月7日(現地時間6日)に長岡寛介在ジュネーブ国際機関日本政府代表公使から再度、申入れをした

ということです。

 

国連のプレスリリースを見てみると(2015年10月29日「児童の性的搾取の状況、国連の人権専門家が訪日調査を実施しました」 ) 、

ブキッキオ氏は2015年11月2日に コメントを出しています。

コメントでは、 

「 訪日中に、日本の「JKビジネス」の拡大範囲について、公式な統計は提供されていません。

しかしながら話を聞いた多くの方が、これは憂慮すべき傾向であり、利益性の高い当ビジネスにかかわる未成年者の性的搾取につながりやすいとの懸念を示しました。記者会見では、緊急な取り組みが必要なこの現象を強調するために、公になっている推定値に触れました。

肝心なのは、いわゆる「JKビジネス」が検討を要する非常に深刻な問題であり、これについて公式なデータを早急に集めるべきだという点です。

証拠に基づいた予防策を提示するためにも、児童の性的搾取につながる、またその可能性があるJKビジネスその他の活動の拡大範囲、根本原因、影響について総合的な調査を行うことを日本政府と関係当局へ再度要請いたします。

と、援助交際13％という数字の根拠と情報源について「公になっている推定値」との曖昧な表現がなされているだけで、明確な根拠と情報源が回答されていません。

その点を突っ込んで、再度、7日の長岡寛介公使の申入れに繋がっているようです。

        

ブキッキオ氏の先月26日の会見内容は YouTubeで見ることができますし(「マオド・ド・ブーア＝ブキッキオ 国連 児童の性的搾取に関する特別報告者 会見 2015.10.26」)、その際のプレスステートメントも読むことが可能です(「End of misson statement of the United Nations Special Rapporteur on the sale of children,child prostitution and child pornography,Maud de Boer-Buquicchio,on her visit to Japan」)。

また、日本記者クラブが出している記者のリポートはこちら。 

 

「日本は 児童買春、児童ポルノに寛大すぎる」、「児童を守る法執行がなされていない」ということになるようで、

来年3月に、ブキッキオ氏から国連人権理事会に、そのような内容の報告書が提出されることになるのでしょう(国連のプレスリリース参照)。 

 

援助交際13％の根拠がないと抗議をすることによって、一矢報いようとしたところ、

反対に、「公的な統計」すらないと切り返されてしまったブブッキオ氏のコメントが公表されてしまったため、外務省としては、かくかくしかじかの理由で抗議をしていたことを外部に向けて公表せざるを得なくなったというようなところではないでしょうか。

 

通訳人が援助交際の「13％」を 「30％」と誤訳したことについて、ブキッキオ氏には落ち度はないはずです。

それを同氏が誤った発言をしそれを訂正したかのような誤解を与える発表をするのは 余りに意地悪で、みっともないのではないのかと思ってしまいます。

(なお、ブブッキオ氏が30％などと言っていないことは、YouTubeの会見の5分20秒辺りを聴いてみれば分かります。) 

 

その後の報道によると、『13%が援助交際』は、13%という数字は使われなくなるようです。

でも、それって、13%に代わって、「公的な統計はないものの、少なくない割合」といった表現がなされるだけのことです(朝日新聞DIGITAL2015年11月11日 「『13%が援助交際』事実上の撤回  外務省の抗議受け」)。

報告者の言わんとしている、「とてもとても多くの女子校生が援助交際をしていて、それが放置されている」ことはそのまま維持されており、一部たりとも撤回されたわけではありません。