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再婚と養育費、あっけない結末 [困惑]

子供を連れて離婚した元妻が再婚し、再婚相手が元妻の連れ子と養子縁組した場合、子への扶養義務は第一次的には元妻と 養親となった再婚相手が負い、元夫の扶養義務は二次的なものになる と理解されています(国民生活センターのホームページ「暮らしの法律Q&A」第29回「再婚したら養育費はどうなる」参照)。

この見解は結論において、元夫の扶養義務を免れることを許すことになります。

不道徳極まりない、誤った考え方だと私は思っていますが。家裁のルールなので従わざるをえません。

 

それの派生的な問題。

「元夫が、元妻の再婚と再婚相手が子を養子縁組していることを知らなかったため、養育費を支払い続けていたところ、 元妻の再婚と再婚相手が子を養子縁組していたことを知り、元妻に対し養育費を返すよう請求してきました。

さて、元妻は元夫の請求に応じ、養育費を返さないといけないでしょうか。」

あなたの答えは どういうものでしょうか。

 

民法880条は次のように規定しています。

(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)

第八百八十条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

 

新版注釈民法を読んでみると、この民法880条の 変更・取消の基準時については、

⒜説 将来に向かってのみ生じる、

⒝説  変更・取消の請求時まで遡る、

⒞説  事情変更の時点まで遡る、

という3説があり、そのうちの ⒞説が多数説だと書いてあります。

 

私の感覚では、⒞説は「(理論的には正しいとしても、)過去に形成された法律関係に干渉することになるので問題外」、⒜説は「引き延しをされるおそれがあるので不当」、  

なので、請求時まで遡ることを認める ⒝説 が妥当といったところです。

 

そうしたところ、元夫が、⒞説 を前提に、元妻に対して 養育費の返還を求めてきた 養育費免除調停事件を 元妻側で受任することになりました。 

基準時を論点ズバリとした案件です。

 

裁判官は、調停の席で、審判となれば、⒞説 を前提に審判を書くと明言。

元妻と私は ⒝説 

    

こんな問題、家裁ではごろごろ転がっていたのでしょうが、白黒を付けようとする人がいないため、何十年もの間、場当たり的な解決がされ、学者や実務家も我田引水的な論評をしてきたのでは好き勝手なことを言ってきていたということなのではないでしょうか。

   

今回は よい機会です。調停を不調にしてもらい、事件は審判へと移行してもらいました。

 

 「(⒞説 にしたがった)審判が出て、次は高裁か」と思っていたところ、家裁の書記官から、申立人が審判を取下げたとの連絡がありました。

 

相手がリングを下りてしまったわけなので不戦勝です。

ある意味、完璧な勝利と言えるのかもしれませんが、当初の意気込みからすると、少し残念な結末となってしまいました。


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コメント 2

mn

家裁の事件では、そういうのが多いですよね。
こんな大事なこととか、こんなありふれたことがどうして決まっていないのか、と思うことが良くあります。
家裁の事件だから多少あやふやな方が良いのかもしれませんが。
その割には調停に行くと、当裁判所はこれでやってます、と断言されることも多いですよね。

by mn (2016-04-08 00:44) 

tomo-law

mnさん、そのとおりだと思います。

決まっていなくても困らないからということなのでしょうが、無意味なことの繰り返しによる、社会的損失は莫大なものでしょうね。
by tomo-law (2016-04-08 15:22) 

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