建築物の完了検査実施率(その1) [検討]
私も ほんの少し前まで同じでしたが、多くの弁護士は、
「建築基準法が規定する 建築物の確認制度・検査制度上、建築主が建築確認を得て着工しているのであれば、完了検査も受けていて、検査済証も取得しているはず」
と誤解をしているのではないでしょうか。
国土交通省中部整備局のホームページの「建築確認制度」の箇所では、
「完了検査とは、工事が官製完了検査とは、工事が完成した段階で、その建築物が法令の基準に適合しているかを検査することをいいます。
具体的には、建築主のみなさまは、特段の理由(災害等、やむを得ない理由)が無い限り、建築工事が完了した日から4日以内に完了検査の申請をしなければなりません。この申請に基づき完了検査を建築主事や指定確認検査機関が行い、建築基準関係規定に適合していると認めたものについて、建築主のみなさまに対して『検査済証』が交付されます。
完了検査を受けないと、後に違法建築物であることが判明した場合に建築主に対して建築物の使用禁止や是正命令が出されたり、あるいは住宅金融公庫の融資が受けられなくなることがあります。」
などと、「完了検査の申請は建築主の義務」と解説しています。
こんな説明が もっともらしく 流布されているため、ナイーブな私などは「建築確認を受けているのなら、完了検査も受けているはず」と、誤解を正す機会を持つことなく今日まで来てしまっていました。
「(建築確認を受けておきながら、)完了検査を受けていないなどというのは、ごく少数の不届き者」と思っていました。
(上図は 国土交通省のホームページ「
」から引用)
ですが、現実には、そうではありませんでした。
国土交通省は平成 26 年7月、「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を定めましたが、同ガイドライン中では、
「建築基準法において、建築主は、工事完了後、建築主事又は指定確認検査機関による完了検査を受けて検査済証の交付を受けなければならないが、この検査済証の交付を受けていない建築物が、平成 11 年以前では半数以上を占めていた。」
ということを認めています。
ガイドラインでは、平成10年度(1998年)から平成24年度(2012年)までの間の完了検査率の推移を示したグラフを掲載してますが、平成10年の完了検査率を見てみると、38 %に過ぎません。
下図がガイドラインから引用したそのグラフです。
なお、ガイドラインでは「完了検査率」を 「当該年度における検査済証交付件数 / 当該年度における確認件数」と定義をしています。
知らなかった方、多くなかったですか?
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