SSブログ

非常上告 [感想]

確定した刑事事件の判決に対し、検事総長だけが申立てることができる非常上告という不服申立て制度があります(刑事訴訟法第454条~460条)。
   
(参考) 刑事訴訟法第454条  
     
検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。 
     
この非常上告ですが、制度目的について「主として事実誤認を救済する再審とは異なり、もっぱら、法令解釈の統一を主眼とし、抽象的に法令適用の誤りを正すことを目的とする。個々の裁判の事実認定などの是正を目的とするものではない。 」といわれています(条解刑事訴訟法(増補補訂版)902頁)。
            
   
非常上告と言えば、私は、麻薬特例法の幇助犯から没収追徴できる範囲を、幇助犯が薬物犯罪の幇助行為から得られて財産等に限られるとした 最高裁第三小法廷平成20年4月22日判決  が出たことを知り、
検事総長宛に、被告人が追徴を受けた金員の返還を受けることができるよう非常上告をなすよう、職権発動を促す申入れをしたことがありました。
   
職権発動を促したわけですが、最高検の検事の方から「非常上告をする予定はありません」との丁寧な返事を電話でいただいただけという、残念な結果で終わってしまいました。
       
  
    
非常上告のことなど、すっかり忘れていましたが、
   
先日、福岡地裁小倉支部が上限が懲役1年のところ懲役1年2月の判決をしていた件で非常上告の申立てをすることになったとのニュースに接し、どのような場合に非常上告が申し立てられるのかについて関心が湧きました(産経ニュース2016年4月26日「法律の上限を超えて服役  福岡地検ミス、裁判所気付かず『非常上告』手続」参照)。   
   
申立てはされているんですね。
      
           
    
下図は、裁判所のホームページで確認可能な、平成12年から同26年の司法統計刑事事件編 「3 刑事事件の種類別受理,既済,未済人員-最高裁判所」から非常上告の各年度の新受件数を拾い作表したものです。
   
毎年数件のところ、平成22年は253件、平成24年は62件 とその2年は突出しています。

     
裁判所のホームページの「裁判例情報」のページで、裁判所を「最高裁」とし、「非常上告」をキーワードにして検索をすると、165件の裁判結果がヒットします。 
 
 
その検索結果を見てみると、
     
平成22年は「反則行為に当たる速度違反を非反則行為と誤認してされた略式命令に対する非常上告」の処理のため、
 
また、平成24年は検察官事務取扱の職務命令の発令を受けていなかった検察事務官がした公訴に基づき発付された略式命令に対する非常上告」の処理のため、
   
件数が多かったのだろうということが 薄っすらとわかり。
      
 非常上告・新受件数.jpg
    
非常上告は、明文の法令に違反した判決がされた場合にだけ、申立てがされるという運用がされていることになるようです。
   
   
   
 
 

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0