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抗争を助長する工事は暴排条例違反 [検討]

愛知県公安委員会が、今月8日までに、愛知県内在住の指定暴力団の会長と組長、名古屋市内の建築会社の3者に対して、愛知県暴力団排除条例に基づいて、抗争を助長する工事をしないよう勧告をしたとのことです(朝日新聞DIGITAL2016年6月9日「窓に鉄板… 抗争助長の工事はダメ  神戸山口組系らに勧告」)。

抗争を助長する工事とされたのは、

建築会社が昨年9月、組事務所のスチールの窓を 鉄板20枚で補強したり、監視用カメラーとモニター一式の取り付け工事のことで、

このような暴力団の抗争対策工事に対する勧告は全国初だということだそうです。 

 

愛知県暴力団排除条例では、第14条(利益の供与等の禁止)において、

事業者が、情を知って、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる利益の供与をすること(第1項)、

暴力団員が情を知って、事業者から前項の利益の供与を受けること(第2項)

をぞれぞれ禁止しています。この規定に該当したということになります。

 

愛知県暴力団排除条例についての Q&A集らしきものは見当たりませんが、警視庁のホームページの「東京都暴力団排除条例」Q&A がありました。

「東京都暴力排除条例」Q&A のQ13 では、どのような行為が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することになる利益の供与」となるかを例示していますが、そこには、まさに愛知県公安委員会が勧告を出した、

・ 内装業者が、暴力団事務所であることを認識した上で、対立抗争に備えて壁に鉄板を補強するなどの工事を行う行為

も例示として挙げられています。 対立抗争に備えた工事を行う場合、それが 「利益供与」になるのは、とてもよく腑に落ちます。

 

反対に、「東京都暴力排除条例」Q&AのQ13では、事業者が利益供与違反にならないケースも挙げられていますが、その例示の中に、

・ 建築物等の維持保全など、適法な状態を保つために、暴力団事務所の工事を行う工事 

というものも挙げられています。 単に、建物の維持保全のための工事であれば、「利益供与」とはならないとの判断が、ここでは示していることになるようです。

 

さらに見ていくと、「利益供与」に当たるケースの中には、

・  警備会社が、暴力団事務所であることを知った上で、その警備サービスを提供する行為

が挙げられていますが、「建築物の保全維持のための工事」が利益供与にならないのであれば、防犯のためのセキュリティさーサービスも同じではないのかと思いますが、どうなのでしょう。

 

今回、工事の発注側の会長と組長 、受注側の建設業者の3者は、愛知県公安委員会が出した勧告に従うそうですが、もし、事業者らが勧告を無視した場合には どのようなことになっていくのでしょうか。

 

愛知県暴力団排除条例第26条第1項を見てみると、氏名又は名称及び住所が公表されることとなるようではありますが、そこまでです。

勧告に従わないことについて罰則規定はないため、いくら勧告に従わなかったとしても 罰則まで課されることということになります(同条例第29条、第30条)。 

 

しかし、事業者の場合、氏名を公表されることにでもなれば、取引先から取引を切られてしまい、廃業の憂き目を見ないといけないことになります。事業者には勧告に従わずに氏名を公表することを受け入れるなどとの選択などありえまん。

氏名の公表という不利益処分がありうるというだけで、業者への抑止効果としては十分で、罰則まではいらないということなのでしょうか。


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