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東京地裁の勾留却下率は いつの間にか 8 % 超 [検討]

平成26年6月15日のブログで、

さいたま地裁の勾留却下率が急上昇していて、却下率が10%超 になっている

と報じた朝日新聞デジタルの記事を取り上げました。 

続報もなく 記事も1年半ほどで 跡形もなく消えてしまったので、椿事が突発的に起きたのだろうと思っていたところ、昨年(2016年)10月31日の産経WESTの記事「勾留請求却下率低い大阪  弁護士『いまだに人質司法』、検察『請求厳選した結果』」を見つけ、読んでみて 驚きました。

記事は、大阪地裁の勾留却下率が全国平均以下だという どうというものでも内容のものでしたが、記事に添えられた グラフの内容がすごい。

下のグラフがそれで、平成17年(2005年)から平成27年(2015年)までの11年間における、 東京、大阪、名古屋、福岡、仙台 の地裁(簡裁?)での勾留却下率をグラフ化したものです。

 

グラフは、   

東京での勾留請求の却下率は 平成17年(2005年)以降、全国平均の ほぼ倍 を常に保っている。

平成17年の1.5% が 平成22年には 4%に達し、平成24年には6%、それが 平成27年には 約 8.5% になっていること 

を示してます。 

 「勾留請求却下率低い大阪」 産経WEST20161031.jpeg

 

東京では そんなことになっていることを全く知りませんでした。 

司法統計年報では  全地裁、全簡裁の 勾留の発付数、却下数の統計しか掲載されていないため、各地の状況は分かりません(司法統計年報刑事編 平成27年「第15表 令状事件の結果区分及び令状の種類別既済人数-全裁判所及び全口頭・地方・簡易裁判所」参照)。

記事のグラフには「※ 最高裁の資料を基に作成」と書かれていますが、資料とは内部資料なのでしょうか。

グラフには「勾留請求の却下率(地裁・簡裁)」との標題が付けられていますが、勾留却下率について (地裁・簡裁)っていうのは どういうことを表しているのでしょう。

勾留却下率については、前掲の平成27年の司法統計年報を使って、全地裁での勾留却下率と、全簡裁での勾留却下率を計算が可能です。

勾留却下率は、 勾留状の却下の件数 ÷ (勾留状の発付(請求によるもの)の件数+却下の件数)×100 と計算できるので、地裁と簡裁 の勾留却下率を算出して見ると、

全地裁   6.27 % (≒2,838件÷(42,441件+2,838件))

全簡裁   1.49 % (≒1,051件÷(69,547件+1,051件))

全地裁・全簡裁合計

          3.36 % (≒(2,838件+1,051件)÷((42,441件+2,838件)+(69,547件+1,051件)) 

ということになります。簡裁の勾留却下率を勘案すると、勾留却下率は下がってしまうことが分かります。

なので、簡裁での勾留却下率を勘案していることを示す、「勾留請求の却下率(地裁・簡裁)」の標記をグラフにしている産経WEST の記事が信用できるものであるかについて疑問が生じてしまいました。 

 

関連したデータがないかグーグル検察したところ、少し古いですが、毎日新聞の2015年12月14日の 「東京地裁 : 痴漢で勾留、原則認めず 『解雇のおそれ』考慮」という記事を見つけました。 

記事では、次の具体的なデータが掲載されていました。 

2005年の東京地裁の勾留請求の却下は 389 件 (却下率1・5%)で、全国の却下件数の 5 割強を占めていた。14年には 約 3倍の 1171件 (7・8%)に増加したが、全国に占める割合は 4 割弱に低下しており、却下の動きが地方にも広がっているとみられる。

 

記事は、東京地裁における勾留却下率が 2005年(平成17年)は 1.5 %、2014年(平成26年)は 7.8 % ということなので、 産経WESTのグラフの「東京」の折れ線に、それらの数値をプロットしてみまと、矛盾はありません。 

産経WESTが 東京地裁の勾留却下率を示しているのだと善解してあげれば、記事が間違いとまでは言えません。

グラフの標題を (地裁) とすべきところ、(地裁・簡裁) と間違えちゃったということなのでしょう。 

 

話は変わりますが、東京地裁では痴漢は勾留しない 運用にした なんてのもすごいですね。

こんなことになっているなんて 皆さんご存じでしたか。


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