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アパマンローンとサブリース契約 [感想]

相も変わらず、建築業者が、土地持ちの小金持ちに「お金を借りて、アバートやマンションを建てれば 相続税対策になります。ローン返済は、当社の関連会社で一括借り上げし、家賃保証をさせてもらいますのでローン返済に困ることはありません。」と持ち掛け、その建設業者と親密な関係の、銀行や信金でローンを組ませることが盛んに行われているようです。

サブリース」と呼ばれているやつのことです。銀行などから借入れなしで、アパートやマンションを自己資金だけで建てれることができるお大尽は あまりいません。なので、「サブリース」と言った場合には、語義どおりの「一括借り上げ」ということに加えて、「金融機関からの借入れを加えた建物を建築(し、それを一括借り上げ)する」ことを含んだものとして理解されています。


金融庁は、昨年10月に公表した平成28事務年度金融レポート において、この「サブリース」について触れていました。

正確に言えば、金融庁が触れているのは「サブリース」ではなくて、「アパート・マンションローン」(個人による貸家業向け貸出。以下「アパマンローン」という。)の貸出の増加についてです。

先ほども述べましたが、建築業者によって行われている「サブリース」の大多数は、地主(=家主)が金融機関から建築資金を金融機関から借入れという仕組みをビルトインしたものですから、「サブリース」について触れているのと同じことになります。


金融庁の前年の平成27事務年度金融レポート では、「アパマンローン」、「サブリース」のいずれの用語も使われていません。「アパマンローン」に触れたのは、今回の平成28年の金融レポートが初めてということになるようです。


平成28事務年度金融レボートの本文130頁には下図が掲載されるとともに、次のように記述されています。


融資案件持込み率と経過年数と空室率.jpg



貸家業の特徴

アパマンローンの対象である貸家業(個人向けアパート・マンションの賃貸業)には、①空室率は、築年数の経過とともに上昇する、②賃料水準は、築年数の経過とともに低下し、築後15年経過後を目安に低下傾向は顕著となる、③地域銀行によってバラツキはあるものの、足下の実際の賃貸物件の収支状況は、一定程度が赤字であり、築後15年を経過すると赤字先は更に増加傾向になる、といった特徴が認められた(図表Ⅲ-4-(1)-6)。  


アパマンローンの融資は、建築業者から金融機関への持込みが4分の3だということですので、建築業者が金融機関と組んで営業をしていることが分かります。

そんなことよりも、「家主の賃貸物件の収支は、一定程度が赤字であり、築後15年経過で赤字であるところは増加傾向にある」と金融庁がレボートで指摘していることの方が重大であると言えます。


建築業者が地主(家主)に持参する事業計画書では、経過年数による家賃の減額も、空室が発生することも見込んでいません(私はこれまでに5、6社の事業計画書を見たことがありますが、空室発生を見込んだものは0社、経年による家賃の減価を見込んだものは1社しかありませんでした。)。

それに加え、「サブリースの家賃保証は20年とか、30年続きます」などと 地主(家主)に耳障りのよいことを契約時に言ってサブリース契約を結ばせますが、契約を結べばこっちのものと、何年か経った時点で「今の金額ではサブリース契約を継続できません。契約書にも書いてあります」と言って、家主に保証額の減額を呑ませるのが常道です。

家主の収支が一定程度、赤字になっているのは当然のことだろうと思いました。

むしろ、どれだけの被害が発生しているか、「一定程度」とは 何割ぐらいのことなのかを知りたいと思いました。

わざわざ金融庁が金融レポートで触れてたのは、どこかしこで、金融機関が建築業者と組んで、土地持ちの小金持ちに対して無謀な事業計画に基づきアパマンローンの貸し込みをしていて、目に余る状況にあり、それを喚起させるためのことだろうと考えられます。

なので、「一定程度」とは相当な割合となっているものと予想できます。それが、2割なのか、3割なのか、4割なのか知りたいと思いませんか。




金融レボートでは、経過年数が5年、10年、15年、20年における空室率を載せています。

空室率とは、マンションや貸しビルで空室のある割合のことで、空室数に空室機期間(月数)をかけた数値を、全室数を12倍した数値で割り100をかけることで算出されることになるそうですが、

     5年      2.6 %

   10年      7.1 %

   15年      8.5 %

   20年    11.6 %

ということになるそうです。

経過年数5年、10年15年、20年の時点で、当初の契約時と比べて賃料はどの程度になってしまうのでしょう。そそれが分かれば、経過年数が5年、10年、15年、20年時において家主が受取ることができる賃料が、当初(契約時)と比してどの程度になるかが分かるからです。

しかし、金融レポートでは賃料の減価、つまり賃料水準の方に関しては、「築年数の経過とともに低下し、築後15年経過後を目安に低下傾向は顕著になる」としか触れていません。


アパートやマンションの賃料水準は経過年数によりどうなるのでしょう。

グーグル検索をしてみたところ、三井住友トラスト基礎研究所研究員菅田修氏が作成した2013年1月16日付の「経年劣化が賃料に与える影響とその理由」という論文を見つけるもとができました。


この論文における経過年数ごとの賃料水準の分析は、東京23区の賃貸マンションを対象に、タイプ(2区分)×成約時期(11区分)×築年数(26区分)で区切ったアットホーム株式会社の成約事例データ(階層化データ)を用いて、572本のモデルを構築し、経年が賃料に与える影響を分析したものだということだそうです。

東京23区における賃料水準を「シングル」、「コンパクト」の2種で出していますが概要がわかればよいので、「シングル」、「コンパクト」のうち数値が高い方のものを抜き出してみると、

   5年   100 %

  10年    89 %

  15年    85 %

  20年    83 %   

ということになるになります。

(感想ですが、賃料水準が 20年経過でも8割超を維持しているのは東京23区を対象としてからではないかと思いました。また、名古屋ないしその近郊だと20年経過で当初の8割の賃料では借り手がいないのではないかと思いました。)


これで、家主が受け取る月額賃料総額を100万円としたとき、経過年数5年、10年、15年、20年の賃料総額がいくらになるかを試算できるますので、試算してみると、下のとおりになります。


当初(0年)         1,000,000円

経過年数(  5年)    974,000円 (=1,000,000×(1-0.026)×1.00)   

経過年数(10年)    826,810円 (=1,000,000×(1-0.071)×0.89) 

経過年数(15年)    777,750円 (=1,000,000×(1-0.085)×0.85) 

経過年数(20年)    733,720円 (=1,000,000×(1-0.116)×0.83) 



20年間の事業計画上の受取賃料総額は、240,000,000円。

(=1,000,000円×12ヶ月×20年)


受取賃料総額の試算額は、214,713,600円。

(=1,000,000円×12ヶ月×5年+974,000円×12ヶ月×5年+826,810円×12ヶ月×5年+777,750円×12ヶ月×5年) 


差額は 25,286,400円 と出ましたが、試算での経過年数による賃料の減額が実際よりも小さいのではないかという感想を持ちました。

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