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株式会社(休眠会社)のみなし解散登記 [検討]

来年(2019年)予定の会社法の改正により、民事法務協会の登記情報提供サービスでは、株式会社の代表取締役の住所がなくなることになってしまうようです(法制審議会 会社法制(企業統治等関係)部会第10回会議(平成30年2月14日開催)で取りまとめられた「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」20、21頁、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案の補足説明」70、71頁)。

登記所における登記事項証明書の交付請求時も一緒で、もし、株式会社の代表取締役の住所を登記事項証明書に記載してもらいたいのであれば、(登記の附属書類の閲覧の場合と同じように)利害関係を疎明しなさいということになるようです。


登記に記載された代表者の住所に訴状を送達してもらう訴訟を少なからず提起しているので、そんな改正は困ってしまいます。

平成29年4月26日に開催された部会の第1回会議時に、民間委員から、経団連の要望として、部会で検討すべき論点として提案され(「会社法制部会資料1の他に検討すべき論点について」、第8回会議議事録2頁)、それが個人情報の保護(代表者のプライバシーの保護)として結実することとなったようです。


「家を知られて押しかけられたら困る」という気持ちは理解できないではありません。

しかし、企業実態など全くない、法人格を道具として悪用するジャンクが 多く混在するのが、日本の株式会社の登記の実態であるとしたらどうでしょう。私はそうした認識をしています。株式会社の代表者の氏名しか登記しないで済むのであれば、悪用しようとするものにとっては余分な情報を開示させられず、好都合なことになりはしないか、悪い奴を利する利敵行為になるのではないかと思ってしまいます。



日本における株式会社の登記の実態はどういうことになっているのでしょう。ジャンクはどれだけ混入しているのでしょう。

法務省は、平成14年(2002年)を最後に11年間実施していなかった、休眠会社の解散整理を平成26年(2014年)に再開し、それ以降、平成27年(2015年)、平成28年(2016年)、平成29年(2017年)と毎年、行っています(法務省HP「休眠会社・休眠一般法人の整理作業の実施について」)。

株式会社の解散整理の状況は、株式会社登記の実態を知る上での一つの参考資料になるはです。ですが、法務省は休眠会社の解散整理をしたとのアナウンスをしていますが、みなし解散決議をほした法人は何件なのかその結果をホームページ上で公表していません。


共同通信が平成26年(2014年)12月と同27年(2015年)1月に配信した2本の記事が、日経新聞のホームページ上で閲覧できます。

1本は、平成26年(2014年)12月24日付の「休眠会社、毎年整理へ  法務省、犯罪の悪用防止」という記事。要約すると、

・法務省はこれまで5~12年おきだった職権による「みなし解散」を来年度以降は毎年実施する方針を固めた。

・法務省は1974年~2002年、一部の例外を除きおおむね5年に1回、みなし解散の手続きを取った。

・休眠会社の定義が「最後の登記から5年経過」から「12年経過」に変更されたため、上川陽子(当時かつ現在)法相は平成26年(2014年)11月、12年ぶりに公告、法務局は 対象の約8万8千社に通知した。

・ 02年には 約 11万社の休眠会社を確認し、うち8万社がみなし解散となった。

というもの。

もう1本は、「みなし解散」登記後の平成27年(2015年)2月21日付の「休眠7万社、法務省が職権で解散  02年依頼」という記事。

・法務省は平成27年(2015年)1月、休眠会社約7万8千社を「みなし解散」させた。

・前回2002年12月のみなし解散より 約4500社少なかった。(2002年12月は約8万2500社を「みなし解散」させた。

・法務省は昨年(2014年)11月に、登記されている株式会社176万9千社のうち約8万6千社を休眠状態と判断し、官報に公告。

というものでした。


新聞雑誌記事横断検索で「法務省」「みなし解散」「休眠会社」で検索してみたのですが、共同通信の2本の共同通信の記事と読売新聞の平成27年(2015年)1月17日の「休眠企業約8万8000社 法務省  届け出なければ解散」という記事ぐらいしか見当たりません。


いろいろ考えあぐね、法務省の登記統計「商業・法人」の2015年分2016年分に「みなし解散」の統計があるのを見つけました。

各年度の「16-00-34  法務局おらび地方法務局管内別、種類別 株式会社の登記件数」の右端の行が「休眠会社の解散」で、総件数と都道府県別の件数が載っています。

そこには、

平成27年(2015年)   94,961件

平成28年(2016年)   16,223年

と、年ごとの「みなし解散」の登記の件数がなっています。休眠登記件数.xlsx

   

共同通信の記事は、

法務省は 平成27年(2015年)1月に 休眠会社 約7万8千社をみなし解散させた、

法務省は 平成26年(2014年)11月 対象の 約8万8千社に通知した、

というもので、新聞の内容と登記の件数が全く合いません。


「みなし解散」登記の件数より、新聞の件数が 2割弱 少ないことになっています。共同通信の記者がミスをしたのか、役所が誤った内容をリークしたのかですが、統計として後日明らかになるようなことを言うわけないので、記者の取材不足ということなのでしょうか。

  

平成28年(2016年)の「みなし解散」登記は 16,223件ということですが、対象は登記情報が12年以上更新されていない会社がそれだけあるということです。

全体のどれだけが、「みなし解散」を受けていると考えればよいのか。

考えてもよい考えが浮かばないので、株式会社が毎年何社、設立されているのか、株式会社の設立登記の件数を調べてみて、「みなし解散」登記の件数を比べてみることにしてみました。設立登記の件数は、2006年の登記統計を使えるので、平成9年(1997年)から平成28年(2016年)までの件数が分かります。 「みなし解散」登記の方は、平成27年(2015年)と平成28年(2016年)は登記統計からはっきりしているのですが、平成15年(2003年)の分は、共同の記事しか手にできる情報がありません。8万2500件ということにしてみました。


作表した結果は下のとおりとなりました。データは設立登記とみなし解散件数.xlsx


設立登記とみなし解散件数.jpg


平成18年(2006年)の新会社法の施行より、2万件程度だった株式会社の設立が、年間 8万件超 に急増していることがよく分かります。

また、平成27年(2015年)の「みなし解散」登記は、12年以上登記情報の更新がない株式会社を対象にしていたわけで、平成15年以前に設立された株式会社を対象としたものであること、

平成28年(2016年)の「みなし解散」も同じで、平成16年以前に設立された株式会社を対象としたものであったことが分かります。


平成18年以降に設立された株式会社(8万社×12年(平成18年から平成29年の12年間)=96万社)は、「みなし解散」登記の対象ではないことも理解できます。


平成9年(1997年)から平成17年(2005年)までは株式会社の設立は年間2万社であったわけで、平成28年(2016年)の「みなし解散」登記の件数16,233件は 年間に設立される株式会社の約8割の割合になる。8割が休眠だと言えそうだが、その考えが正しいのであれば、株式会社の相当数がジャンクと言えそうです。


どのように考えたらよいのか。

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