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座り込みと県条例違反 [感想]

1 名古屋市の河村市長が先週8日、「表現の不自由展」再開に反対して座り込みをしたことに対し、愛知県の大村知事が条例に違反するとして公開質問状を送ったと報じられました(朝日新聞デジタル2018年10月8日「「河村市長『やめてくれ』不自由展再開に抗議の座り込み」、(朝日の記事がなぜかないので)中日新聞10月11日「河村市長の抗議は県条例違反 大村知事、見解と謝罪求め公開質問状」、女性自身10月10日「河村たかし市長の"座り込み抗議"に賛否『7分は休憩』の声も」)。

条例違反?? 施設内での座り込みが建造物侵入罪というのであれば理解できるのですが、県条例に違反しているとはどのような理屈なのでしょう。

2 愛知県のホームページに11日に更新された「あいちトリエンナーレ2019『表現の不自由展・その後』について」に公開質問状が掲載されていますので、添付された公開質問状(1011日付け知事から河村市長あて) [PDFファイル/405KB]を読んで知事側の主張内容を確認してみました。

「公開質問状」の差出人は「愛知県知事大村秀章」、宛て先は「名古屋市長河村たかし」。公開質問状の全文は次のとおりです。「貴職」、「愛知県への謝罪」という言葉がありますから、愛知県の機関である知事が、機関である名古屋市長に対し謝罪を求めているということになるようです。 公開質問状には、

「 貴職が別添記載の事実のとおり愛知芸術文化センター内において行った行為は、愛知芸術文化センターの秩序を乱す行為であり、愛知芸術文化センター条例(平成3年愛知県条例第2号)第9条並びに愛知芸術文化センター管理規則(平成4年愛知県規則第88号)第39条に基づく愛知芸術文化センター栄管理規程(平成4年10月初日制定)第6条及び第7条の規程に違反するものであります。

 ついては、下記の事項について、速やかに書面での回答を求めます。

1 今回の事実関係に対し、貴職の見解をお伺いしたい。

2 今回の事実関係を踏まえ、愛知県に対し謝罪するとともに、再発防止について確約していただきたい。」

と書かれています。

3 愛知県が、河村市長が違反したと主張する 愛知芸術文化センター条例(平成3年愛知県条例第2号)愛知芸術文化センター管理規則(平成4年愛知県規則第88号)は、愛知県法規集(令和元年7月31日)「第13編 教育」「第5章 文化」 で すぐ見つけることができました。

しかし、愛知芸術文化センター栄管理規程(平成4年10月初日制定)の方は 愛知県法規集でなぜか見つけることができません。愛知県広報 を検索してみましたがやはり見当たりません。

下位の法令なので載ってないのだろうかと思い直し、「愛知芸術文化センター栄管理規程」でキーワード検索してみたところ、「[DOC]Word版-愛知芸術文化センター-愛知県」が順位一番で出てきました。

ワードファイルを開いて目を通したところ、「指定管理者 公益財団法人愛知県文化振興事業団 愛知県芸術劇場館長」宛の 「チラシ等の配布承認申請書」で、「公益財団法人愛知県文化振興事業団愛知芸術文化センター栄施設管理規程第7条第1項第3号の規程により、次のとおりチラシ等の配布の承認を申請します。」書かれています。続けて、「記 1 配布の目的  2 配布する場所(利用許可を得た施設近辺とする) 3 配布の期間 命和 (20  )年  月  日  時から  時まで  4 配布の物件名及び数量  5 配布の内容(配布資料2部添付)  6 その他  配布責任者の氏名・連絡先  7 申請受付 (1) 利用許可を受けて施設を利用する催事を含み、芸術文化を目的としていると判断できる配布物に限ります。(2) 配布日の前日までに施設利用受付窓口に提出してください。(3) 配布したビラ、チラシ等が当施設内及び近隣の道路、他の施設で放棄された場合は、責任持って回収していただくことを条件とします。(4) 配布方法等について劇場の指示に従わない場合は、配布中止していただくことがあります。 防災センター・総合案内に承認したコピー送付 (公財) 愛知県文化振興 事業団劇場運営部」と書かれています。

チラシの配布の承認を求める申請書のひな型でした。

「愛知芸術文化センター栄施設管理規程」が愛知県法規集で見当たらないのは、愛知県の法規ではないので当り前のことです。

4 ところで、公益社団法人愛知県文化振興事業団ですが、同財団は、愛知県が愛知芸術文化センター指定管理者に指定している団体で、ホームページを見ると平成4年4月1日に設立されているということだそうです。愛知県の総務部総務課が作成している「愛知芸術文化センター(栄施設) 指定管理者運営モニタリング結果(平成29年度)」を見つけましたが、それには指定管理期間が平成26年4月1日から平成31年3月31日とありますから、今年の4月1日からの指定を再度受けているということになるようです。公募ではないということで広報はまったくしないようです。

公務労協のホームページに「指定管理者制度」の分かりやすい説明がありますので参考にしていただきたいと思いますが、指定管理者は「公の施設の管理権限を委任され、条例の定めにより使用許可も可能となるが、設置者である自治体の責任で行うべき基本的な利用条件の設定は、管理の基準として条例で定められる」ということになります(「指定管理者制度とは」「8 指定管理者制度の特徴」(2)参照)。

というわけで、公開質問状では「愛知芸術文化センター管理規則(平成4年愛知県規則第88号)第39条に基づく愛知芸術文化センター栄管理規程(平成4年10月初日制定)第6条及び第7条の規程」との表現がされているわけです。「愛知芸術文化センター栄管理規程」は、「愛知芸術文化センター管理規則」第39条の規定に基づき、公益社団法人愛知県文化振興事業団が制定しているというわけです。

5 愛知芸術文化センター管理規則」第39条ですが、次のようなに規定されています。

(雑則)

第三十九条 この規則に定めるもののほか、センターの管理に関し必要な事項は、センター長が定める。ただし、次に掲げる利用等に関し必要な事項は、センターの各施設の長が定める。

一 美術館の展示室の利用

二 美術品等の模写及び複写

三 芸術劇場のホール及びリハーサル室の利用

四 文化情報センターの催事室及びアートプラザの利用

五 文化情報センター及び図書館の図書等の利用
六 図書館の駐車場の利用
2 芸術劇場等の指定管理者は、前項ただし書の規定により芸術劇場等の長が定めるもののほか、知事の承認を受けて、同項第三号及び第四号に掲げる利用並びに文化情報センターの図書等の利用に関し必要な事項を定めることができる。
3 図書館の指定管理者は、第一項ただし書の規定により図書館長が定めるもののほか、図書館長の承認を受けて、図書館の駐車場の利用に関し必要な事項を定めることができる。
利用者や、施設に立ち入る者が施設の利用に関する定めに関して、何も
また、愛知芸術文化センター管理規則」では、センターの立入りの禁止、センターから立ち退きについて規定しているのは、第4条しか見当たりません。
(入館の禁止等)
第四条 センター長及びセンターの各施設の長(芸術劇場等については、指定管理者がある場合にあっては、指定管理者)は、めいてい者その他センターの秩序を乱し、若しくは乱すおそれがある者又はセンターの施設に損害を加え、若しくは加えるおそれのある者に対し、センターへの立入りを禁じ、又は立ち退かせることができる。


指定管理者制度ですが、2003年(平成15年)9月施行の地方自治法改正で、公の施設の管理方法が管理委託制度から移行した制度となります。

大村知事の公開質問状には「愛知芸術文化センター栄管理規程(平成4年10月初日制定)」となっていますが、指定管理者制度が施行された平成15年9月以前に、愛知県文化振興事業団に「愛知芸術文化センター栄管理規程」を定める権限など与えられていません。「平成4年10月初日制定」とは何を言いたいのでしょうか。


6 次に、愛知芸術文化センター条例ですが、同条例には、

(利用者の義務)

第九条 センターの利用者は、センターの利用に際しては、この条例及びこれに基づく規則の規定並びに第五条第二項の規定により許可に付けられた条件及び関係職員の指示に従うとともに、センターの秩序を乱すような行為をしてはならない。

(過料)

第十三条

3 第九条の規定に違反してセンターの秩序を乱した者に対しては、五千円以下の過料を科する。

という規定があります。

愛知芸術文化センター条例中には、「利用者」の他に、「観覧しようとする者」という用語が第8条に出てきます。定義規定がありませんので、条例制定時の議事録を確認する等の方法によって確認するしかありませんが、愛知県は「『観覧者』は『利用者』に含まれる」と理解しているようです。

また、施設とは「施設」の内部だけでなく、施設本体ではなく施設の敷地も含まれると理解するようであるが、条文の体裁、別紙での施設の記述の仕方からすると、どうなのでしょう。

東京都や大阪府の社会教育施設について定めている条例(例えば、「東京都江戸東京博物館条例」)の規定を比較してみた上で、「利用者」とは、利用料を支払い、施設を利用する人のことを言い、施設とは、施設の建物内のことであると解釈すべきであろうという考えに至りました。


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