censorship.social (1) [興味深い]
あいちトリエンナーレのあり方検討委員会が作成した2019年12月18日付け「『表現の不自由展・その後』に関する調査報告書」の検証ポイント 34(75頁)では、
「34 芸術監督は、自分の会社の負担で、展覧会の詳細を解説するウェブサイトを提供し、また本来は、不自由展実行委員会側が負担すべき費用の立替えを約束したが、これは不適切ではないか。」
ということを検証の対象としています。
この検証すべき点に関し、検証委員会の調査において判明した事実を整理している(と思われる)「わかったこと」
の欄では、
「・不自由展実行委員会の希望により、同会側の不安を解消するため、以下の内容の覚書を、芸術監督と不自由展実行委員会の間で交わした。
① あいちトリエンナーレ実行委員会から支払いが行われるまでの間、不自由展実行委員会は、芸術監督に必要経費の立て替えを請求できる。
② 不自由展実行委員会が作家から提訴されたときは、紛争解決に要した経費を芸術監督が負担する。
・あいちトリエンナーレ実行委員会のウェブサイトは、もともと作家と作品を簡単に紹介する仕組みとなっている。しかし本件では、芸術監督が経営する会社が不自由展実行委員会のウェブサイトを作成し、10月9日(水)から公式ウェブサイトにリンクが貼られた(https://censorship.social/)。これは、参加作家の名前がHP上に発表されないことに不満を持った作家からの要請に応える目的、そして、不自由展実行委員会にウェブサイト構築のノウハウが乏しかったという事情によるとされている。
・しかし、以上の事はいずれも不適切である。」
との整理がされています。
また、検証委員会の見解を示しているものと理解される「備考欄」には、
「・クオリティを高めるために芸術監督が企業等から協賛金を集めてくることは業務内であり問題ない。予算不足を解消し、不自由展を何とか実現したかったという芸術監督の熱意は理解できる。
・しかし、あいちトリエンナーレ実行委員会は、不自由展実行委員会と業務委託契約を締結する関係にある。その中で、芸術監督が自費とはいえ相手方の費用を負担することは、公私混同とみなされかねない行為である。また、同じく自費とはいえ個人として特定作家を協賛することも芸術監督の公的立場に照らし不適切である。なお、事務局はこれらを知りながら黙認していたが不適切である。」
との委員会の意見が述べられています。
( 下図は、あいちトリエンナーレのあり方検討委員会作成の2019年12月16日付け「表現の不自由展・その後に関する調査報告書75頁の検証ポイント34)
うっかりしていましたが、この検討委員会の2019年12月18日付け調査報告書では、2019年9月25日付けの中間報告 と「わかったこと」欄と「備考」欄の記載内容を変更していることに気付いていませんでした。
中間報告の「検証ポイント 31」(52頁)が、12月18日付けの最終の報告書の「検証ポイント 34」と同じ事項の検証をしていますが、中間報告の「「わかったこと」の欄で、
「・あいちトリエンナーレ実行委員会のウェブサイトは、簡易な作家・作品紹介を用意する仕組みとなっている。そこで、詳細については、作家がそれぞれ用意するウェブサイトにリンクを貼ることが多い。しかし本件では、芸術監督が経営する会社が不自由展実行委員会のウェブサイトを作成し、当初はあいちトリエンナーレの公式ウェブサイトにリンクか貼られていた。現在のアドレスは(https://censorship.social/)。」
となっている箇所が、12月18日付けの調査報告書の方では、
「・あいちトリエンナーレ実行委員会のウェブサイトは、もともと作家と作品を簡単に紹介する仕組みとなっている。しかし本件では、芸術監督が経営する会社が不自由展実行委員会のウェブサイトを作成し、10月9日(水)から公式ウェブサイトにリンクが貼られた(https://censorship.social/)。」
と多少、簡略化されていました。 また、「備考」欄の方は、大幅な変更がされていました。
中間報告では、
「・予算不足を解消し、不自由展を何とか実現したかったという芸術監督の熱意は理解できる。
・しかし、あいちトリエンナーレ実行委員会は、不自由展実行委員会と業務委託契約を締結する関係にある。その中で、芸術監督が自費とはいえ相手方の費用を負担することは、あってはならない行為である。なお、事務局も、それを知りながら黙認していたことも問題である。
・但し、予算内で収まらない作品は他にも多々あり、それについて、芸術監督が協賛企業から寄附を集めなければならない体制にそもそも無理があった。」
となっていましたが、12月18日付け調査報告書の方では、
「・クオリティを高めるために芸術監督が企業等から協賛金を集めてくることは業務内であり問題ない。予算不足を解消し、不自由展を何とか実現したかったという芸術監督の熱意は理解できる。
・しかし、あいちトリエンナーレ実行委員会は、不自由展実行委員会と業務委託契約を締結する関係にある。その中で、芸術監督が自費とはいえ相手方の費用を負担することは、公私混同とみなされかねない行為である。また、同じく自費とはいえ個人として特定作家を協賛することも芸術監督の公的立場に照らし不適切である。なお、事務局はこれらを知りながら黙認していたが不適切である。」
と、マイルドな表現に変わっていました。
( 下図は、あいちトリエンナーレのあり方検討委員会作成の2019年9月25日付け中間報告書52頁の検証ポイント31)
このような修正がなされたのは、「芸術監督からの意見」を検討してのことのようです。
芸術監督は、参考資料1の「芸術監督からの意見」26~29項(意見17~20頁)で意見を述べられています。
26項では、「わかったこと」の「詳細については、作家がそれぞれ用意するウェブサイトにリンクを貼ることが多い。」の箇所について、「多くはなく、特別に希望のあった作家のみ対応していた。あいちトリエンナーレのウェブサイトを担当する制作会社は例外的対応になるため嫌がっていた。」との意見を述べられています。
27項では、「わかったこと」の「これは、参加作家の名前がHP 上に発表されないことに不満を持った作家からの要請に応える目的、そして、不自由展実行委員会にウェブサイト構築のノウハウが乏しかったという事情によるとされている。」との箇所について、「加えて、セキュリティ的な観点からネット炎上を避けたい事務局からの希望(具体的な作家や作品を記載することは避けたいという要望があった)に応えたものでもある。また、そもそも外部に出す広報用テキストは弊社スタッフが編集・校閲している。」との意見を述べられています。
28項では、「備考」の(「あいちトリエンナーレ実行委員会は、不自由展実行委員会と業務委託契約を締結する関係にある。その中で、芸術監督が自費とはいえ相手方の費用を負担することは、あってはならない行為である。」)とある、「あってはならない行為である。」の箇所については、
「あってはならないとする理由が不明である。個人協賛を芸術監督がしてはいけない理由はなく、何が問題になるのか示されていない。前述の通り、今回政治・社会的なテーマの作品を出展希望したほかの参加作家に対しても一様に機会やリサーチャーの紹介、資金繰りやノートPC やプロジェクターなど機材の貸与を行ってきた。その過程をキュレーター陣は皆把握している。そのように考えるキュレーターはいないと思われる。また、複数の作家の作品をトリエンナーレ準備中に個人的に購入しており、制作や滞在費補助とした例もある。キュレーターたちからは、作家のプランの予算が足りないことが何度も告げられ、それに応答するため6000 万円以上の企業・個人協賛を集めてきている。それを繰り返していたにも関わらず、事務局やキュレーターからは何も問題であるとは言われなかった。」
と意見を述べられています。
29項では、「備考」の「但し、予算内で収まらない作品は他にも多々あり、それについて、芸術監督が協賛企業から寄付を集めなければならない体制にそもそも無理があった。」の箇所について、
「体制に無理があったのではなく、クオリティを高めるための努力である。どうしても予算が足りず、当初プランをあきらめた事例もある。ちなみに、輸送費の高騰などで当初の予算内に収められない例が頻発したため、トリエンナーレ全体の参加作家数を減らす提案も何度か行ったが拒否されていた。」
と意見を述べられています。
芸術監督の意見が、検証委員会の認定した事実や評価に対して正当な反論ないし意見であるかはよく分かりませんが、意見を容れて、12月18日付け報告書では表現を修正したということになります。
2021-01-23 20:10
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