芸術監督が展示したいとの強い意向を持っていたと理解するのはおかしいですか [感想]
昭和天皇が燃やされている大浦信行氏の映像作品「遠近を抱えて PartⅡ」が、あいちトリエンナーレで展示されることとなった経緯について、あいちトリエンナーレのあり方検討委員会は2019年12月18日付け「『表現の不自由展・その後』に関する調査報告書」の中で比較的詳細に報告をしています。
抜き書きしますと、
・ 「遠近を抱えて PartⅡ」は、当時公開予定であった新作映画「遠近を抱えた女」から天皇の写真が燃えているシーンと従軍看護婦の女の子の前作の最後の方の登場シーンを抜き出し、2014年に公開した90分の映像作品「靖国・地霊・天皇」からイメージ部分の映像を重ね合わせて、20分にまとめたもの(56頁)。
・ 今回の不自由展では、かつて富山県立近代美術館の所蔵で「86富山の美術」に出品され、その後売却された4展を出品する予定だったが、スペースが狭いことから、前記、後記で2点ずつ展示される予定だった。2019年5月8日ミーテモングにて、不自由展実行委員会から、大浦氏が新作映像もセットで出品したいとの意向が示された。その後、不自由展実行委員会の小倉氏が、新作映像は「検閲」というコンセプトに合わないとの意見を大浦氏に伝えたところ、大浦氏は、検閲された作品としてではなく、芸術作品として鑑賞してほしいという考えを示し、いったん作品の辞退を申し出た(5月21日)。5月24日、芸術監督はDVDを入手。5月27日、芸術監督が大浦氏、不自由展実行委員会と会い、版画とセットの関係資料という位置づけで、最終的に出品することに合意した(69頁)。
・芸術監督が公表した「2019年8月15日(木)あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」に関するお詫びと報告」という文書に以下の説明があった。〔以下、該当部分を引用〕①「今年4月8日夜に行われた対談番組で、「表現の不自由展・その後」の企画説明をしているときに、いくつかの不適切な発言がありました。」(中略)「もう1つは、番組内で天皇制について東浩紀さんに聞かれたとき、「2代前じゃん」などと答えたことです。なぜこのように答えたのかというと、大浦さんの新作の映像作品では若き日の昭和天皇の肖像写真が燃えているところが写るのですが、まずこの元になった作品が「日本人としての自画像を表現するために昭和天皇をコラージュした作品」という説明を受けていたこと。また昭和天皇は今上天皇から見て2代前の天皇であるため、これを燃やす映像表現であっても、現在の日本の体制に対する反抗等には当たらないと受け止めていたからです。戦後生まれの僕にとって、天皇とは、敗戦によって元首の座を降り、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴となった以降の昭和天皇であり、上皇であり、今上天皇を指していました。大浦さんの作品に使われていた主権者としての昭和天皇は、僕にとっては、それ以前の天皇と同じように、歴史的、象徴的な存在だったのです。この点については、そうではない人々が抱く感情についてもっと想いを馳せるべきだったと反省しています。」(81~82頁)
下表は、検証委員会が別冊資料1として提出している「データ・図表」33頁にある「大浦信行『遠近を抱えて PartⅡ(新作映像)』の展示に至るまでの経緯・概要」と題する表です。
この表の方が、活字を読んで内容を理解していくよりも、経緯が一目ですね。
経緯は、
4/8 ニコニコ動画の対談 → 5/ 小倉氏,大浦氏へ意見
→ 5//21 大浦氏辞退申出→ 5/27 出品合意
だったということになります。
芸術監督は、検証委員会の(中間)報告の内容に関し「芸術監督からの意見」と題する意見書を提出して意見を述べいます。
ダウンロードしたPDFファイルを「大浦」でキーワード検索すると、9頁、12頁、25頁、26頁、参考資料1⑴添付資料➁の1頁目、参考資料1⑵の2頁目に「大浦」がヒットしますが、経緯の整理に誤りがあるとの芸術監督からの指摘はありません。
2019年4月8日のニコニコ動画での東浩紀氏とのトークでは「二代前の天皇が燃えてる」と言われていますが、出品が予定されてないかったはずなのに、どうしてそのようなトークをしているか、その説明を誰も何もしていません。
その点は措くとして、そのような経緯を経た上で、芸術監督が、大浦信行氏の作品展示をしたかったため「、映像を流してくれなければ展示しない」との大浦氏に譲歩したとの事実認定は 容易にできるのではないかと私は思います。
検証委員会の報告では、2019年4月11日に選任されたアシスタント・キュレーターがいるみたいなのですが(66頁「実務を担うアシスタント・キュレーター」)、この人物が報告書70頁に出てくる「展示を任されたアシスタント・キュレーター(愛知県美術館学芸員)」とは別の人物だろうと思われるのですが、どうすれば別人であることがはっきりすることができるのでしょう。
最後に、webDICEというサイトの骨子の眼が2019年8月24日に発信している「あいちトリエンナーレ津田大介監督インタビュー」というインタビュー記事がありますが、なかなか内容を読み解くことができません。
事件直後のインタビューで内容的にも極めて興味深いと思います。
2021-06-18 09:16
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コメント(1)
お疲れ様です
記載時系列の証明の補強にしかなりませんが、名古屋市議会委員会議事録か、愛知県議会委員会議事録についても、芸術監督のニコニコ動画での対談内容について言及があったと記憶してます
ちと今は出先で具体的な議事録名確認はできませんが、ご参考まで
by 会証 (2021-06-18 12:41)