警察統計の正確性 [検討]
溝口敦氏は自著 「続・暴力団」で、
警察は人数だけ増えて、やるべきことをやっていない
と、警察に対する痛烈な批判をされています。
警察統計についても、ご都合主義で、信頼性に欠けるものだとして、
平成11年(1999年)に起きた桶川事件 後、警察庁は、それまでカウントしていなかった軽微な犯罪を統計に計上するようにした。
その結果、交通関係を除く刑法犯の認知件数は平成14年(2002年)がピークで年間300万件に近づくことになった。
しかし、認知件数の増加によって、検挙率は低下することなったが、検挙率の低下は あまりに不体裁だと考えたのか、
認知件数はその後、急激に減少し、平成19年(2007年)以降、また年間200万件を割るようになった。
検挙率は平成13年(2001年)の 19.1 %を底に、 30 %に向けて上向いて来たが、
なんのことはない、桶川事件以前と同様、刑法犯の認知件数を減らした上での検挙率の(情けない)アップなのです。
警察庁の統計のコントロールは相変わらずと見られます。
という内容のことを述べられてます(同書155~157頁)。
この溝口氏の言説が正しいかを、
法務省の平成24年版犯罪白書のあらまし(「第1編 犯罪の動向」)で確認してみました。
まず、
交通関係を除く刑法犯の認知件数は平成14年(2002年)がピークで年間300万件となったが、
その後、急激に減少し、平成19年(2007年)以降、また年間200万件を割っていること、
また、
検挙率が平成13年(2001年)の 19.1 %を底に、 30 %に向けて上向いて来ていること
が確認できます。
(上図は平成24年版犯罪白書のあらまし「1-1-1-1 図 刑法犯 認知件数・検挙人員・検挙率の推移」から引用したものです。)
この図からも明らかですが、認知件数の急増と急減は、窃盗罪の認知件数が一番影響をしています。
窃盗罪の認知件数は、平成16年(2004年)に約60万件でしたが、平成23年(2011年)は34万7千件まで減少しています。
4割以上の減少です。
(上図は、平成24年版犯罪白書のあらまし「1-1-2-1 図 窃盗 認知件数・検挙件数・検挙率の推移」から引用したものです。)
厳しい犯罪取締りによって犯罪の認知件数が減ったとは考えられません。
溝口氏が指摘するように、
警察庁が統計をコントロールしている
ということは事実のようです。
「続・暴力団」ですが、すごく良い出来だと思います。書評はアマゾンででも確認ください。
なお、溝口敦氏の著作は評価していなかったのですが、「続・暴力団」、「暴力団」を読んで見直しました。