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相続税・贈与税の課税回避 [検討]

与党である自民党・公明党が先週(1月24日)発表した 平成25年度税制改正大綱 

に目を通していたところ、

「二  資産課税」 「6 その他」 「(国 税) ⑴」 に、

日本国内に住所を有しない個人で日本国籍を有しないものが、日本国内に住所を有する者から相続若しくは遺贈又は贈与により取得した国外財産を、相続税又は贈与税の課税対象に加える。

(注)上記の改正は、平成25年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する国外財産に係る相続税又は贈与税について適用する。

という内容の改正をすると書かれているのに、目がとまりました(60頁)。

  

 

現行法では、

日本国籍がなく、日本国内に住所も持たない者が、贈与あるいは相続によって財産を取得したとしても、

取得した財産が国外財産である場合には贈与税や相続税は課税されません。

(相続税につき、相続税法1条の3、同2条、相基通1の3、1の4共-3。贈与税につき相続税法1条の4、同2条、前記通達)

(相続については、国税庁のタックスアンサー「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」、贈与については「No.4432 受贈者が外国に居住しているとき。」を各参照下さい。)

 

  

今回の相続税・贈与税の課税対象の拡大は、    

昨年11月30日の日経電子版の記事「外国籍の子・孫への相続税、外国資産も課税対象に 財務省検討」が報じていたように、

外国にある資産への課税を逃れる事例があるため、課税の網を広げることを目指した

ものという理解ができます。

  

ですが、相続税の課税を回避するスキームは、外国に居住する外国籍の子や孫への財産移転だけではありません。

日経DIGITAL の公認会計士の小池敏雄氏の昨年9月5日の記事「第24回 投資と税金 海外資産管理会社と富豪の節税術」で、小池氏が説明をされていますように、

①  海外に資産管理会社を設立、

②  国内財産を海外法人に移転(国内財産 が、 国外財産となる)、

③  親子で5年間海外に居住しその後外国法人の株式を贈与・相続

 という ものすごく ゴッツイ のが残っています。

  

小池氏の記事によりますと、実際、

長者番付20位ほどの公開会社会長A氏(資産推定1,300億円)が、平成22年10月に、持ち株約67%、時価約1千億円を資産管理会社A合同会社(A会長所有)に譲渡。

A合同会社の全持分は、香港のAホールディングス社香港(A会長所有、下の図ではAHD香港)に現物出資により移転。

A会長およびその家族は数年前から香港在住といわれているので、このまま推移し、「5年間海外在住」の条件をクリアーすれば、今後予想される贈与・相続に際しても課税されずに済むと想定される、

という案件が現在進行中ということだそうです。

  

改正しようと思えば、相続税法1条の3第2号と同法1条の4第2号の、

日本国内に住所がない期間を 5年から、10年。あるいは20年とかに延長するだけのことだと思うのですが。

財務省は なぜ、こっちも手を付けないのでしょう。

  

相続税法

(相続税の納税義務者)

第1条の3  次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。

 相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有する個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(当該個人又は当該相続若しくは遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が当該相続又は遺贈に係る相続の開始前5年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限る。)

(贈与税の納税義務者)

第1条の4  次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、贈与税を納める義務がある。

 贈与により財産を取得した日本国籍を有する個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(当該個人又は当該贈与をした者が当該贈与前5年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限る。)