社員との転職禁止契約 [感想]
今日(2月7日)の日経電子版の記事「辞める社員からの情報漏れ防げ 企業が持つ選択肢」では、
元社員が、重要な技術や顧客情報を持ち出して転職先で利用したり、自分で会社を興して利用したりする問題が深刻になっていること
が記事にされています。
結構分量がありますので、登録会員になっていただき、記事を直接お読みいただくのが一番なのですが、
記事の結論は、当然のことですが、
情報漏洩対策としては、社員との秘密保持契約と転職制限契約( 競業避止義務契約 きょうぎょうひしぎむけいやく)を結ぶのが一番現実的な方法だ、
ということです。
今回の記事の内容については、おおむね記事に書かれている通りだという意見を持ちました。
ですが、一点。
ソニー業務執行役員だった鶴田雅明氏が、ソニー退社後、数カ月で、日本サムスンの代表取締役に就任したことに関し、
「転職制限契約は憲法が定める職業選択の自由に触れるおそれもあるが、
1970年の奈良地裁の判決では退職後2年間の制限を定めた契約が有効とされているので、
職種や地域の限定、退職金の上乗せなどを工夫すれば、退職後5年程度までは認められる可能性が高い 」
との専門家の意見が述べられている部分には、 ??? と思いました。
転職制限契約(競業避止義務契約)の有効性については、
① 競業を制限する目的、
② 労働者の職場における地位、
③ 競業を禁止する範囲(期間、地理的範囲)の相当性、
④ 代償措置の有無
などを総合的に考慮し、合理性のない制限であれば、契約は公序良俗違反(民法90条)として無効と判断される、
というのが一般的な理解です。
このうち、競業を禁止する期間については、「何年以上となっている契約であれば、(機械的に) × 」となるというような明確な基準があるわけではありません。
とは言っても、私の感覚では、
(そもそも、裁判所は、競業禁止義務契約の有効性など、滅多に、認めてくれない。仮に、有効性を認めてくれる場合でも、)
競業禁止期間は 3 年間までのものだけ
といったところです。
日経の記事では、専門家が、
職種や地域の限定、退職金の上乗せなどを工夫すれば、退職後5年程度までは認められる可能性が高い
と高説を述べられていますが、
競業禁止を5年認めた裁判例でも勝ち取ってみえるのでしょうか。