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行政書士会の強制加入制度の廃止あるいは 一都道府県に二つ以上の行政書士会設置を認めること [感想]

第15回規制改革推進会議(平成29年4月14日開催)の議事次第を見ていたところ、

規制改革ホットライン の中に、

「55  行政書士会の強制加入制度の廃止あるいは一都道府県に二つ以上の行政書士会設置を求めること」 

という提案があるのを見つけました(「・投資等ワーキング・グループ関連の提案内容(PDF形式:188KB)」)。

    

Google で「規制改革会議」「強制加入」で キーワード検索してもこれしか出てきませんので、強制加入の士業に関しての提案としては初めてのものであるようです。
                         
      
提案された方は、提案の具体的内容等で、
    
「  現状、行政書士は事務所がある都道府県の行政書士会に加入しなければなりませんが、行政書士会が「困りごと解決」のような弁護士と誤認させるような依頼誘致を行ったり、ADRや成年貢献のような行政書士の資格が必要ない業務に予算を計上し行政書士会の予算で組織が運営されていたりします。
   
これらは、行政書士制度の本旨から外れたことであり、強制入会かつ会費の支払いを拒否すれば廃業を勧告するにもかかわらず、行政書士会が、行政書士の資格が必要ない憲法によって国民に保障された一個人の経済活動の自由の範疇にあたる業務について、行政書士から徴収した会費を支出するということは、「行政書士法に定められていない業務をやらない自由」を侵害するものであり、経済活動の自由、思想信条の自由を侵害している状況です。
   
東京都行政書士会の総会は、官公署への書類の作成・提出業務に支障をきたす平日に行われ、かつ代議員制を敷いているので、会員個人の意見が総会に反映されることはなく、かつ行政書士会の執行部が行政書士法を理解していないため、行政書士会内での「部分社会の法理」を適用すれば「行政書士会の強制加入制度の濫用」、「行政書士の名称使用の濫用」につながります。
   
現状、行政書士会は、行政書士法第15条2項に記されている目的を遂行していません。行政書士の制度設計を無視し、権利を濫用している行政書士会への強制加入は、行政書士会に定められた業務を行う上での参入規制であり、思想信条の自由、経済活動の自由を侵害するものであります。
   
都道府県知事の監督が必要ということであれば、業務の方向性が違う行政書士を一つの会にまとめることをせずに、一つの都道府県につき二つ以上の行政書士会の設置を求め、行政書士の経済活動の自由、思想信条の自由を保障すべきです。「行政書士法に定められた業務でない業務のための資金を出せ、出さなければ裁判を起こして廃業に追い込む」というやり方で行政書士会は運営されていますので、このような状況を続けるのであれば、行政書士会の強制入会制度を廃止するか、都道府県に2つ以上の行政書士会の設置を認めるべきです。  」
 

と述べられています。


本当は 何人が労働基準監督官の業務をしているの ? [困惑]

(前回の続き) 

労働基準監督年報で、労働基準監督監督署に配置された 労働基準監督官の定員の年毎の推移を整理できるはずだと思われたのではないでしょうか。それは私も同じでした。

さっそく、事務所近くの 愛知県図書館 で労働基準監督年報をチェックすることにしました。

下の 「労働基準監督官・定員(人)の推移」がその調査結果です(元データは末尾に掲載しておきました。)。

労働基準監督署配置の労働基準監督官と労働基準監督官全員の、それぞれの定員数 の年次推移をグラフは示していますが、数十年にわたり微増であったことが分かります。

グラフでは欠けが生じていますが、昭和31年(1956)から36年(1961)の6年分は、労働基準官の定員数 が掲載されていないためデータの集計ができませんでした。昭和63年(1988)から平成3年(1891)、平成6年(1894)から平成22年(2010)までの分の欠けは 愛知県図書館が労働基準監督年報を所蔵していないためでした。

調査未了なので完成させてからブログに載せようかとも思ったのですが、欠けた部分のデータがなくとも、定員の推移がどうであるかは一目です。知り得た知識を明らかにすることを優先することにしました。

時機をみて完成させたものを出したいとは思います。

労働基準監督年報の平成23年(2011)から平成27年の5年分は、厚労省がインターネット上で公表している労働基準監督年報のデータを使わさせてもらいました。                             

  労働基準監督官 定数年次推移.jpg

もちろん、労働基準監督官の定員数の漏れデータを、審議会等で厚労省が公表しているデータで補えなえるのではないかと考え、インターネット上で調べてみました。

そうしたところ、「労働基準監督業務について 《事務・事業説明資料》」という標題の厚労省が作成する資料を見つけました。

資料の2頁目では、労働基準監督業務に従事する 職員 (非常勤) を、

平成22年度(2010)が

      本省          23人(うち非常勤 0人)

      労働局     444人(うち非常勤54人) 

      監督署  2,474人(うち非常勤207人) 

であるとしています。

今年3月16日付の厚労省労働基準監局が作成した「労働基準監督行政について」では、労働基準監督署配置の労働基準監督官について、 

     平成25年度(2013)   3,198人

     平成26年度(2014)   3,207人    

     平成27年度(2015)   3,219人

     平成28年度(2016)   3,241人 

としていたはずです。労働基準監督署配置の労働基準監督官の数が 平成22年度(2010)と平成25年度(2013)では900人ほど、労働基準監督官の数が合いません。

(補足 … 労働基準監督官は非常勤職員ではないので、労働基準監督署において労働基準監督業務に従事している平成22年の職員数2,474人から非常勤の207人を引いた人数である 2,267人が労働基準監督官の上限であるはずです。その2,267人と平成25年度の3,198人では 931人の差異が生じていることになります。) 

平成23年(2011)、平成24年(2012)の2年間で (労働基準監督署配置の労働基準監督官について) 900人の大幅増員がなされていれば、二つの資料の辻褄は合うことになるのですが、どうなのでしょう、

 (下図は、厚労省労働基準監局が作成した平成29年3月16日付「労働基準監督行政について」本文1頁目と同省作成の「労働基準監督業務について 《事務・事業説明資料》」本文1頁目を対比させた図。)

 労働監督官と労働基準監督業務担当職員.jpg

 

幸いなことに、平成22年と平成25年のミッシングリングを埋める、平成23年(2011)と平成24年(2012)の、労働基準監督署に配置された定員数が労働基準監督年報に掲載されていることが分かりました。

平成23年労働基準監督年報(第64回)の 28頁には、平成23年度の

        労働基準監督署  3,169 人 

と、また、平成24年労働基準監督年報(第65回)の33頁には、平成24年度の

        労働基準監督署  3,181人  

と書いてあることが確認できました。

 

厚労省が作成した「労働基準監督業務について 《事務・事業説明資料》」本文1頁目の

平成22年度(2010)

  本省          23人(うち非常勤 0人)

  労働局     444人(うち非常勤54人) 

  監督署  2,474人(うち非常勤207人) 

という労働基準監督業務に従事者の数字が、異質なものであることが一応は分かりました。

 

なぜ、このように 底の浅い、不整合なことを 言い続けていたのでしょうか。

また興味が湧いてしまいました。

 

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過去は消せない [旬の話題]

(前回の続き) 
 
労働基準監督行政について」では、労働基準監督官の人員数、監督業務の実施状況が説明されていますが、いかんせん、説明はここ数年の状況に限られています。 
 
 
労働基準法が制定・施行されたのは昭和22年(1947年)なので、施行から 60年経過します。かつては どんなだったのでしょうか。
 
そんな好奇心を満たすには 大学図書館に行って 労働基準監督年報を捲らないといけませんが、幸いなことに、労働基準監督年報のうちの、ほんの一部が電子書籍化されていて、インターネット上で読むことが可能となっています。
 
そんな中の一つに、「労働基準監督年報第5回(昭和27年) 」がありますが、それには、昭和22年から昭和27年まで期間における 労働基準監督官の定数や、監督業務の実施状況、対象事業場数、対象労働者数が全て掲載されています。
 
それを使えば、労働基準法施行当初の数年間の労働基準監督行政の実施状況の統計的なデータを得ることが可能です。
       
    
それでは、以下では、「労働基準監督年報第5回(昭和27年)」を使って、労働基準監督署に配置された労働基準監督官の定数 、定期監督、申告監督、司法処分の各監督業務の実施状況を比較してみることにします。
 
 
まず、労働基準監督署に配置された労働基準監督官の定員ですが、平成25年から平成28年の 労働基準監督署に配置されている 労働基準監督官の定数の年次推移は、下図のとおりだということです。
 
つまり、3,198人 → 3,207人 → 3,219人 → 3,241人 に毎年微増だということです。
 
労働基準監督官数の推移.jpg 
 
    
では、昭和27年当時では、労働基準監督署に配置された労働基準監督官の数はどの程度だったのでしょう。
  
「労働基準監督年報第5回(昭和27年)」の第2表によると、昭和22年(1947年)から昭和27年(1952年)までの 労働基準監督署に配置された労働基準監督官の定員は 下図のとおりであったということになります。
 
昭和22年    1,292人
 
昭和23年    1,292人
 
昭和24年    1,418人
 
昭和25年    1,759人
 
昭和26年    1,759人
 
昭和27年    1,655人 
 
 
 労働基準監督官の定員数推移(s23-27).jpg
 
この結果ですが、昭和22年~27年当時は、労働基準監督署に配置された労働基準監督官の定員は、せいぜい、1,700人程度ということになり、3,200人の労働基準監督官が配置されている現時の半数程度しか、労働基準監督官は労働基準監督署に配置されていいないことを示しています。
      
労働基準監督署の労働基準監督官の数が2倍になったわけですので、現場で監督業務を担当する労働基準監督官の配置は、昭和20年時と比べて、手厚くなったと言えそうではありますが、大事な判断要素を見落としています。
   
それは、現時の労働基準監督業務の 適用事業場数は 428万事業場、適用労働者数は 5,200万人であるのに対し(平成27年労働基準監督年報(第68回)の38、39頁参照)、
 
昭和27年当時は (推定)適用事業場数は  93万5979 事業場、適用労働者は 1079万5022人に過ぎなかったということです(労働基準監督年報第5回(昭和27年)の22、27頁を各参照して下さい。)。
 
どういうことかと言いますと、今から55年前の昭和27年当時は、労働基準監督業務の実施対象事業場数も労働者数も、現在の5分の1でした。反対に言えば、労働基準監督官の監督業務の業務範囲は、55年前と比べ、5倍になっているということです。
 
労働基準監督業務の対象が5倍になったのに、業務を担当する労働基準監督官を2倍に増員すれば、増員としては十分だと言えるのでしょうか。少数精鋭と言っても限度があるはずで、2倍の増員では手薄になっているというのが常識的な判断ではないでしょうか。
   
 
     
   次に、労働基準監督官の監督業務の実施状況の方ですが、平成25年から27年は下図のとおりだたっということです。
 
 監督業務の実施状況.jpg
 
 
それに対して、55年前の 昭和27年当時はどうだったのでしょう。
    
 
定期監督と申告監督については下図のとおりだったということです。
 
定期監督の 監督事業場数は、
 
   昭和23年  181,636 
 
   昭和24年  377,241
 
   昭和25年  252,049
 
   昭和26年  244,601
 
   昭和27年  211,297 
 
ということだったということですので、今よりも 定期監督の 事業場数は 多いことになります。
 
申告監督の方についても、昭和22年から昭和27年では、
 
  9,681 → 27,754 → 39,410 → 28,197 → 28,983 
 
という件数ということになりますので、やはり、今より 実施件数が多いことになります。
   
「昔の労働基準監督官は今よりも 2倍以上の働きをしていた」ということなのでしょうか。 
 
   
監督種類別違反事業場数等(s23-27).jpg 
 
 
最後に、司法処分ですが、
 
昭和23年から昭和27年までの 送致件数  起訴件数は、
 
                送致件数  起訴件数 
昭和23年      240件      100件
 
昭和24年   1,094件      522件 
 
昭和25年      960件      438件
 
昭和26年      602件      402件
 
昭和27年      391件      194件
 
ということでしたので、処理状況は現時と変わらなさそうです。
 
やはり倍の働きをしていたということになるのでしょうか。 
 
労働基準司法警察事務処理状況(s22-27).jpg 
     
 
     
厚労省としては 社会に必要とされている 労働基準監督業務を過不足なく遂行していると言いたいのでしょうが、5倍となった業務を、2倍に増やした労働基準監督官に処理させているわけですから、その主張は正しいと言えるのでしょうか。
       

労働基準監督業務の民間活用 [旬の話題]

3月9日開催された規制改革推進会議で、労働監督業務を民間事業者に委託することが検討されることとなり、タスクフォースが設置されることになりました。
 
3月16日、4月6日と2回のタスクフォースでの会議が既に開催されている現状にあります(規制改革推進会議第12回議事録、タスクフォース第1回議事次第議事録第2回議事次第)。
    
昨年9月12日の安倍首相の諮問 を受け、今年6月に規制改革推進会議が答申を提出する際までに、委託対象業務の範囲や民間委託事業者の権限を答申に盛り込むということだそうですので、急ぐのは時間がないからのようです(時事ドットコムニュース2016年3月9日「労働監督、民間委託検討へ=規制改革会議、6月に答申」) 。
   
     
労働省は 複雑な業務で民間は対応できないので反対しているということだそうです(時事ドットコムニュース2016年3月16日「労働監督、民間委託に反対=厚労省、規制改革会議の聴取で」)。
 
確かに、タスクフォースの第1回会議で、厚労省は「労働基準監督行政について」という資料を提出し、苦しい陣容の中で一所懸命にやっているということを言っていることが議事録を読むと分かります(議事録) 。
 
 
それはさておき、厚労省が提出した資料と議事録をよく読んでみると、(下に「労働基準監督行政について」8頁の箇所をそのまま図示しておきましたが、)厚労省は、「時間外及び休日労働協定点検指導員」、「非正規雇用労働者労働条件改善指導員」、「労働時間管理適正化指導員」、「働き方・休み方指導コンサルタント」という名称の 指導員やコンサルタントを使って、民活を実践していると強弁していることが載っています。
 
 指導員等.jpg
 
 
記事録では、8頁から9頁にかけて、土屋大臣官房審議官が次のように説明しています。
                                      記
「…。さらに民間活用という点におきましては、民間の人材を私どもの行政組織の内部にお越しいただいて活用するという取組みをやっております。具体的には社会保険労務士や民間企業のOBの方に監督署や労働局にこれらの方を配置して活用することで、特に下の表にございますように労働時間の関係で申し上げれば、①と③ということでございますが、①にございますように、まず時間外・休日労働の定、いわゆる36協定の点検指導をする点検指導員を全国で200名ほど配置しておりまし、下の注記の①にございますように、この方々には監督署において36協定が例えば必ず載が必要な事項に漏れがないかどうかとか、労働者の過半数代表の選出方法に問題がなかどうかというようなことを確認していただいた上で、時間外労働の協定の時間がいわる限度基準告示に沿ったものになっているかどうかということを点検していただき、必な指導を行っていただくというような対応をしていただいてございます。督署に出てきている36協定は年間で140万件ほどございますが、そのうちの56万件、約割について、この点検をこれらの方々に御対応いただいている状況がございます。
③の労働時間管理適正化指導員につきましては、下にございますように長時間労働が疑われる事業場に自主点検を実施していただいたり、あるいは管理の適正化のための訪問指をするというお立場で御活躍をいただいております。これについては平成28年度に新設いたしまして、29年度はこれを倍増させる予定でございます。これらの方々は基本的に私ども行政の中で非常勤職員として、つまり公務員としてのお立場を持っていただきなら御活躍をいただいているということでございます。…」
 
 
OBの食い扶持確保という臭いがプンプンですが、これらの指導員やコンサルタントのやる業務は 複雑ではないということなのでしょうか。