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労働事件の略式請求は不相当 大阪簡裁 [報告]

大阪区検が起訴した労働事件の略式命令の請求を、大阪簡裁が不相当として判断し、正式の公判が開かれるとの異例な事態となっているとの新聞記事を今年2月に見かけました(産経新聞2017年2月8日「裁判官¨異例¨の説諭『大阪を代表する会社なのだから…』 超安売り王『スーパー出玉』に罰金  留学生を長時間労働  大阪簡裁」)。     


略式命令の請求を不相当として正式の公判が開かれることになったと言うことですが、記事をよく読んでみると、

検事からは略式請求の際と同じ金額の罰金の求刑がなされ、裁判官が検事の求刑と同額の罰金額の判決がされたということです。

そのようなことであるなら、正式な公判手続がされたと言っても、略式の場合とは、代表者らを法廷に出頭させて、反省の弁を述べさせている点に違いがあるだけにも思えます。   

   

略式命令の請求を不相当とする場合、三好一幸著「略式手続の理論と実務」(司法協会)を読んでみると実務では下のような書式を用いられるということだそうです(48頁)。不相当かどうかを判断するのは裁判官だということです。

略式命令不相当の書式.jpg

大阪労働局の「かとく」(過重労働特別対策班)の案件でもないようですし、どうしてそんな扱いをするのだろうと思っていました。

  

ちなみに、前述の「略式手続の理論と実務」では、

「略式命令をすることが相当でないものである」とは、略式命令請求自体は適法であるが、略式手続によることが相当ではなく、通常の公判手続により審理すべき場合をいう。

(1)  事案が複雑で、公判手続における通常の審理を相当と認めるとき

(2)  訴因・罰条の追加、撤回又は変更を要するとき

(3)  多くの日時を要する事実の取調べを必要とするとき

(4)  100万円以下の罰金又は科料以外の刑を科すべきものと認めたとき

(5)  量刑について検察官と著しく意見を異にするとき

と書いてあります(48頁。なお、注釈刑事訴訟法の解説もほぼ同じでした。)。


スーパー玉出ではどれにも当て嵌まりません。   

  

もやもやした気分が続いていたところ、今月(5月)11日の産経新聞の記事(「スーパー玉出、和食さと…労働事件で略式は〝ダメ〟 大阪簡裁で移行相次ぐ、識者『社会情勢を考慮』検察『迅速さ失う』」)で、自分なりに納得することができました。  

その記事では、

労働関係事件で検察が請求した略式手続きを大阪簡裁が認めなかったケースは昨年11月以降、少なくとも5件に上る。短期間にこれほど続くのは異例だ。」

としつつも、

さらに大阪簡裁が略式起訴を退けた5件はすべて同じ裁判官が担当していた。このため全国の裁判所の傾向というより、大阪簡裁に限った「局地的」な現象とみる向きもある。」

と書いています。

  

和食さと の裁判官は スーパー玉出の裁判官と別人でしたので(朝日新聞DIGITAL2017年4月20日「 和食さと運営会社の社長出廷 違法な残業『心より反省』」対照)、うっかりしていましたが、      

一人の裁判官が略式請求を不相当としていたということのようです。        

ただその裁判官、異動で裁判担当からは外れたのか、あるいは退官してしまったのでしょうか。

裁判所ホームページではお名前を見つけることができませんでした。    

  

産経新聞も裁判官が刑事法廷の担当から外れたので、記事で「一人の裁判官」と書いたわけか。

やはりマスコミ統制はよく効いているようです。

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商工中金の不正融資 [感想]

小規模企業共済から契約者貸付を受けようと思い、昨年、商工中金の支店に行ったことがありました。

その支店に行ったのは10年振りぐらいではなかったかと思います。

行員の平均年齢が高く、男性が多いという感想を持っただけでなく、

店舗が古いということもあるのだと思いますが、何となく空気が澱んでいると感じました。

   

同じ政策金融機関でも、国民生活金融公庫を母体とする 日本政策金融公庫 の方は、 国金(コッキン)の際とは違って、お洒落になり、行員も若く、シャキとしているという印象なのですが、

商工中金の雰囲気が それと余りに違っているのに驚きでした。

例えて言えば、両者は、少し前の田舎の信金支店と、現在の都市部のメガバンク支店と言ったところでしょうか。  


「どうして商工中金も日本政策金融公庫に合流させないんだろう」

とその際、強く思いました。   

   

そんな商工中金に、通商産業大臣、財務大臣、金融庁長官から、業務改善命令が昨日9日に出されたということです(朝日新聞DIGITAL2017年5月9日(「商工中金に業務改善命令  政策金融で初  不正融資問題」)。   


融資実績を盛るため、組織的に、全社的に、書類の改ざん等をして不正な融資が行われていたことについてのものだということですが、     

消える運命をはね除けるため、不正をしたというだけなのでしょう。


商工中金の不正は、第三者委員会の発表では 35支店、816件の不正があったということです(日本経済新聞2017年4月25日「商工中金の不正融資、35支店816件  第三者委発表」)。

  

第三者委員会の調査報告書の「別紙 調査結果一覧表」(156頁の次)には 不正があった35支店の支店が掲載されていますが、その2頁目の名古屋支店の欄を見てみると、27口座で不正があった第三者委員会は判定しています(下に第三者委員会の調査報告書「別紙  調査一覧表の2頁目を引用させていただきます。)。

別紙調査結果一覧表抜粋.png



276件の池袋支店、239件の鹿児島支店は別格として、名古屋の27件は、28件の不正があった横浜に次ぐ不正の件数ということになります。

やはり澱んでいたということですか。   

    

MRIインターナショナル のその後 [感想]

「投資被害に遭うと どの程度の被害回収が可能なのだろう」ということについて雑談を同業者としました。          

MRIインターナショナル事件(2013年(平成25年)4月に発覚した、MARS債を顧客8,700人に販売し、1365億円の資金を集めた投資詐欺事件)について結成された MRI被害者弁護団 が存在しています。

その弁護団がいよいよ、今年(2017年)6月末で依頼受付を終了することになりました。

その話が発展しました。事件処理が一段落すれば、被害回復金を被害者へ配分することになります。

被害者への配分は どうなるんだろうね、と話が進んだわけです。    


弁護団のホームページでは、その点に関しては何も触れられていないため推測するしかありません。   

でも、このMRIインターナショル事件では、

2013年12月から3年半以上の期間にわたり、詳細な情報提供をされている、

「MRIインターナショル事件に見る『騙される人達』」とのタイトルで ブログ開設をされている方がいます。

内容が充実し、内容も正確なので、私もちょくちょく拝見し、参考にさせていただいていました。




米国での回収額は(SEC関係での回収分の) 上限40億円程度ではないかと予想をされています。

(ここから当然、実費と弁護士費用が控除された上で、配分されることになります。 

ブログ氏は弁護団に対して冷たい意見をお持ちのようですが、弁護団が存在しなかったのであれば、被害者救済を図ることはできないわけですから、MRI被害者弁護団は被害者救済のために十分役立っているものと私は考えております。)

    

MRIインターナショルは、タコ足配当をしていたわけですから、お金が消えてしまっているわけなので、その程度の回収しか出来ないのはやむを得ないだろうね、私と同業者とでは意見の一致を見ました。

怪しげな金融商品に手を出すと酷い目にあうということですか。