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県警の警察職員の任命権者 [感想]

刑事弁護に 関わる弁護士からすると、誰がやろうと 刑事記録の改ざんなど言語道断。

なので、「そんなことをすたのなら一発でアウト」といった感想なのですが、警察官にはそんな扱いはされていないようです。     


近いところでは一週間ほど前に、滋賀県警で、30代の男性警部補と40代の男性巡査部長の調書の改ざんかが報じられていました。

交通事故の実況見分調書を 一方の事故当事者の供述内容と整合するよう改ざんしたということです(時事通信社2017/5/27「交通事故の捜査書類改ざん=警部補ら2人書類送検-滋賀県警」)。

改ざんをした警察官2人は 虚偽有印公文書作成、同行使罪で送検されたということです。しかし、行政処分としては、懲戒処分ではなく、所属長訓戒の内部処分。

事故当事者が、交通事故に関する滋賀県警の行政処分に不服申立てをしたため不正が発覚したというですが、警察官らは「軽微な事故で(改ざんしても)事実関係や刑事処分には影響がないと安易に考えた」と話しているそうです。実際に影響があったからこそ、事故当事者が不服申立てがされている事案であっても、懲戒処分にはならないということです。      

滋賀県警の調書の改ざんは昨年8月にも、同じようなのがありました(朝日新聞DIGITAL 2016年8月16日「交通事故の供述調書を書き換えた疑い  滋賀県警の警部補」)。

「双方にけがはない」と供述していた加害者の供述調書を作成した40代男性警部補が、加害者を再度呼び出して供述調書を作成し直さないといけないのに、元の調書を「相手がけがをしているかもしれない」という趣旨に書き換えた疑いがあるというものでした。

調書の偽造ですので、当然、虚偽有印公文書作成、同行使罪で検察庁に送検。こちらも警部補には懲戒処分はなく、所属長訓戒。警部補は「安易な気持ちでやった」と話しているそうです。  


そんな記事に接していると、少なくとも、滋賀県では警察官の調書の改ざんは 軽微なものであれば、改ざんをした警察官は 虚偽有印公文書作成・同行使罪(刑法156条、158条1項)の被疑者として送致はされるものの、懲戒処分 が課されることはなく、所属長訓戒で済まされるのか、という思ってしまいます。

でも、そんなのありなのでしょうか。

    

愛知県の場合では「公務員の懲戒処分」を定め、処分基準と公表基準を定めていますが、滋賀県の場合は公表基準はあるようですが、元となる 懲戒処分の処分基準 の方はないようです(文部科学省の資料(「平成27年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」資料2-7)参照)。

  

そんなわけではないのでしょうが、処分基準が明確でないため 滋賀県警の場合では、警察官が調書偽造しても内部処分で済まされているのでしょうか。

    

愛知県の場合、警察職員の懲戒処分については、ほかの県職員とは違って、愛知県警察職員懲戒等取扱規程 という手続規定に従い、懲戒処分や所属長訓戒などの処分がなされていることになっているようです。

滋賀県の場合を調べてみると、「職員の懲戒の手続および効果に関する条例」という条例があり、同条例5条を受けた「職員の懲戒の手続および効果に関する規則」に基づいて、警察職員についても懲戒処分がされているようです。「任命権者」が懲戒処分を通知すると規定されているわけですが、滋賀県の警察職員の任命権者は 滋賀県警察本部長ということになります(「滋賀県 警察職員 任命権者 」でのグーグル検索結果参照)。

なので、警察職員懲戒等取扱規程など定めずとも、滋賀県警察本部長が警察職員に懲戒処分を課せばよいと言うわけです。


「任命権者」は 警察本部長