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銀行のカードローン [感想]

銀行のカードローンは、いつのまにか、クレサラ等が貸出の保証と融資審査がビルトインされる仕組みとなった。

改正貸金業法が成立(平成18年12月)した当時にはまったく想像できなかった。せいぜい、サラ金を子会社化した銀行が、サラ金から融資審査と回収のノウハウを吸い取り、自前で、ミドルレンジの個人向け無担保融資を業務に加えていくんだろうと思っていた。


それが、銀行のカードローンは、貸出が焦げ付いても、保証会社の代位弁済してくれるので、銀行は、保証料は支払わないといけないわけではあるが、泥臭い回収やノウハウのない与信審査から解放され、それらの業務部分がアウトソースされることになった。

保証会社が潰れない限り、銀行は「貸出金利-保証料率」を収益として確実に上げることができる。

  

銀行のカードローンが急増しているのも当然で、カードローンを宣伝する 阿部寛 や 吉高由里子 がテレビによく出てくるのもそんなわけだ。


日弁連は昨年9月16日に「銀行等の過剰貸付の防止を求める意見書」を公表し、銀行カードローンについても、年収の3分の1の総量規制の対象とすべきだと意見を述べていた。

全く反響がないかとと思っていたところ、今年3月頃以降、カードローンの過剰融資を金融庁が問題であるとの認識し、この9月には立ち入り検査をするそうである。

   

    

銀行は、プロパーで所持する預金情報等の信用情報に加え、サラクレに与信審査させることにより、サラ金系の日本信用情報機構(JICC)や、新販系のシー・アイ・シー(CIC)に登録されている、ホワイト情報(借入申込をしてきた者がどこからいくら借りているか)を取得できるので、与信審査時には、サラクレが所持する信用情報よりも多くの情報を持ち、情報優位の立場に立っているものと想像される。

銀行は、情報の優位性を生かし、より正確な与信審査をし、融資先をセレクトしているものと思っている。

後出の「強欲の銀行カードローン」には、三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長が「年収比で多額のお金を貸す場合は、その分だけ審査が厳しくなるので、倒れる確率が低くなる。」ということを述べていたということです(147頁)。本当に、銀行カードローンの貸倒率が サラクレの貸倒率よりも低いのなら、銀行カードローンは、サラクレよりも、有利に貸出先を選別しているからだということになり、私の想像に合致しそうです。


そもそも、銀行のカードローンでは、申込みの何割が蹴られているのか、貸付利率は何%なのか、所得と貸付利率とは反比例していると思われるがどうなのか、ミドルレンジの貸付けは実現されているのか、焦げつきによる保証会社の代位弁済率がどれほどなのか、

また、カードローンは過剰融資と昨今言われているが、個人向けの無担保融資はサラクレ,カードローンの総額としては何兆円程度が適正であると試算がされるのかなど、

銀行カードローンについて知りたいことが沢山ある。

  

そう思っていたところ、朝日新聞経済部記者である藤田知也氏の「強欲の銀行カードローン」(角川新書)が新刊として出版されたので、期待して読んでみた。


残念だが、同書で得ることができた知見は、

40歳頃だと思われる朝日新聞社員である著者が、三菱東京UFJ銀行のカードローン「バンクイック」に、スマホで、名前、住所、生年月日、持ち家か賃貸か、住宅ローンや家賃の額、家族構成、他の借金の有無とその返済額、会社の規模や業種、勤続年数や連絡先を記入して申し込んだ。

審査結果は、融資限度額300万円で金利は7.6%であったこと。

収入証明書がないと、融資限度額が200万円に下がり、利率も10.6%となったこと。

であった。


ただ、住宅ローンや他の借入金の有無残高、年収額などが明らかでないので、融資限度額や、利率が高いのやら、高くないのやら、判断することができない。


利率 7.6% なら、ミドルレンジの貸付けが 銀行カードローンによって実現されているとも言えそうにも思えるがどうなのだろうか。


   

強欲の銀行カードローン (角川新書)

強欲の銀行カードローン (角川新書)

  • 作者: 藤田 知也
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/09/08
  • メディア: 新書




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