手形交換は 急増後、急減していただけのことだった [豆知識]
2012年2月11日のブログ「手形の利用は激減している」では、手形利用が減っていることに触れましたが、その論拠として全銀協のホームページに掲載されたグラフ(全手形交換所での手形交換高と手形交換枚数の 昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)ま,での年次推移をグラフ化したもの)を引用していました。
下がそのグラフですが、その際、昭和56年から平成2年まで、手形交換高が急増していることには 何の気無しでした。
それから5年、たまたま、大分県産業創造機構の機関紙「創造おおいた」に日銀大分支店中村光将氏が連載している「日銀コーナー 統計の散歩道 統計の散歩道」の2015年2月号の「手形交換枚数・手形交換高について」という記事に、大分県内の手形交換高と手形交換枚数の年次推移が掲載されているのを見つけました。1949年(昭和24年)から2013年(平成25年)までのものですが、そこに載っているグラフは、手形交換高も手形交換枚数も、形が崩れた山型 のものです。
枚数については 1976年(昭和51年)が山の頂き、金額は1985年(昭和60年)がそれになっていました。
紙ベースの手形・小切手 [豆知識]
今年(2016年)6月9日、安倍内閣は「未来投資戦略2017」を閣議決定しました。同戦略ではFin Techの推進を課題の一つにしていますが、手形・小切手については「全面的に電子的な仕組みへと移行することについて、官民がが連携した検討をする」ことを盛り込んでいます(未来投資戦略2017全体版の本文64頁、未来投資戦略2017概要 参照。)。
その流れを受け、全銀協は今月18日、「手形・小切手機能の電子化に関する検討会」を開催しました(日刊工業新聞HP2017年12月21日「手形・小切手の電子化は進むか。全銀協が官民連携で検討」の記事参照)。
検討会は、「手形については電子記録債権(でんさい)へ、小切手についてはインターネットバンキングなどを使った振り込みへ」へと意見集約をしていくのでしょうか。
このように電子化が課題となっている手形小切手ですが、手形交換所における取扱い比率はどの程度あるのでしょうか。
私がこれまで仕事で目にしてきた大多数は約束手形で、小切手はたまにで、為替手形など ほとんどありませんでした。実際、手形交換所での手形、小切手の取扱いの比率も、私がこれまで見てきた割合に類しているでしょうか。
なかなか資料らしきものを見つけることができませんでしたが、全銀協が平成24年11月発行している「手形・小切手のはなし」の5頁に、5年前のデータで少し古いですが、東京手形交換所における平成23年3月中の交換証券種類別内訳が掲載されているのを見つけました。
それによると、東京手形交換所の平成23年3月中の交換証券枚数は231万枚で、
小切手が58.0% 1,339,800枚
手形が 23.7% 547,470枚
その他が 18.3% 422,730枚
交換高は25兆1019億円で、,
小切手が 16兆9437億8250万円
手形が8.3% 2兆0834億5770万円
その他が24.2% 6兆0746億5980万円
ということだそうです。
小切手、手形、その他について、交換証券1枚あたりの交換金額(額面?)を計算してみると、
小切手 126万4650円
手形 38万0561円
その他 143万7007円
ということになりました。
「その他」というのは、手形、小切手のほか、手形交換のために持ち出される、債権(地方債、社債)、利札、配当金領収書(株式、貸付信託)、金融期間相互の業務関係領収書、日本銀行関係支払証券(政府小切手、国際、同利札、同元利支払金領収書、国庫送金通知書)、郵便局関係証券(郵便為替証書など)のことになるようです(コトバンク「交換手形」の項参照)。
この「その他」が、東京手形交換所における交換証券枚数4分の1を占めていて、交換証券1枚当たりの金額が143万円もあり、手形の38万円より高いということになります。
また、小切手が交換証券枚数のトップで58%もあり、交換証券1枚当たりの金額も126万円であるのに比べ、手形は8% で、1枚あたりの金額も38万円もの少額であることになるなんて驚きです。
倒産、不渡りなど病理的な場面でしか、手形や小切手を見ることしかないので、大外れでした。