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法人設立時の定款の認証 [感想]

昨年(2017年)6月9日閣議決定の「日本投資戦略2017」(29頁)では、法人設立手続に関し、

法人設立時に利用者がオンライン・ワンストップで処理できるよう、民間クラウドサービスの活用も視野に、定款認証の面前確認や印鑑届出、外部連携API等の在り方を含め、あらゆる観点から官民一体で検討し本年度中に結論を得る。

とされ、それを受けて「法人設立手続オンライン・ワンストップ研究会」という名前の研究会が、昨年(2017年)9月から内閣官房日本経済再生総合事務局において開催されています(第1回検討資料1「法人設立手続オンライン・ワンストップ研究会の開催について」参照、開催日程等はこちら)。


その研究会では、商業登記事務を所管する法務省が規制官庁という位置付けとなっています。

法務省(民事局)は、印鑑届出の提出義務の廃止(第7回の資料3「『法人設立における印鑑届出の義務の廃止』の実現にむけて」)、オンラインで設立登記を24時間以内で処理するよう取組むとし、早々に譲歩をしたようですが、

定款認証に関しては 一歩も譲らず、公証人による定款認証など不要とする、内閣官房(日本経済再生総合事務局)と、は平行線の状態にあるようでした(第6回の日本経済再生総合事務局作成の資料3「定款認証の在り方を含めた合理化(見直し案について)」(下では同資料2頁、4頁、5頁を引用)。


定款認証の在り方を含めた合理化に係る見直し案.jpg



4頁.png



5頁.png




 どう贔屓目にみても、理は 日本経済再生総合事務局 の方にあるように思えました。

研究会で、どのようなやり取りをしているのかを知りたくて、議事要旨の公表を心待ちにしているのですが、平成29年11月28日開催の第4回研究会の議事録は、3ヶ月半を経過した今現在、まだ公表されていません。


公表されるのは「議事要旨」であって、議事録ではありません。要約が載るだけです。

よほど激しいやりとりがされていて、発言者が議事要旨における 発言内容の要約のニュアンスが発言内容とは違っていると しつこく言っていて、議事要旨(案)を肯んじないため、公表が遅れているのでしょう、きっと。

こういうことは、昨年のモリカケ問題の際にも問題となったことでした。議事要旨ではなく、録音反訳にして、誰が、何を言ったのか、逐語の議事録が残るよう改善すべきでしょう。

   


そんなことを思っていたところ、先月28日、

法務省は27日、有識者研究会のとりまとめを公表した。パブリックコメント(意見公募)を経て省令を改正し、年内に施行する。株式会社の設立に必要な公証人による定款認証の手続きで、会社の実質的支配者が反社会的勢力に属していないことを申告させる。

という内容の報道に接しました(日本経済新聞電子版2018年2月28日「暴力団の会社設立禁止  法務省方針 「名義貸し」見極め課題」)。

記事に出てくる研究会とは、今年1月から法務省で3回開催された「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会」のことで、5人の有識者が議論をとりまとめたということことのようである。

議事録はないようです。やっつけも甚だしいです。


公証人の定款認証は、持分会社(合同、合資、合同会社)を除いた、株式会社、一般社団法人、一般財団法人、税吏司法新、司法書士法人、行政書士法人、土地家屋調査士法人、社会保険労務士法人、弁護士法人、監査法人、特許業務方新、特定目的会社、相互会社、金融商品会員制法人、信用金庫、信用中央金庫、信用金庫連合会の設立登記の際に必要となります(日本公証人連合会「7-4 定款認証」)  。

その数ですが、平成28年の株式会社の設立登記の件数は 90,405件 です(総務省統計局e-Stat「登記統計2016年」)。

定款の認証の手数料は、公証人手数料令35条で5万円なので、株式会社の定款認証の分で 45億2千万円の手数料が公証人の売上になっていることになります(50,000円×90,405件 =4,520,250,000円)。

   

改正民法では、保証人の意思を公証人が意思確認することになっているため、国会(衆・参とも)の法務委員会では公証人制度に関心が集まっており、結構、議論がされているようです(国会会議録検索システムに「公証人」と入力して検索してみてください。)。公証役場ごとの収支を明らかにさせるようにさせよなどと議員に言われていたりします。

   

法務省のホームページでは「公証制度について」において、公証人について、

公証人は, 職務の執行につき, 嘱託人又は請求をする者より, 手数料、送達に要する料金, 登記手数料, 日当及び旅費を受けることとされており, その額は, 公証人手数料令の定めるところによっています。公証人は, これ以外の報酬は, 名目の如何を問わず, 受け取ってはならないとされています。このように, 公証人は 国から給与や補助金など一切の金銭的給付を受けず, 国が定めた手数料収入によって事務を運営しており, 弁護士, 司法書士,  税理士などと同様に独立の事業者であることから, 手数料制の公務員とも言われています。

と説明をしています。


定款認証を取り上げられると、今までどおりでは制度を運営することができなくなるので、秘策を繰り出したようにも思えます。とても興味深い話題ではないかと思います。


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