12月16日の小沢被告の第10回公判で、前田恒彦元特捜部検事が証人として証言していることは前回のブログで触れたところだが、産経ニュースの証言録を読んで前田検事に対して持っていたイメージが変わりました。
前田検事に対しては、 割り屋(つまり、被疑者や被告人を自白させるエキスパート)と言われ、多くの大阪地検の特捜部事件に関与しているということ自体から、無茶苦茶な取調べをしているんだろうなという予断を元々強く持っていました。
それに加えて、テレビ画面に写った前田検事の映像。
自信に満ち溢れていて、いけすかない、イヤな奴だな、という感想を持っていた。
しかし、産経ニュースの証言録を読んでみたところと、前田検事は『実は、正直な、いい奴なんだろうな』とそのイメージが180度転換しました。
前田検事は、今も特捜部も検察庁も愛しているかという質問に対し、
「 今でも愛しているからこそ、今、改革が進んでいますが、2点を改革すべきだと思います。一つは、手持ちの資料は全て開示する。検察に不利な証拠があったことが後に判明することは、今の“流行”みたいなものです。私の件をきっかけに大きく検察組織を変えるなら、検察だけの判断で『この証拠は出さない』というのはやめるべきです」
「もう一つは、強制だろうが、任意だろうが、捜査の様子は可視化すべきです。今回の件でも、大久保さんにはかなりデタラメを言われた。検事が改竄したか、しないかなんてのは不毛なやりとりなんです。だから、可視化を進めるべきです。供述調書も作らずに、録音録画する。そこまで検察が改革に踏み込めるかどうかです。検察、特捜は今でも愛しています」
「今は被疑者から自白を取った検事が悪いかのように思われている。確かに自白を取ることは被疑者にとってつらいことだけど、真実を引き出そうというのが検察。それが突然、公判で『言ってない』とか供述が覆っておかしくなって、(裁判で証人として)呼ばれる。それは心外です。それを避けるために可視化すべきです」
と証言しています。 私は、これだけでうれしく思いました。
前田検事は、フロッピーの証拠改ざんの病根が、「検察庁が手持ち証拠を開示すること」、「取調べ過程を全て可視化すること」によって除かれると理解をしていますが、私も前田検事と全く同じ考えです。
ただ、前田検事の場合は、正攻法で、被疑者や被告人から自白を取ったのに、脅したり、すかしたり自白を取ったと色眼鏡で見られるのは心外だという自負の現れとして取調べの可視化を進めるべきだと言っているわけで、多少私の考えとは違うのかなと思いました。
でも、大坪特捜部長の本(勾留百二十日」)では、「この人は『自白は証拠の女王』という時代錯誤的な考えから抜け出せないのだろう」という感想を持ったが、前田検事の証言からは、そんな鰯が腐ったような、感想は持ちませんでした。
「前田は正直な責任感が強い男なんだろう。だからこそ、行き過ぎたことをしちゃったんだろう。」という前田に対するポジティブな感想を、前田の証言を読めば、ご理解いただけるのではないかしらんと思います。