レッド・ステイツの真実 [読書]
西森マリー著『レッド・ステイツの真実―アメリカの知られざる実像に迫る 』は今年一番のお薦めの本だ。
●2010年4月21日~26日にかけてビュー・リサーチ・センターと『スミソニアン』誌がアメリア在住の1546人の18歳以上の人々を対象に行った世論調査
あなたは今後40年の間に(=2050年までに)イエス・キリストが再臨すると思いますか? 再臨すると思う …… 41% 再臨すると思わない …… 46% 無回答・分からない ……13% (「レッド・ステイツの真実」252頁)
アメリカ人の4割が、「キリストは40年以内に再臨する」と信じているなんてこと、あなたは知っていましたか?私は全く知りませんでした。
自分の過去を振り返ることになるが、憲法は司法試験の必須科目となっていたので、受験中は芦部や佐藤幸治の本を読んだりした。が、何かしっくりこない感じを持っていた。そんな中、『ブレザレン-アメリカ最高裁の男たち』(著者 ボブ・ウッドワード、スコット・アームストロング、翻訳者 中村 保男、出版社 TBSブリタニカ) とい本とめぐり逢った。
同書は、ウォーレンコートからバーガーコートに移行した1969年から75年までの間のアメリカ最高裁内での審理過程の内実を暴露した内容の本である。
同書を読むことで、(考えが正しいかは知らないが、)「憲法上の判断を含め、法的な判断は価値判断を前提としており、価値の多様性を認めるのであれば、論理必然的に一つの結論が導かれるようなことにはならない。さも、価値が対立する場面で、論理必然的に一つの結論が導かれるというというのは、(価値の多様性を承認するのであれば、)嘘である。」ということがよく理解できた気がした。
それ以降、憲法に対する苦手意識はなくなった。今、自分が弁護士であるのも『ブレザレン』を読むことが出来たからかもしれない。
ところで、『ブレザレン』では、1971年と72年の人口中絶訴訟についての記述があったが、25年ほど前は、なぜ、自由な国であるアメリカにおいて、人口中絶が大問題となるのか、その当時、よく理解することができなかった。裁判官が、保守=中絶反対、リベラル=中絶容認、という理解では、結論を導くことは出来なかったからであった。
何が賛成反対の結論を導く理由なんだろうという漠然とした疑問をずっと持っていた。
その疑問を持ったまま、4分の1世紀余り経過することとなったが、『レッド・ステイツの真実』が、そんな自分のその疑問を解いてくれた。
●2006年2月、ギャラップ社が1001人の18歳以上成人を対象に行った世論調査 聖書が法律の唯一の源となるべきだ … 9% 聖書は法律の源の一つであるべきだ … 46% 聖書は法律の源となるべきではない … 44% 無回答・分からない … 1%(「レッド・ステイツの真実」47頁)
アメリカは「保守派キリスト教徒が半分近くいる、キリスト教を国教としているかのような国なんだ」という理解の下、アメリカにおける中絶、銃、社会保障等を考えてみるとよく理解できる。
『レッド・ステイツの真実』は、『ブレザレン』から4分の1世紀の間抱えていた自分の疑問を解消してくれたが、西森マリーさんの著書では『オバマ失言で学ぶアメリカ 』もお薦めです。オバマ大統領が、実は、大した人物ではないのではないかと思えてしまう本です。
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