検査の的中率 [豆知識]
今日はクイズから。
エボラ出血熱のように、極めて致死性の高い感染症X が日本で猛威が上陸したとします。
その感染症X にはよい検査薬があり、その検査薬が、感染者を「陽性」だと判定する精度(「感度」と言います)は 99.1%。
「陰性」の人を正しく陰性だと判定する精度(「特異度」と言います)は 99.9%だとします。
あなたが検査を受けてみたら、結果は「陽性」でした。
あなたが、本当に感染症 X に感染してしまっている確率(「陽性的中率」と言います) は、99.1%でしょうか ?
答えは、
日本全体の感染症Xの感染率によって違うことになるので、
99.1% より低いことはよくありうる。
ということになります。
どういうことかと言いますと、
日本全体の感染率によって、検査薬の的中率が違うことになる
というわけです。
実際、仮に、
日本全体での感染率が
10%なら、陽性的中率(本当に感染症 X に感染してしまっている確率)は 99.1% 。
もし、
感染率が 2% なら、陽性的中率は 95.3%。
もっと低くて、
感染率が 0.4%なら、陽性的中率は 79.9%
ということになります。
さらに、もっと、もっと感染率が低く、
感染率が 0.1%なら、陽性的中率は 49.8%
という確率になります。
感染症Xの感染率が、1000人に1人の感染という程度の場合では、
検査薬で「陽性」と判定されても、
そのうち5割について、「陽性」という判定は間違いで、実は「陰性」という結果になるというわけです。
このように、全体の感染率が低いほど、
誤って「陽性」と判定されてしまう非感染者の割合が
増えることになります。
感染率ごとの陽性的中率は、ベイズの定理を使って算出することは可能です。
ですが、そんな難しい計算をしないでも、
パーセントを実数に置き換えて計算をすれば、感染率ごとの的中率を簡単に出すことができます。
どうやればいいかと言いますと、全体で検査をした人を、例えば、1,000,000 人だと仮定して、シコシコ計算をしていけばいいのです。
文系頭でも計算は十分可能です。
感染症Xの感染率が 2 %であった場合を考えてみます。
感染症Xの感染率が 2%ということは、100万人のうち、2万人が感染症Xに感染していることになります。
その2万人について、検査薬は99.1 % の精度で「陽性」と判定しますので、検査薬は 20,000人のうち 19,820人(=20,000人×99.1%)を正しく「陽性」と判定します。
感染症Xに感染していない残り 98万人について、検査薬は0.1%(=100%-特異度99.9%)の割合で、本当は「陰性」の人を「陽性」と誤って判定をしてしまいます。
その誤って判定をしてしまう人数は、 980人(=980,000人×0.1%) となります。
以上から、検査で「陽性」と判定された人の総数は 20,800人(=19,820人+980人) ということになりますが、そのうち、正しく「陽性」の人は、このうちの19,820人ということとなります。
したがって、陽性的中率は
95,288 %(=19,820人/(19,820人+980人)×100)
ということになります。
初等数学程度の計算で、ちゃんと計算できることを確認いただけたかと思います。
同じように計算をすれば、
感染率が 10 %なら陽性的中率は 99.1%、
感染率が 0.4 %なら陽性的中率は 79.9%、
感染率が 0.1 %なら陽性的中率は 49.8%
であることを簡単に確認できます。
ベイズの定理なんか知らなくても、シコシコやれば計算はできるということをお分かりいただけたと思います。
今日のまとめ
なるほど~。なんとなく二項分布関数とは逆の考え方に思えたのですが、数字のマジックですね。始めて知りました。
by ひろ (2012-11-23 12:20)