懲戒休職の際、生活が特別に拘束されるわけではない [困惑]
岐阜県揖斐郡池田町が、停職処分中にフェイスブッグに旅行の写真を投稿をした女性主事を懲戒免職処分にしたと発表したということです(朝日新聞DIGITAL2016年5月3日「停職中に旅行の写真をFBに投稿 女性主事を懲戒免職」中日新聞2016年5月3日「停職中SNS投稿 池田町、町職員を懲戒免職」) 。
朝日と中日の2つの新聞記事の内容を整理してみると、
昨年11月2日に停職6ヶ月の懲戒処分を受けた女性主事は、停職前に訪れた東京などの旅行の写真をフェイスプックに投稿していた。池田町は、同月下旬に、町民の指摘から、女性主事が旅行の写真をフェイスブックに投稿していることを知り、副町長から女性主事に対し「停職中は投稿しないように」と注意をした。女性主事は今年3月下旬にも、再び奈良の写真をファイスブックに投稿した。女性主事によるフェイスブックへの旅行写真の投稿は、地方自治法33条(「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」)が規定する「信用毀損行為の禁止」に該当するとして 池田町は女性主事に対し懲戒免職処分とした、
という経過であることがわかります。
つまり、
停職処分中であった女性主事が、副町長から「停職中は投稿しないように」と注意されていたにもかかわらず、その注意を守らずに、ファイスブックに再度、旅行の写真を投稿をしたこと
を池田町は問題にし、懲戒免職 としているわけです。
ですが、この池田町の懲戒処分ですが、停職処分前の旅行の写真をフェイスプックに投稿したことが非違行為であることを前提としたものですが、 非違行為になるといえるのでしょうか。
疑問です。
また、仮に、懲戒事由になるとしても、懲戒免職できるほどのものかについても疑問です。
職員の一定の義務違反に対する道義的責任を問うことにより、公務員関係における規律ないし秩序の維持を目的として、任命権者が科す職員の意に反する処分を、(公務員の)懲戒処分といいます。
そして、この懲戒処分のうち、職員の身分を失わせる処分のことを免職(処分)、職員を一定期間職務に従事させない処分のことを停職(処分)と言います(大阪市のホームページ「地方公務員における分限処分と懲戒処分」参照)。
「職員の懲戒の手続及び行為に関する条例」は、(懲戒処分である)停職の効果として、停職者が職務に従事しないことと、給与が支払われないことが規定されているだけです(同条例第5条第2項、第3項参照)。
懲戒による休職を 「自宅謹慎」と言ったりするため、休職中は日中は外出しては駄目だと誤解をしている人がいますが、
「蟄居(家に引きこもっていること)していなさい」というではありません。
懲戒処分としての停職の効果ですが、停職中は、「働けないし、給料も支払ってもらえない」との効果しかありません(とは言え、停職中は給料支払いがないわけですから、重大な制裁であることは間違いありません。)。
懲戒処分としての停職処分による 停職中だからということで、停職者が日常生活を送っていく上で、特別な制約が加えられることになるわけではありません。
私生活上の非違行為が懲戒事由となることがないわけではありませんが(労働政策研究・研修機構「個別労働関係紛争判例集5. 人事制度」「(54)【服務規律・懲戒制度等】私生活上の非違行為」)、
職員の方には 私生活の自由 があるわけなので、
(当然、写真の内容にも拠ることになりますが、)休職前に旅行先で撮影した写真を、副町長の注意を聞き入れず、フェイスブックに投稿したというだけでは、私生活上の非違行為になるとは、なかなか認めてもらえないのでないでしょうか。
副町長の女性主事への注意にせよ、私生活に過度に介入した業務命令権などは認められないため、副町長の注意は、違反に対する制裁など認められない、任意の「お願い」程度のもとしか認めて貰えないかもしれません。
またさらに、懲戒処分をなするには相当性が求められ、その処分が重きに失する場合には懲戒処分は無効となってしまいます(国家公務員に関し人事院が作成している「懲戒処分の指針について」参照)。
この点の、懲戒免職処分の有効性 についてもどうなのかという疑問があります。
人事院作成の「懲戒処分の指針について」を見てみると、
女性主事に対する、そもそもの停職6月の懲戒処分自体、相当性は どうなんだろうかという疑問を持ちました。
2016-05-06 00:09
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