愛知県美術館ギャラリーの利用者の手引き [感想]
あいちトリエンナーレの「表現の不自由展」については、憲法21条の表現の自由とか「検閲」など、大上段に構えた議論に加えて、有識者による「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」という道具立てに目を眩まされていたため、気付いていなかったことがありましたが、大村知事の公開質問状で 気付いたことがあります。
それは、「なぜ、問題となった作品が、美術館の展示基準に触れることなく いったんは 展示されてしまったのだろうか」ということについてです。
愛知県美術館企画業務課が作成した令和元年5月作成の「愛知県美術館ギャラリーの手引き」(以下「手引き」と略します。)4頁には、愛知県美術館の展示場を、利用期間を4月から翌年3月まで1年間借りた場合の、展示までの手続と大まかなスケジュールを図にして示しています。
それによると、利用者は、愛知県美術館企画業務課に、展示開始の7ヶ月前となる前年8月下旬までに利用許可申請書を提出し、同課が11月までに審査を終え、審査上問題がなければ利用許可書を利用者に送付するということを図示しています(下に図を引用します。)。
手引き3頁では、利用許可書の送付と利用許可しない場合について次のように定めています。(下線は筆者)
記
(2) 利用許可の内定と利用許可申請
ア 美術館長は、利用希望を適当と認める場合は、利用許可を内定し、仮申込者に対して、内定通知を送付します。なお、利用できる展示室・利用期間は、美術館企画業務課で調整しますので、希望どおりとならないこともあります。
イ 内定通知を受け取られた方は、指定期日までに、利用許可申請書を提出してください。
ウ 美術館長は、利用許可を適当と認める場合は、利用許可申請者に対し、利用許可書を送付します。
(3) 利用許可をしない場合
次のような場合には、利用を許可しません。
ア 申請者が、制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び民法第16条第1項の審査を受けた被補助人)である場合
イ 展示しようとする作品が、「展示することができる作品の種類、展示の方法、展示作品の制限」(2ページ参照)に触れる場合
ウ 反社会的勢力の利益となると認められるもの。
エ 特定の個人や集団に対する不当な差別的言動が行われるおそれがあるもの
また、手引き2頁では、展示作品の制限について次のように定めています。(下線は筆者)
記
(5) 展示作品の制限
次に掲げるような作品は、展示室に展示することができません。
ア~エ(略)
オ 不快音を発し、又は煙霧を発生する仕掛けのある作品
カ 悪臭を発し、又は腐敗のおそれのある素材を使用した作品
キ 人に危害を及ぼすおそれのある素材を使用した作品
ク 砂利、砂、土等を直接床面に置いたり、床面をき損、汚損するような素材を使用した作品
ケ 動植物及び危険物等生物被害のおそれのあるものは展示できません。なお、展示中であっても、有害生物(羽蟻等)が発生した場合は、作品を撤去していただく場合があります。
コ 鑑賞者に著しく不快感を与えるなど、公安、衛生法規に触れるおそれのある作品
サ その他美術館長が不適当と判断する作品
愛知県美術館企画業務課が、あいちトリエンナーレ実行委員会から提出された利用許可申請書を受付し、正しく審査をしていたのであれば、「表現の不自由展」で問題となった作品の一部は、手引き2頁の「(2)展示作品の制限」のコないしサに該当し、手引き3頁の「(3)許可をしない場合」のイ(ないしエ)に該当するとして、展示作品から除かないのであれば、愛知県美術館企画業務課はあいちトリエンナーレ実行委員会に対し愛知県美術館ギャラリーの利用許可書を出してなどいないのではないかということです。
流行りの、忖度により法の執行が歪められ、展示されるべきでなかった展示物が展示されることになってしまったので なければよいのですが。
2019-10-14 12:32
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