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暴力団排除条例ガイドブック [はてな?]

暴力団排除条例に関する実務書としては、大井哲也、黒川浩一、(株)エス・ピー・ネットワーク総合研究室編著『暴力団排除条例ガイドブック』が昨年12月に発刊されていますが、本の内容には重大な誤りがあります。


暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)1月26日のブログ(「反社勢力の見分け方」)で指摘させていただきましたが、平成231222日付で「暴力団排除等のための部外への情報提供について」(警察庁丙組企分発第42号、丙組暴発第19)という警察庁刑事局組織犯罪対策部長通達が出され、その通達は「都道府県警察は、暴力団情報の提供の必要性があり、適正な情報管理がなしうるという条件の下で、事業者が条例上の義務履行のために可能な範囲で積極的かつ適切な情報提供を行いなさい」と命じています(http://www.npa.go.jp/pdc/notification/sosikihanzai/kikaku/kibun20111222.pdf)

ですが、 「暴力団排除条例カイドブック」では、平成231222日付の「暴力団排除等のための部外への情報提供について」に全く触れていません。

そればかりか、「暴力団排除条例カイドブック」では、(現在存在しない)平成12年9月14日付「暴力団排除等のための部外への情報提供について」(警察庁暴力団対策部長通達)を引用し、警察からの暴力団情報の提供は「当該情報が、暴力団排除等の目的達成のために必要不可欠であり、かつ、警察からの情報提供によらなければ当該目的を達成することが困難な場合に行う」とされているので、警察からの情報提供を受けることは最終手段であると誤った内容が記述されています。

平成12年9月14日付通達は、平成23年12月22日付通達で廃止されています。

それだけでなく、平成23年の新しい通達により、警察の立ち位置は、事業者が条例上の義務を履行出来るようにするために、暴力団情報を積極的に提供するものへと大幅に変更されることとなっています。

「暴力団排除条例ガイドブック」を読んでいては、「警察による暴力団情報の提供は最後の手段なんだ」と誤った理解しか得られないことになります。

「暴力団排除条例ガイドブック」の著者の一人である黒川浩一氏は、執筆者紹介をみると、現在は東京都青少年・治安対策本部青少年課長ですが、前任は警察庁刑事局組犯罪対策部企画分析課課長補佐をされていた警察庁のキャリア官僚の方のようです。

黒川浩一氏は、東京都に出向中ではあったのでしょうが、平成23年12月22日付警察庁刑事局組織犯罪対策部長通達(「暴力団排除等のための部外への情報提供について」)が準備中であることは、「暴力団排除条例ガイドブック」の編集作業中、当然ご存じだったと思われます。でも何故か、「暴力団排除条例ガイドブック」ではこの平成23年通達について全く触れられていません。

「暴力団排除条例ガイドブック」の第1刷の印刷日は平成23年12月22日となっており、平成23年12月22日付「暴力団排除等のための部外への情報提供について」の発令日と同日です。何か意味があったのでしょうか?

いずれにせよ、平成23年12月22日通達の存在を素通りするだけの、何か理由があったんでしょうね。

平成23年12月22日付通達を無視する実務書が存在することによって、一番損害を被るのは、誤った内容を正しいと誤解することになる読者の方達ということになります。

著者、編者の方が、専門家としての責任を感じるのであれば、「暴力団排除条例ガイドブック」は、内容を改訂すべきだと強くおもいます。


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