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手形の利用は激減している(続き2)

前回の「手形の利用は激減している(続き)」は、裁判所の手形訴訟が年間9000件近くあった受付件数が、現在では550件程度にまで減少しているというブログの内容でした。

ブログでは、手形訴訟が激減していることをビジュアル的にもご理解いただけますよう、平成3年から22年までの手形訴訟の件数の推移を示すグラフをお付けしました。

手形訴訟(盗難手形)グラフ.jpg   ところで、グラフをよく観察されていた方はお気付きになられたかも知れませんが、平成9年の年間6500件の手形訴訟の受付件数が、翌10年には8600件、翌々年の11年には年間9500件へと増加しています。

しかし、平成11年の翌年の平成12年になると年間9500件から6500件へ、翌々年の13年には6500件から4400件へと、つるべ落としのように手形訴訟の受付件数が激減しています。

平成13年の4400件は、ピークだった平成11年の9500件の半分にも足りない件数です。

グラフでは、コブというか角というか、平成12年がトンガッていて、綺麗な右肩下がりの線は描かれていません。

なぜ、こんなグラフが描かれることとなったのでしょうか。

その理由は何だったとお考えでしょうか?

その答えですが、まず、平成10年、11年の増加は、事務所荒らしによる盗難手形がウラ社会に出回って、手形金の取り立てのための訴訟が急増したことが理由であったと考えられます。

次に、平成12年、13年の急落は、東京地裁民事第7部が平成11年6月頃から盗難手形の所持人を勝たせない判決をバンバン出すようになったのが一番大きな理由であったと考えられます。

どういうことかと言いますと、平成11年当時、手形訴訟での審理の大半は、盗難手形に関するものとなっていましたが、盗難手形の所持人の請求は負かすという東京地裁の考え方が、急速に全国の裁判所に波及し、どの裁判所で訴訟をしても盗難手形では訴訟で勝てないということになった結果、盗難手形による手形訴訟の提起が抑制されることとなったというわけです。

盗難手形の手形訴訟の占める割合が大きかったことから、盗難手形による手形訴訟の提起が抑制の効果が大変効いたというわけです。

この辺の事情について研究したい方は、東京地裁民事第7部の裁判官だった豊田建夫氏の「最近の東京地裁手形訴訟事件について-盗難手形事件を中心にして-」(金融法務事情1613号(平成13年6月15日)6-13頁)が、多くは参考になると考えませんが、少しだけ参考になるかもしれません。

判例タイムズ社は、判タ1015号(238頁以下)で、東京地裁民事第7部の平成11年6月30日判決と同年7月28日判決を、判タ1017号でも同部の平成11年5月28日判決を、立て続けに紹介しています。

「盗難手形」で判例検索しても、平成11年前後の判決例としては上記の判タの裁判例と判例時報の裁判例の1件くらいしか引っ掛かりません。意図的に判タに裁判例を流し、判例紹介をさせた匂いがプンプンしてきます。

「判タは東京地裁民事第7部の大本営発表に協力したんではないの?」と、つい疑ってしまいます、疑り深いもんで。

最後に、 下図は平成18年度警察白書から引用した「侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成8年~17年)」の該当部分となりますが、ここでは、平成「10年以降増加していた侵入窃盗の認知件数は、15年に減少し」と記されています。

事務所荒らしが減ったため、手形の流通が細り、その結果、手形訴訟が平成12年には減ったんではないかと思われている方もお見えになるかと思います。

が、上記データから侵入窃盗が減ったから、平成12年以降、手形訴訟の受付件数が減ったわけではないことが理解できるかと思います。

ブログ(侵入盗8-17).jpg


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