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黙秘権行使にためらいはいらない [検討]

  今日の中日新聞サンデー版「世界と日本 大図鑑シリーズ №1035」は、「後を絶たない 振り込め詐欺」の特集記事でした。「振り込め詐欺」は、先週日曜日(3月11日)の私のブログで、ちょうどネタにしてましたので、興味深く目を通させていただきました。

私が記事で関心を持ったのは、オレオレ詐欺では、現金自働預払機(ATM)の利用限度額設定などを背景にして、「振り込み型」から、犯人が現金やキャッシュカードを自宅まで取りにいく「手渡し型」が増加している傾向があるという記事についてでした。

記事では「手渡し型」が被害件数の5割、被害額の6割となっている図は載せられていましたが、数値がどれだけかは示されていません。

私は、この「手渡し型」の統計上の数値を調べようと思い、グーグル検索をしてみました。

そうしたところ、とある法律事務所のホームページがヒットしました。

そのホームページでは、その法律事務所が振り込め詐欺事件の際に採る弁護方針が示されていますが、そこで示されている弁護方針は、被疑者が黙秘している前提のものとなっていました。

そのため、被疑者に黙秘権行使を慫慂するものともなっています。

 しょうよう【慫慂】

[名](スル)そうするように誘って、しきりに勧めること。

「デジタル大辞泉」



被疑者には、憲法上、黙秘権の行使を保障されていることは、私も頭では当然、理解しています。

また実際、被疑者が(被疑事実ないし余罪の犯罪事実を)自白をしていない場合、自白をしている場合と比べて、被疑者が起訴を免れる可能性が高くなるであろうことも間違いのないところだと言えます。

なぜなら、被疑者の自白がなくては、他の証拠から犯罪事実の証明をすることが出来ない事案は間違いなくあり、その場合には、公判を維持できない(=無罪となる)ため、検事は起訴を断念します。

その場合、被疑者が自白してなかったからこそ起訴されなかったわけで、黙秘していたからこそ起訴を免れたと言えることになるからです。

そういうわけで、「弁護人である弁護士は、被疑者に(ひとまずは)黙秘させるべきである」、「被疑者に黙秘させることが、被疑者にとって一番有利となる」という考えは、それはそれで、「正しい」と言えます。

黙秘を慫慂する弁護人である弁護士の対応は、この考えに忠実なものと言えます。

その弁護士の行動は、法令にも、弁護士職務基本規程にも違反するものではありません。

でも、旧世代の弁護士である私は、意識が古いのか、そこまで、行動としては踏み込めません。割り切れません。

犯罪を犯し、その犯罪の嫌疑で身柄拘束されている被疑者に対し、

「あなたが犯罪を犯していたとしても、警察が持っている証拠が十分でない場合には、あなたは起訴されないことになる。」、

「そのため、あなたが置かれている状況がはっきりするまでは、とにかく 、黙秘しているのが、あなたにとって一番有利な選択だ。」、

とアドバイスことには、私は躊躇を覚えるだけでなく、出来ません。



誤った引用がされているとクレームを付けられるのは本意ではありませんので、ちょっと長いですが、該当箇所の引用をさせていただきます。 



振り込め詐欺事件の弁護プラン



振り込め詐欺の容疑をかけられてしまっても、弁護活動によっては前科がつきません。



警察から犯罪の容疑をかけられているにも関わらず、ご相談者様に前科をつけないためには、検察官から不起訴処分を獲得するのが第一の方法です。



前提として、振り込め詐欺事件の場合は、捜査によって有罪の証拠が固まると、たとえすべての被害者と示談が成立したとしても、起訴されてしまうのが通常です。



つまり、振り込め詐欺事件においては、「起訴猶予」による不起訴処分は考えがたく、「嫌疑なし」又は「嫌疑不十分」による不起訴処分を求めていかなくてはなりません。



そのためには、捜査機関に証拠を固められないことが大切です。



まず、実際に振り込め詐欺のリーダー格や実行部隊として事件に関与していた場合、有罪の証拠としては、ご相談者様自身の自白と関係者の供述、そしてこれらを裏付ける帳簿や通信履歴、防犯カメラの映像など各種の物証が重要になってきます。



そこで、ご相談者様としては、憲法上の権利である黙秘権を行使し、捜査機関に対し「自白」という極めて重要な証拠を与えない、という方策をとることが考えられます。



黙秘権は、憲法上規定された被疑者の重要な権利で、捜査官も当然に黙秘権の存在を前提として仕事をしているため、これを行使することにためらう必要はありません。



もっとも、関係者の供述や各種の物証が固まっているにも関わらず、いたずらに黙秘権を行使することは、事件を無駄に長期化し、ご相談者様自身の利益になりません。



そのため、証拠関係が複雑な振り込め詐欺事件においては、早い段階で弁護士と相談し、不起訴処分の獲得に向けた方針を固めていくことが大切です。



特に、詐欺行為に実際に関与していた人は、起訴され裁判になれば非常に高い確率で実刑(刑務所行き)になるため、取り調べの段階で適切な防御活動を行うことが、非常に大きな意味を持ちます。



振り込め詐欺事件で逮捕されても、弁護活動によっては早く留置場から出ることができます。



振り込み詐欺事件は、他の一般的な事件と異なり、多数の関係者が長期間犯行を繰り返すことが多いため、勾留の決定を阻止したり、起訴後に保釈を獲得することは極めて困難です。



また、一つの逮捕勾留が終わった後も、被害者ごとに再逮捕が繰り返されるのが実務の運用です。



もっとも、捜査機関は、事件を起訴しない限り、一つの事件で20日間しか被疑者を勾留できないのがルールです。



そこで、弁護士を通じて、逮捕された事件の不起訴処分の獲得と余罪に対する再逮捕の阻止に向けた活動を行い、留置場からの早期の釈放を求めることになります。



振り込め詐欺事件で起訴されても、弁護活動によっては刑務所に入らないで済みます。



裁判で検察官から懲役刑を求刑されているにも関わらず、刑務所に入らないためには、裁判官から執行猶予付きの判決を獲得する必要があります。



振り込め詐欺事件においては、詐欺行為に実際に関与していた人は、非常に高い確率で実刑(刑務所行き)になるのが実務の運用ですが、執行猶予付きの判決を獲得することが不可能なわけではありません。



実際、過去●●●で取り扱った振り込め詐欺事件の裁判では、検察官は懲役5年の実刑を求めましたが、裁判所は、弁護側が行った被害者への弁償や被告人の反省を「見える化」する活動を評価し、懲役3年執行猶予4年の執行猶予付き判決を言い渡しました。





結構、エグくないですか?


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