尾西毛織厚生年金基金 2 [調査]
宮原英臣著「年金倒産」(プレジデント社)では、指定基金のうち、財政回復計画が提出できないほど、財政状況が危機的状況にある「D基金」の状況について次のように述べられています(同書195~197頁)。
D基金であるが、平成21年度の年金バランスシートは図表6-1のように最低性任準備金(国の厚生年金の代行分)は48億円であるのに、年金純資産は31億円しかなく、差し引き▲17億円の代行割れとなっている。代行分の年金給付に必要な額を3割以上も割り込んでいる。
D基金の損益計算書は図表6-2のようになっている。基礎収支を見ると、掛金収入2億円に対して年金給付費は8億円となるので、毎年▲6億円の赤字が発生している。平成21年度は、幸い運用が好調で運用収益が4億円もあったので、全体の赤字は▲2億円で済んだ。
純資産は31億円しかないので、毎年の基礎収支赤字が▲6億円発生するということは、運用収益がゼロであったとすると、D基金の積立金はあと6年でゼロになる。
平成21年度の時点で、D基金の加入員数は約400人だったが、その一方で年金受給者数は約2000人に上っていた。現役加入員1名がOB 5人を支える構造になっていた。
D厚生年金基金は地方のある産業組合を母体としているが、産業としては長い歴史と伝統を有している。日本の高度成長期を支えた業種の一つでもあるが、近年は製造コストの安い海外製品に押されて国内では退潮傾向にある。事業所の多くは規模の縮小を余儀なくされて、廃業・閉鎖が相次ぎ、加入員数は年々減少してきた。
ここまで、財政が悪化すれば、いっそ基金を解散してしまえばいいのだが、そこで問題となるのが代行不足分の一括拠出である。D基金が解散するとなれば、▲17億円の代行不足分を加入する事業所がそれぞれ負担しなければならない。加入者一人当たりの平均にすると、約430万円の拠出金となる。これを一括で拠出しなければ厚年基金を解散できないのだ。
加入事業所の中には、加入者数が2人以下という零細事業所も数多くある。そのような零細事業所にとっては、巨額の一括拠出金負担は倒産や廃業の引き金になりかねない。廃業が相次ぎ加入員数の減少が加速すると、残った事業所の負担がますます増えてくる。このままでは年金制度を守るために事業所の倒産が相次ぎ、ひいては地域の産業を壊滅させる危険性する出ている。
このD基金が、どの厚生年金基金のことであるかは、朝日の記事と読み比べてみれば一目瞭然です。
D基金とは、尾西毛織厚生年金基金のことで、ほぼ間違いないでしょう。
下に、本文で引用されている図表6-1と図表6-2を、さらに引用させていただくことにします。
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