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元特捜部長も処分? [調査]

東京地検特捜部の田代政弘検事が虚偽の捜査報告書を作成した件について、昨日(23日)の産経ニュース(「田代検事の上司 元特捜部長も処分へ」)が、

法務・検察当局が当時の佐久間達哉特捜部長(55)=現法務総合研究所部長=に人事上の処分を科す方針を固めたことが22日、関係者の話で分かった。

訓告処分とするか、国家公務員法に基づく懲戒処分とするか最終調整を進めている。

法務・検察当局は既に田代検事を懲戒処分とすることを決めており、佐久間元部長以外の当時の東京地検幹部についても、訓告処分などとする方向で検討している。来週中にも処分を発表する方針。

 と報じています。

この記事を素直に読むと、法務・検察当局は、

  • 田代検事      → 国家公務員法による懲戒処分
  • 佐久間元特捜部長  →  国家公務員法による懲戒処分か、訓告処分
  • その他東京地検幹部 →  訓告処分など

という処分を来週中にも発表するということになりそうです。

ところで、佐久間元特捜部長に科すことが検討されている「訓告」処分が、どんな処分で、国家公務員法による懲戒処分とは、何がどう違っているのかが記事では全く説明されていません。

そこで調査です。

まず、「訓告」ですが、「訓告」とは公務員に対する不利益処分です。したがって、公務員に対する不利益処分という点では、「訓告」と国家公務員法による懲戒処分は同じです。

相違点ですが、国家公務員法による懲戒処分は、国家公務員法という法律を根拠としているのに対して、「訓告」は各府省庁の内規に基づき科せられるという点で、根拠が異なる点で両者は異なることになります。

今回の佐久間元特捜部長に対し検討されている「訓告」ですが、その根拠とされる法務省の内規は、「法務省職員の訓告等に関する訓令」(平成16年4月9日法務省人服訓第814号)がその内規となるようです。

また、その訓令の運用については「法務省職員の訓告等に関する訓令の運用について(依命通達)」(平成16年4月9日付け法務省人服第815号人事課長通達)によって運用されるということになるようです。

法務省は告示・通達等を一切公表していません。

そのため、「法務省職員の訓告等に関する訓令」も「法務省職員の訓告等に関する訓令の運用について(依命通達)」も本文の確認をしようにも、確認できません。そのため断定的な表現を取ることができません。

ですが、それを補うものとして、総務省が平成21年3月27日公表した「国の行政機関の法令等遵守態勢に関する調査結果」の中に、

各府省庁が職員である公務員の非違行為に対し処分等の手続をどう定めているかを整理した資料(「非違行為に対する即応態勢、処分等の手続の透明性の確保」)があります。

その資料から、「法務省職員の訓告等に関する訓令」に基づいて法務省職員に対し訓告等の処分がなされることとなっており、その運用は「法務省職員の訓告等に関する訓令の運用について(依命通達)」という通達に依っていることが、ほぼ確からしいことが確認できます。

「非違行為に対する即応態勢、処分等の手続の透明性の確保」中の「表3-⑴-⑫ 各府省における矯正措置に係る規程類の整備状況」の法務省の該当箇所(19頁(22頁中))を、画像化して、そのまま下図に引用いたしましたので、ご確認ください。

法務省職員の訓告等に関する訓令.jpg

 訓令における訓告等の実施基準について、同資料には、

第1条  法務省の一般職の職員が国家公務員法第82条第1項各号のいずれかに該当する場合において、服務の厳正を保持し、又は当該職員の職務の履行に関して改善向上を図るため必要があると認められるときは、当該職員の監督上の措置として、訓告、厳重注意又は注意を行うことができる。

2   訓告は、職員の責任が重いと認められる場合に、当該職員の責任を自覚させ、将来における服務の厳正又は職務遂行の適正を確保するため当該職員を指導する措置として行うものとする。

3   厳重注意および注意は、職員の責任が訓告を行うまでには至らないと認められる場合に、当該職員の責任を確認し、将来における服務の厳正又は職務遂行の適正を確保するため当該職員に注意を促す措置として行うものとする。

と記されています。

ところで、上記の実施基準に出てくる「国家公務員法82条1項各号」とは、免職、停職、減給、戒告のいずれかの懲戒処分の対象となる非違行為に該当する事由のことです。 

「訓戒」や「厳重注意」等も、懲戒処分と同じく非違行為を対象としているわけです。

したがって、法務省職員の懲戒処分に至らない非違行為に対して、指導・監督上の措置として、「訓告」や、「厳重注意」、「注意」等の措置がなされ、懲戒処分に至るような非違行為に対しては国家公務員法上の懲戒処分がなされているということになるります。

国家公務員法第81条1項

職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

一  この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第5条3項の規定に基づく訓令及び同条第4項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合

ニ  職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

法務・検察当局は、佐久間元特捜部長を、「訓告」とするか、「国家公務員法に基づく懲戒処分」とするかについて検討中だということですが、

ここに言われている「国家公務員法に基づく懲戒処分」とは、懲戒処分のうち一番軽い「戒告」ということとしか考えられません。

なぜなら、訓告の次に重い不利益処分は、戒告だからです。

なぜ、記事では、含みを持たせた「国家公務員法に基づく懲戒処分」という表現をしているのでしょうか。

気になります。 


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