ニセ建築士、なぜ今までバレなかったのか [検討]
今日18日のnikkei BPnet では、佐々木大輔氏の「 ニセ建築士、なぜバレたのか 」という記事が掲載されています(記事全文の閲覧のためには会員登録が必要となります。)。
佐々木氏の記事の要点は、
三重・大阪・新潟の3件のニセ建築士事件は、
国交省などによると、3人が偽造した一級建築士免許証の写しはA4判の免状型タイプ。何らかの方法で免許証のコピーを手に入れ、そこに記載された氏名や登録番号を書き換えて写しをつくり、建築士事務所などに提出していた。08年の改正建築士法の施行で導入された顔写真入りのカード型免許証明書ではない。
免許証の写しの偽造はいずれのケースも、「建築行政共用データベースシステム」で登録された情報と突き合わせた結果、判明した。
同システムは、姉歯秀次元一級建築士による一連の構造計算書偽造事件を受けて構築したシステム。
国庫補助事業として07年から3年かけて構築し、10年4月から本格稼働している。一般財団法人の建築行政情報センター(ICBA)が運営。
国交省や都道府県、特定行政庁、指定確認検査機関、各建築士会、各建築士事務所協会が導入している。サブシステムとして、全国の建築士名簿や建築士事務所登録などの情報を管理する「建築士・事務所登録閲覧システム」がある。
このシステムにある建築士データベースと建築士事務所データベースは別々に運用していたが、12年4月から連動するように変更した。
ということになります。大変簡潔に、事実関係の整理をしていただいております。
しかしながら、記事では重大な事実について全く指摘がされていないのではないかと思います。
というのは、
「建築行政共用データベースシステム」は、30億円以上の多額の国費が投入され構築されたデータベースシステムであるが、
その「建築行政共用データベースシステム」のサブシステムをなしている、建築士データベースと建築士事務所データベースの間では、
システムが本格稼働した平成22年4月から平成24年3月まで、
(共通のデータが利用されているにも係わらず、)データベース相互間で、データが連動していない状態で放置されていた
との指摘がまったくされていないからです。
「建築行政共用データベースシステム」は、総額で、34億37百万円(平成19年度10億5千万円、20年度12億47百万円、21年度11億4千万円の予算執行額の合計額)もの多額の税金が投入され、構築されたデータベースシステムです(「業番号256 レビューーシート (国土交通省)」参照。)。
このように多額な費用が掛けられたデータベースシステムでありながら、
驚いたことに、「建築行政共用データシステム」では、建築士データベースと建築士事務所データベースのデータが連動するシステムとして構築がされていませんでした。
どういうことかと言いますと、建築士事務所データベースでは、建築士データベースと内容が不整合な、建築士の氏名・登録番号であっても、入力できてしまう状態に、ずっとあったというわけです。
「建築行政共用データベースシステム」は平成22年4月から本格稼働することになりましたが、それから半年も立たない同年8月には、建築士データベースと建築士事務所データベースのデータを連動させるよう改善を求める要望が出されていました。
(その事実は、建築行政情報センター(ICBA)において、平成22年12月21日開催された平成22年度士法WG第1回会合の資料の、資料2-①(PDFファイルの12、13頁目)の「中部・四国ブロック建築士行政連絡会議幹事県代表愛媛県土木部道路年局建築住宅課長中川正弘作成の平成22年8月23日付「建築行政データベースシステムの改善について(要望)」、資料2-②(PDFファイルの14頁目)の平成22年8月27日付「中国・四国ブロック 建築士システムに関する要望・現状・改善策の整理票」から明らかだと言えます。)
そして、その事実については、平成22年度士法WG第1回会合に国土交通省住宅局建築指導課の職員も出席していたことから、国土交通省としても認識してたと言えます(議事録参照)。
建築行政情報センター(ICBA)では、建築士データベースと建築士事務所データベースのデータを連動させる方向での「建築士・事務所登録閲覧システム」の改修は、翌年1月28日開催された平成22年度士法WG第2回会合において既に議題されていましたが(「平成22年度士法WG第2回会合の資料」17頁参照)。
当然、「建築士・事務所登録閲覧システム」の改修が遅々として進んでいないことは、国土交通省も知っていました(議事録参照)。
結局、データベース相互間のデータを連動させる内容の「建築士・事務所・登録閲覧システム」の改修がデモンストレーション可能になったのは、それから更に1年以上経過した平成24年2月24日であったようです( 平成24年2月24日開催の「平成23年度士法WG第3回会合の資料」及び議事録参照)。
そして、なんとか平成24年4月に、建築士データベースと建築士事務所データベースを改修し、データベース間で建築士データを連動して利用できるようにしたわけです。
建築士事務所登録の際、建築士データベースによる登録判定が平成24年4月からなされることとなっていて、
氏名と登録番号が建築士データベースのデータと一致しない場合には、
不正な登録申請であることが露顕してしまうこと知らず、引っ掛かってしまったのが、大阪と新潟の2匹の鼠というわけです。
虚偽の1級建築士登録をした者が一番悪いことは言うまでもありません。
しかしながら、国土交通省は平成22年の時点で、
建築行政共用データベースシステムにおいて、建築士データベースと建築士事務所データベースの建築士データが連動してないため、
建築士事務所登録に際し、所属建築士の不正登録がなされている可能性があるであろうことは十分認識していたはずです。
にもかかわらず、国土交通省は頬っ被りをしていたわけです。
穴にパッチを当てたところで、鼠3匹を差し出し、事を済まそうとしているとしか思えません。
汚いですね。
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