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無条件降伏 [感想]

 ライブドアの粉飾決算によって、株価が急落し、それによって損害を被った株主がライブドアを訴えていた一連の訴訟は、先週18日に、ライブドアが請求を認諾したことによって、事実上、全て終了することとなったということのようです(YOMIURI ONLINEの18日の記事( 「ライブドア、株主49人に2億7千万円支払いへ」)参照)。

ライブドアが、先週18日に株主49人の請求を認諾した訴訟は、ライブドア株主被害弁護団が、株主3441人から委任を受けて訴訟を提起し、訴訟を遂行していた方の訴訟です。

ライブドアを被告として、株主が提起していた訴訟には、機関投資家(日本生命と信託銀行5行)が提起していた、ライブドア株主被害弁護団が提起していた訴訟とは別ルートの訴訟がありした。

その機関投資家を原告とした訴訟の方は今年3月13日に最高裁第3小法廷の判決によって、既に決着済となっています。

株主がライブドアを被告として訴えていた訴訟には、このように、ライブドア株主被害弁護団を原告とするものと、機関投資家を原告するものの2つが存在していましたが、

争点は同じでした。

どちらの訴訟も争点は、1株当たり損害額を争点としていました。

具体的には、

①   金融商品取引法(金商法)21条の2第2項によって推定される損害額が、ライブドアに有価証券報告書の虚偽記載の容疑があると検察官が報道記者にリークした 2006年1月18日を公表日として、1株当たり585円となるか、

②  金商法21条の2第5項の「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情」(減額事由)の存否とそれによる減額の割合

が争点となっていました。

機関投資家を原告とした訴訟における裁判所の判断は、

①の争点については、第1審の東京地裁、控訴審の東京高裁、上告審の最高裁とも、金商法によって推定される1株当たりの損害は 585円 と認定、

②の争点については、第1審の東京地裁、控訴審の東京高裁、上告審の最高裁とも減額事由の存在を認めた上で、

  • 第1審の東京地裁は、585円から3割を減じた約410円を、
  • 控訴審の東京高裁と最高裁は、585円から1割を減じた約527円を、 

1株当たりの損害と認定、

という内容のものでした。

第1審と控訴審の判決での違いは、1株当たりの損害は約410円なのか、約527円なのかの差だったことになります。

これに対して、ライブドア株主被害弁護団を原告とした訴訟の方では、

①の争点については、第1審の東京地裁、控訴審の東京高裁とも、金商法によって推定される1株当たりの損害は 585円 と認定、

②の争点については、第1審の東京地裁、控訴審の東京高裁裁とも減額事由の存在を認めましたが、減額の幅が第1審の東京地裁と、控訴審の東京高裁で、顕著に異なっていました。

具体的には、

  • 第1審の東京地裁は、585円から約3分の2を減じた 410円を、
  • 控訴審の東京高裁は、585円から5%を減じた  550円を、

損害額と認定、

という内容のものでした。

第1審と控訴審が認容した損害は、第1審が「1株当たり 200円」であるのに対して、控訴審が、その2倍以上の、「1株当たり550円」というもので、第1審と控訴審の損害額の認定には相当な開きがありました。

ライブドア株主被害弁護団は、②の争点について、1株当たり585円の損害について、減額事由はないとして上告していたことになりますが、

ライブドアが請求を認諾しました。

そのため、上告をしていた49人の株主は、1株当たり585円の損害として換算した賠償額をライブドアから支払ってもらえることになります。

上告をした甲斐があったというものです。

ライブドア株主被害弁護団の弁護団長の米川長平弁護士は記者会見で「我々の努力が無条件降伏につながった」と話されたということですが、

第1審の裁判官に恵まれない中で、本当にご苦労さまでしたと思います。

(備考)

インターネット検索をしていたところ、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の「CAPITAL MARKETS LEGAL UPDATE」2012年4月号において、福田直邦弁護士・芳川瑛子弁護士共著の「ライブドア最高裁判決」と題する文献を見つけました。同文献では、ライブドア株主被害弁護団を原告とした訴訟と機関投資家を原告とした訴訟の2つの訴訟における裁判所の判断の相違点等を平易に整理されており、参考にさせていただきました。


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