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借家人が行方不明の場合の対策としての一見解 [感想]

行政法の 阿部泰隆 神戸大名誉教授(現 弁護士)が、昨年10月に出された「行政書士の業務 その拡大と限界」(信山社)という本の文中において、

借家人が行方不明の場合の対策として、

借家人には家賃を払わずに居住する権利はないのであるから、借家人が家賃を二カ月滞納、借家人からの連絡もなしなら、家主が鍵を交換することくらいは当然の自衛手段である

と、(裁判所で採用される保障はしないとしつつ、) 私見を述べられていることを発見しました(同書27~30頁部分)。

   

そして、阿部先生は、

1  「賃借人が明渡し期限に明け渡さない場合において、次の入居予定者の入居予定日以降については、賃借人はこれによって生ずる損害を賠償しなければならない。

その額は少なくとも家賃の三ヶ月以上とみなし、賃貸人は三ヶ月分の家賃相当額を敷金から控除することができる。」(同書27~28頁) 、

2  「次の入居予定者の有無にかかわらず、賃借人は、賃貸人に対して、違約金として、期間満了後は明渡しまでの期間の家賃の倍額を支払わなければならない。」(同28頁)、

3  「賃借人が家賃を二ヶ月以上滞納し、かつ一ヶ月以上所在不明ないし連絡なき場合、賃貸人は明渡訴訟を提起することなく、本件賃貸借契約を解除して、本件賃貸物件の鍵を開け、家財道具を撤去し、保管に不相当の費用がかかる物を廃棄して、本件賃貸物件を自ら使用し、又はこれに第三者を入居させることができる。

ただし、貴重品は六カ月間保管しなければならない。連絡があった場合でも、三ヶ月以上滞納していれば同様とする。」(同28頁)

との内容の特約を、賃貸契約の際に、契約条項に挿入する必要があることを指摘されています。

さらに、特約の適法性について、

家主に大変な経済的な負担を及ぼし、裁判による権利救済は極めて困難で、高価であり、筆者の提案はぎりぎりの最低の私権の行使であるから適法だというべきである(同29頁)

と力説をされています。

   

ところで、これら3つの特約のうち、2番目の  

明渡し遅滞時の賃料等相当額の2倍賠償条項」あるいは「倍額賠償予定条項」と称されている、特約ついては、東京高裁が「無効ではない」と判断をしたところです。

しかし、残り2の特約についても、裁判所が、消費者契約法10条 にも、借地借家法30条 にも触れず、有効であるとまで、判定してくれるかは微妙ではないでしょうか。

私の私見としては、裁判所は「無効」と判断するのでは、と思っています。

   

この阿部先生の見解ですが、家主側の代理人に就任した場合には、

「文献的根拠」として使わさせていただくことができることになるわけですので、極めてありがたいことではないでしょうか。   

 

行政書士の業務: その拡大と限界

行政書士の業務: その拡大と限界

  • 作者: 阿部 泰隆
  • 出版社/メーカー: 信山社
  • 発売日: 2012/10/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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