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朝来市の許可抗告のてんまつ [速報]

朝来市が SMBC日興証券と三井住友銀を被告として訴えていたデリバティブ訴訟では、

大阪高裁が神戸地裁への事件の移送を認めたことに対して、

SMBC日興証券と三井住友銀行が許可抗告の申立てをしていました(今年1月30日のブログ「高裁での許可抗告申立事件の許可決定率」参照)。

今日手元に届いた、判例時報平成25年6月1日号(No.2181)には、この移送事件の原審と抗告審の決定が、評釈とともに掲載されていますが、

許可抗告〈不許可〉

と書かれていますので、

許可抗告は不許可でおしまいだったようです。

決定書を読んでみましたが、 

東京地裁への移送を認めた大阪地裁と、

(東京地裁への移送決定を取り消して、)神戸地裁への移送を認めた大阪高裁の、

判断を分けたのは、

民事訴訟法17条の要件の充足の有無でした。

どういうことかと言いますと、大阪地裁は要件を満たさないとの判断、大阪高裁は要件を満たすとの判断で、その判断の違いが、結論の違いを導くこととなっているわけです。

どちらも、その前提として、

法20条1項は、裁判所の専属的管轄に属する事件の移送を禁止しながらも、専属的な管轄が合意に基づく場合については、上記移送禁止の対象から除外して、法17条による移送を認めている(法20条1項括弧書)。その趣旨は、専属的な管轄合意をした場合でも、訴訟の著しい遅滞を避けるため又は当事者の衡平を図るための移送の必要性がある場合には、当該管轄裁判所への移送を認める点にある。

そして、本件のように、専属的な管轄合意がなされたが、当該合意管轄に係る裁判所又は法定管轄が認められる裁判所のいずれでもない裁判所に訴えが提起されたため、法 16条1項に基づいて事件を管轄裁判所に移送すべき場合においても、

法17条及び20条1項括弧書の前記趣旨は妥当するというべきである。

したがって、裁判所は、法16条1項に基づく移送を行う際、当事者間に専属的な合意管轄がある場合でも、法17条の要件を満たす限り、専属的な合意管轄が認められる裁判所以外の法定管轄が認められる裁判所へ事件を移送することができると解するのが相当である。

との見解を採用している点は、大阪地裁も大阪高裁も変わりはありません(なお、「法」とあるのは、民事訴訟法のことです。)。

民事訴訟法17条の遅滞を避けるための裁量移送について、コンメンタールでは、

管轄が競合すれば、原告はいずれかの管轄裁判所を選択して訴えを提起することになる。しかし、原告の選択した裁判所で審理をすると、訴訟の進行が著しく遅滞したり、当事者間の衡平に反する場合がある。

そこで、簡易裁判所か地方裁判所かを問わず、第1審裁判所は、当事者の利益の保護と公益の維持を図る目的をもって事件を他の管轄裁判所に移送できるとしたのが、本条の趣旨である(日本評論社基本法コンメンタール民事訴訟法Ⅰ65頁)、

との理解がなされています。     

また、民事訴訟法17条の条文の本文には、「訴訟がその管轄に属する場合において」と書かれています。

なので、私は、

民事訴訟法17条は、原告が管轄のある管轄裁判所に訴訟を提起した場合に初めて適用が問題となる規定だ

と思っていました。

ですが、この大阪地裁と大阪高裁の移送決定の理屈に従えば、

原告が管轄のない裁判所に訴訟を提起した場合であろうが、

裁量移送の要件を満たせば認められることになります。

条文の解釈を超えているのではないかと思いますが、許可抗告は不許可でした。

したがって、(納得しかねますが、) 大阪高裁の移送決定には、許可抗告の許可要件である

「法令の解釈に関する重要な事項を含」

んではいないということとなるようです。

(参考) 

民事訴訟法

(管轄違いの場合の取扱い)

第16条

1  裁判所は、訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。

(遅滞を避ける等のための移送)

第17条  第1審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

(専属管轄の場合の移送の制限)

第20条

1  前3条の規定は、訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が第11条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合には、適用しない。


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