無断録音と裁判所法71条2項 [検討]
大阪地裁で行われた 勾留理由開示の様子の録音が YouTubeで6ヶ月以上公開されているそうで、
そのことについて、
大阪地裁が YouTube に対して削除を要求した、
ということです(昨6日の共同通信記事「法廷を無断録音、ネットで公開」)。
YouTubeの投稿は、これのようです。
法廷の一般傍聴人等は裁判所の法廷警察権(裁判所法71条2項)に服すので、
法廷内での録音には裁判所の許可が必要です。
従わないと審判妨害罪(裁判所法73条)の刑罰、法廷等の秩序維持に関する法律 による制裁を受けることにもなりかねません。
共同通信の「法廷内での録音は裁判長の許可が必要で、裁判所法などにより原則禁止されている。」とは、それを説明をしているのでしょう。
ですが、今回のYouTubeの件は、
無断録音されていたことを裁判所が見逃し、その結果、録音(物)が法廷外に持ち出され、YouTube に公開された
との事例です。
法廷での審理中に、無断録音が見咎められていたということではありません。
裁判所法71条2項は、
「裁判長又は開廷をした一人の裁判官は、法廷における裁判所の職務の執行を妨げ、又は不当な行状をする者に対し、退廷を命じ、その他法廷における秩序を維持するのに必要な事項を命じ、又は処置を執ることができる。 」
との規定しています。
法廷警察権の行使は、法廷での審理中を予定しています。
したがって、傍聴者が、YouTube に、裁判所における審理の模様の録音を公開したことについて、この裁判所法71条2項違反に問うことはできないと理解されます。
(同様に、法廷等の秩序維持に関する法律 2条にも違反しないことになります。)
つまり、今回のYouTubekの件では、無断録音を公開した傍聴者に対し、法的責任は問いようがないということです。
近いうちに、今回のようなことは起こるだろうと思っていましたが、裁判所は今後、どう対応をしていくのでしょうか。
持ち物検査を励行するといっても限度があるので、
規制をかけようとするのであれば、裁判所法を改正するなどすることが必要となるのでしょうが、
情報公開の流れに逆行することになるので、
簡単には、法律の制定は困難ではないかと思います。
なお、今回の件、大阪地裁がYouTubeに削除要求をした、ということですが、
これは、プロバイダ責任制限法に基づいた 削除依頼 だと考えられますが、
「大阪地裁って、裁判体のことなの?」、
「なぜ、大阪地裁が削除要求する権限があるの?」
等々、
考えてみると 興味深い問題が多々ありそうです。
(参考)
第71条 (法廷の秩序維持)
1 法廷における秩序の維持は、裁判長又は開廷をした一人の裁判官がこれを行う。
2 裁判長又は開廷をした一人の裁判官は、法廷における裁判所の職務の執行を妨げ、又は不当な行状をする者に対し、退廷を命じ、その他法廷における秩序を維持するのに必要な事項を命じ、又は処置を執ることができる。
第73条 (審判妨害罪) 第71条又は前条の規定による命令に違反して裁判所又は裁判官の職務の執行を妨げた者は、これを1年以下の懲役若しくは禁錮又は千円以下の罰金に処する。
(制裁)
第2条
1 裁判所又は裁判官(以下「裁判所」という。)が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は、20日以下の監置若しくは3万円以下の過料に処し、又はこれを併科する。
2 監置は、監置場に留置する。
裁判所での録音について検索していたら田中先生のこの記事に辿り着きました。もしお時間がありましたら私の質問にお返事をいただけませんか?
私も出来れば裁判所で録音して公開したいと思っています。理由は裁判官による脅迫や当事者を騙すような行為を故意にやってきたことを明らかにしたいからです。先生の投稿記事と違うのは 場所が公開裁判ではなく家裁の審問であること、録音するのが傍聴人ではなく当事者であることです。何か罰則はあるでしょうか?
by 法子 (2015-10-15 11:37)