武士に「もの言う」百姓たち [感想]
渡辺尚志氏著「武士に『もの言う』百姓たち」を読み終えました。
同書は、信濃国の松代藩真田家領内での、村の名主人事と村役人の不正を争点として村人の間で争われた訴訟(吟味)について、 騒動が起きた文政7年(1824年)9月から判決(裁許)が下された文政10年(1827年)12月までを追い、過程ごとについて解説をしたものです。
すでにその当時、証拠調べや情報収集、当事者の尋問 が徹底してなされ、筆跡鑑定すらされていたそうです。
また、訴訟技術のマニュアル本があり、それで勉強して訴訟技術も向上させることができただけでなくて、身に付けた訴訟テクニックを利用してアドバイザーとして事件に介入する者がいたというです。
マニュアル本について言うと、越後国の水原代官所管内では、19世紀になると村役人たちの間に、訴訟の際に提出するさまざまな文書の文例を集めた「訴訟関係文書文例集」とでもいうべき書物が広まり、書き写されて流布していたそうです。それには 金銭貸借に関する訴訟、質入れした土地に関する訴訟などと、訴訟の種類ごとに、原告側の訴状と被告側の返答書の文例が示されていたということです。
多種多様な訴訟に対応できるひな型文例集が広まっていたということです。
園尾隆司著「民事訴訟・執行・破産の近現代史」の中に、
「江戸時代の裁判は、職権主義、判例法主義、難件決裁制、一審制、武断的裁判、刑罰を背景にした厳格な手続進行、民刑手続同一の原則という特徴を有しており、職権主義を支える与力・同心の裁判補助態勢も整っていて、職権主義的及び武断的という点において現代的ではないものの、制度としては完成度の高いものであったといえる。」(32頁)
というくだりがありますが、「完成度の高いものてあった」という箇所には疑問を持っていましたが、
それが適切な表現であることが理解できました。
でなければ 、旧民訴(明治23年)を定着させることなんてできなかったでしょうね。
2016-04-17 00:18
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