田原証券への証券検査 [検討]
証券取引等監視委員会が、アーツ証券の説明を鵜呑みにして、レセプト債を販売していた証券会社6社に対して行政処分を課すよう金融庁に勧告したということです(日本経済新聞2016年2月19日「レセプト債問題、証券6社の処分勧告 監視委」)。
各社に対する勧告内容は、証券取引等監視委員会のホームページで確認することが可能です(「報道発表(平成28年(2016年))-金融商品取引業等関係」参照)。
昨日(20日)の中日新聞朝刊に、地元の 田原証券(愛知県田原市) に関する記事が載っていました(「レセプト債、6年前にも問題点指摘 監視委、田原証券に」)。
記事は、
「田原証券が2010年(平成22年)に、証券取引等監視委員会から証券検査を受けた際に、『債権のスキーム(枠組み)や発行元の財務実態を把握しないまま取扱いを始めた」などと販売体制の改善を求められていた。
しかし、田原証券はその後も監視委の指摘を解消できないまま債権の販売を続けた。
田原証券には被害拡大の責任を問う声が強まりそうだ。」
というものです。
証券取引等監視委員会が、どこの証券会社に証券検査をしているかについては、同委員会がホームページ上で、年次公表という形で公表をしています。
2010年(平成22年)に田原証券に対する証券検査がなされていることは、平成22年度年次公表で確認できましたが、検査を担当したのは証券取引等監視委員会ではなく、東海財務局が担当だったようです。
金融商品取引法第194条の7第7項 を読むと、証券取引等監視委員会は財務局に権限を委任できるようですので、
記事では「証券取引等監視委員会から委任を受けた東海財務局(の金融証券検査官)が証券検査をした」と正確には表現すべきなのでしょうが、大意は変わらないだろうとの判断で、「証券取引等監視委員会が証券検査をした」
としているのでしょう(下図は、証券取引等監視委員会と財務局の関係を示すために、「平成26年度伴 年次公表」の付属資料138頁の概念図を引用したものとなります。)。
ところで、「平成26年度版 年次公表」の付属資料210頁に目を通してみたところ、
田原証券に対し、東海財務局が平成26年にも証券検査をしていることが確認できます。
検査は、
検査着手日 H26.8.28
臨店終了日 H26.9.12
検査結果通知 H26.12.10
というものでした。
中日新聞の記事では、田原証券が証券取引等監視委員会の指摘を解消できないままレセプト債の販売を続けたというものでしたが、
東海財務局が平成26年8月に田原証券を検査した際には、平成22年(2010年)の際に田原証券に対してしていた指摘はされなかったのでしょうか。
支払督促手続 と NHK [検討]
政府広報オンラインの 暮らしのお役立ち情報「簡易裁判所の『支払督促』手続をご存じですか?」の説明を読んでみると、
簡易に金銭の支払いの支払いを受けれる とてもよい制度であるかのような感想を強く持ちます。
ですが、どの程度の割合で回収できたかなど、データがまったく示されていません。
では、支払督促を申立てた債権者は、どの程度の支払ってもらっているのでしょう。
探しても見つけることができません。
いろいろ探していたところ、
NHKは、放送受信料を支払わない人から受信料を回収するために、平成18年11月から支払督促手続申立てをしていて、
受信料の窓口のページのお知らせにおいて、支払督促の申立件数や回収件数などを、「放送受信料にかかる民事手続きの状況について」とする文書により定期的に公表していることが分かりました。
下図は平成28年1月13日付の「放送受信料にかかる民事手続きの状況について」(全国分・12月末現在)の一部を引用したものです。
NHKは、
平成18年11月から同27年12月まで 支払督促を 7,773 件 申立てていて、
うち 5,861 件 は全額回収しているということになるようです。
件数ベースでの回収率は 75.4 % なので、結構、回収できているんですね。
回収までに要した時間が どの程度掛かっているのまで 明らかにしてもらえると もっと正確に分析できそうですが、あるだけよしと思わないといけないのかも知れません。
また、異議申立てがあった件数は 3,385 件 ということなので、 NHKのこの案件での 異議申立てがなされた割合は 43.5 % ということとなっています。
異議は せいぜい 3割程度かと思っていましたが、結構 高いのですね。
NHKが支払督促に関する貴重なデータを提供してくれていたため、支払督促がそれなりに使えそうな制度であることを窺い知ることができました。、
政府広報では、支払督促が使える制度であるエビデンス はまったく示されていないわけですが、
なぜ、「使える」と言えるのでしょう、不思議です。
労働基準監督年報(平成23~25年) [検討]
労働基準監督官の人数について話題をもう一つ。
厚生労働省のホームページから 平成23年から25年までの3年分の、「労働基準監督年報」(労働基準局作成)を見ることができます。
労働基準監督年報「第5章 機構・定数及び予算」では、「第2 職員の定員」として全国の労働基準監督官数が掲載されています。(どのような記載がされているのか、記載そのままを下に引用しました。)
平成23年 28頁
平成24年 33頁
平成25年 30頁
こちらでは 全国の労働基準監督官の数と推移は、
3,979人(H23) → 3,961人(H24) → 3,948人(H25)
になっています。
今月11日のブログ(「労働基準官の人数」)で、平成27年9月10日の参議院厚生労働委員会での質疑応答から
平成22年 3,315人
…
平成26年 3,207人
平成27年 3,219人
であることが分かると書いていますが、労働基準監督年報の数字と違っています。
国会での塩崎厚労大臣の応答などは、労働基準監督署所属の労働基準監督官の人数を回答していることになるのでしょうか。
もし、そうであれば 平成22年から平成26年までの 不明である … に、
平成23年 3,169人
平成24年 3,181人
平成25年 3,198人
がずっぽり 埋まることになりますが、それが正しいかは分かりません。
また、労働基準監督官の場合、本省で勤務する際には、ほとんどが労働基準監督官から事務官に転官して勤務し、その間は労働基準監督官ではないということになるそうですが、労働基準監督年報では、この転官を考慮せず、労働基準監督官試験に合格し労働基準監督官として採用された人の人数をそのまま計上しているとも考えられそうです。
よくわかりません。
国家公務員新規採用の抑制の方針 [検討]
今月12日のブログ(「これでは、まともな議論がされていないのではないか」)では、ここ20年余りの労働基準監督官の採用数の年次推移のグラフを載せました。
近年の労働基準監督官の採用者数ですと、平成22年(試験の年が平成22年ということで、採用はほとんどが平成23年4月であるということ。) は 54人 で、前年111人の半数にも満たないことになっています。、
平成23年は95名まで回復しますが、その翌年の平成24年は 再び 57人に 大幅減。
一転して平成25年は 236 人と前年比4倍となっています。
労働基準監督官の増員が求められているなか、平成22年と平成24年はその流れに逆行し、労働基準監督官の採用を大幅に絞り込んでいますが、そんな猫の目のような政策決定が誤りであることは 誰の目から見ても明きらかなことです。
民主党も、社民党も、政府の無策をガンガン攻撃してもよさそうなものなのですが、仕掛けていないようなので不思議に思っていました。
何か変だなあとモヤモヤが続いてましたが、おぼろげながらその理由が分かりました。
半減している平成22年、平成24年の労働基準監督官の採用は、民主党政権(平成21年(2009年)9月から平成24年(2012年)12月まで)が決めたことで、社民党も平成22年(2010年)5月まで民主党と連立していました。
「政府は無策」などと攻撃しようものなら、吐いた唾は自分にかかってしまいます。そんなわけで、触るに触れられないということではないかというわけのようです。
上表は、平成16年度から平成25年度までの労働基準監督官の採用者数をグラフにしたものです。
このグラフを見てみると、既に述べましたように、60人ほどであった平成18、9年の採用者が、平成20、21年には100人代まで回復した後、再び、
平成22年と24年には50人代に 半減した後、平成25年となって 236人に急増していることがわかます。
表の平成22年から平成24年の部分が民主党政権であった時期になります。
ちなみに、上表のように、平成22年は平成20年の51%の採用数、平成24年は平成20年の54%の採用数となっていますが、
それぞれ、平成22年5月21日閣議決定「平成23年度の国家公務員の新規採用抑制の方針」 、平成24年4月3日閣議決「平成25年度の国家公務員の新規採用抑制の方針」 に従った結果だったことになります。
なお、平成23年6月17日閣議決定「平成24年度の国家公務員の新規採用抑制の方針」 では平成20年の26%減を数値として挙げられていますが、6,336人の範囲内で抑制としていただけあったため、増員が必要だということで95人が採用されたということになるようです。
すっかり忘れていまっていまっていましたが、民主党は「国家公務員の総人件費2割削減」を選挙公約にしていました。
そのため労働基準監督官の採用も抑制したということになるようですが、あまりにお粗末だったとしか言いようがありません。
中国、サーキットプレーカー制度停止 [検討]
中国が、上海、新センの取引所のサーキットプレーカー制度を8日から停止することにしたということです(ロイター2016年1月8日「中国、サーキットプレーカー停止 株式相場安定を狙う」、NHK2016年1月8日「中国の株式市場 サーキットプレーカーを停止」)。
中国のサーキットプレーカー制度は、 5%で 15分停止、7%で終日売買停止となっていて、取引所内での全取引が停止となってしまいます。
上海総合指数 アジア株価 リアルタイムチャートから、 昨日(1月7日)の上海取引所における総合指数のリアルタイムチャートを下に引用させていただきましたが、
総合指数が 9時30分に5%下落で 15分の取引停止、9時45分に7%下落で終日停止となっていることが分かります。
不安を増幅させ、日本を含め全世界に波及させたわけですから、停止は当然のことでしょう。
ただ、決定の早さには見習うべきところがあります。
レンタル携帯電話の台数 [検討]
NTTドコモ と ソフトバンクが、振り込め詐欺などの特殊詐欺に利用されたレンタル携帯を貸し出しているレンタル携帯業者への回線提供を即時停止する運用を始めたそです(産経ニュース2015年12月16日「特殊詐欺悪用のレンタル携帯、業者回線即ストップ 警察要請時に ドコモ・ソフトバンク "犯罪インフラ" 官民で絶つ」)。
レンタル携帯電話事業者における本人確認手続の強化は、平成20年(2008年)成立した改正携帯電話不正防止法 で手当てしたはずですが、効果がないため ドコモとソフトバンクに要請をしたということなのでしょう。
ところでレンタル携帯電話事業者は、何社あって、何台の携帯電話を保有しているのでしょう。
調べてみましたがよく分かりません。
下の囲いは国家公安委員会・警察庁編「平成27年警察白書」91頁のコラム「携帯電話の本人確認の徹底に向けた取組」をそのまま引用したものです。(警察庁のHPでは「平成27年警察白書」は要約しか閲覧できず、その要約では上記コラムも表も割愛されています。平成27年版「警察白書」はキンドルで無料で閲覧できるようになっていますが、それは要約版ということのようで、やはりコラムも表も割愛されています。)
平成26年度は、「警察署長から要請を受け契約者確認を実施した結果について、携帯電話事業者から警察庁に報告のあった回線数」は総数16,244件で、
5,933件は契約者確認ができず、1,035件は解約されており、9,276件は契約者確認ができた
ということになるわけですが、ここに出てくる16,244件は レンタル携帯電話の総数では当然ありません。
携帯電話の契約総数は 約1億5200万契約あるわけですから(電気通信事業者協会のHP参照)、レンタルが1万契約(台)ぽっちなわけでないことは容易に想像できます。
では何台なのでしょうか。
平成20年6月10日開催された参議院総務委員会の議事録を読んでみると、
総務省総合通信基盤局長は、又市征治の①レンタル携帯の台数、②事業者の数の質問に対して、 ひとつも答えていません(議事録25頁2段目ないし3段目、)。
把握しているのであれば回答しているでしょうから、 そんなものないということなのでしょうか。
平成17年4月7日開催された参議院総務委員会の議事録を読んでみると、時の総務省通信基盤総務局長が
「〇 政府参考人(有冨寛一郎君)
平成十七年二月末現在の数字でございますが、我が国における携帯電話の普及台数、これは約八千六百万回線となっております。
このうち、プリペイド式の携帯電話の普及台数、回線数というふうに言い直しますが、約二百八十万回線でございまして、全携帯電話に占めるプリペイド式携帯電話割合は約三%というふうになっております。」(議事録11頁2行目)
と答えています。
プリペイド携帯電話での本人確認の強化 されたため、レンタル携帯電話に振り替わったと想像できますので、携帯電話の全回線数の3%程度はレンタイ携帯だろうとの 粗々の推測であれば できそうです。
より正確なものにするには、プリペイド携帯電話の台数も調べないといけないですね。
高齢者所在不明問題 [検討]
厚生省が(住民票コードで生存確認ができないため、)現況届により健在の確認をしている年金受給者17万人のうち、平成26年2月1日現在75歳以上で、介護保険料を支払っていない者7,207人について 存否確認をしたところ、233人が死亡、89人が行方不明であり、322人に対する年金の支払いを差し止めた
〇 現況申告書の回答があった者のうち、回答内容が「死亡」又は「消息を知らない」以外であり、かつ、後期高齢者医療を2年間(平成21年7月~23年6月までの間)継続して利用していない年金受給者(16万2,480人)に対して、市町村に健在等の情報提供を依頼するとともに日本年金機構の職員による訪問調査を実施した。
工事監理ガイドライン [検討]
10年前の耐震強度偽装事件 では、
国土交通省は適正な工事監理が行われるよう、平成21年(2009年)9月に「工事監理ガイドライン」を策定しました(国土交通省Hp「工事監理ガイドラインの策定について」、公益社団法人日本建築士会連合会HPの「建築技術等情報データベース」の「工事監理と監理は違うものです」項目、新・建築士制度普及協会発行「工事監理ガイドライン が策定されました」各参照)。
この「工事監理ガイドライン」には、建築物の基礎工事である地業工事も確認項目となっています(「工事ガイドライン(別紙)の別紙1「確認項目及び確認方法の例示一覧(非木造建築物 建築工事)」中の「4.地業工事」の項目を参照して下さい)。
工事監理者は、杭打ちの施工に際し、
・ 目視に係る立合確認
・ 計測に係る立合確認
・ 自主検査記録・施工記録・工事写真等に係る書類確認
をすることとされています(「4.2 施工 1)既設コンクリート杭地業及び鋼杭地業」の項目参照)。
「工事監理者である建築士が偽装を見破ることができなかった」のかどうかは、今回の杭打ちの不正では関心がまだ持たれていないようです。
「工事監理と監理は違うものです」に説明がかるように、工事監理は建築士の独占業務なわけですから、
早晩、建築士の杭工事に関する工事監理がどうであったのかに行き着くことでしょう。
耐震強度偽装事件から10年 [検討]
今からちょうど10年前の平成17年(2005年)11月に、姉歯建築士による構造計算書の偽造事件( 耐震強度偽装事件) が発覚し、大騒ぎになりました。
「建築士の不正」を「審査機関が見抜けなかった」との問題把握から、
翌平成18年には、再発防止のため、建築基準法と建築士法の改正をなされることになりました(建築基準法の改正法の概要については北海道庁HPの「平成18年建築基準法等改正概要」、建築士法の改正法の概要については群馬県HPの「【建築士法】平成20年11月28日施行の改正建築士法について」をそれぞれ参照して下さい。)。
今回の旭化成建材の杭打ち不正工事事件では、旭化成建材の建設業法違反だけが問題とされていますが、同社が建設業法上の行政処分を受ければ、それで終わりというわけではありません。
再発防止のための措置を講じなければならないことは、10年前と同じです。
国土交通省はどんな考えを持っているのでしょう。前打ち報道も、識者の意見も出てこないため、「工事監理の強化」を考えているのであろうぐらいのことしか思い付きませんが。
調整が難航しているのでしょうが、
方針なりが早く示されないと、延焼が広がってしまうのではないかと心配します。
ミステリーショッパー [検討]
覆面調査員と言えば、ミシュランの調査員が有名ですが、
そんな覆面調査員のことを ミステリーショッパー と呼ぶのだそうです。
このミステリーショッパーですが、技能が不要であれば誰でも調査に参加可能です。
そんなこともあってか、ネットで調査員を募集すればよいので、多くの会社が新規参入してきているようです。
クラウドソーシング系の「ランサーズ」、「クラウドワークス」の、ミステリーショッパーの調査依頼をみてみますと、調査依頼であると推察される内容が並んでいますが、
ミクシィのグループ会社である「ショッパーズアイ」の調査依頼の内容などを見てみますと、
調査と称して、サービスや物品を購入してもらい、購入後に代金を割戻ししているだけではないか
と思えてしまう内容の調査依頼がずらりと並びます。
(Googleで「ミステリーショッパー」をキーワードとして検索し、上位表示された会社の調査依頼の内容を見てみれば、何も「ショッパーズアイ」を目の敵にして言っているわけではないことが分かっていただけると思います。)
私は、ミステリーショパーだと称して、実は、ステルスマーケッティング がなされているのではないかと思いました。
そうであれば、そのうち、問題になるでしょう。