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名古屋市の本人通知制度 区役所篇 [調査]

昨夕、〇〇区役所の終業時間(午後5時15分)直前に出向いて、「名古屋市本人通知等制度事前登録申請書」を提出してきました。

登録される方の出足はどうかと、窓口対応をいただいた職員の方に聞いてみたところ、

「(制度開始の初日だが)  ぼちぼち、申請があります」ということでした。

本人通知制度について、名古屋市はまともに公報しているわけではないですが、制度について知っている人は知っているんですね。   

申請手続は、申請書を提出するだけかと思っていたところ、事務処理要領で、受付けをした職員の方から、登録申請者に対して、どのような場合に本人通知がなされることになるのかを説明することになっているということでした。

そのため、職員の方から本人通知がなされる場合の説明を受けることになりましたが、

その説明から、

(名古屋市の場合は、)住民票の写しを交付する全ての場合に本人への通知されるわけではない。

本籍が入っている住民票を交付する場合には、本人へ通知がなされることになるが、本籍が入っていない住民票を交付する場合には、本人通知はなされない。

ことを、恥ずかしながら教えてもらいました。

私はうっかり読みとばしていましたが、

「名古屋市本人通知等制度事前登録申請書」の裏面では、本人通知の対象となる「住民票の写し等」について、

住民票の写し等とは、住民票の写し及び住民票記載事項証明書(いずれも本籍又は国籍・地域の記載がされたものに限る。除票を含む。)、戸籍の附票(除附票を含む。)の写し、戸籍(除籍を含む。)全部(個人・一部)事項証明書、謄抄本、記載事項証明書をいいます

と定めています。

つまり、名古屋市は、住民票が交付される場合のうち、本籍が入っている住民票の写しが交付される場合に限って、本人通知をすることにしているわけです。

  

同じ愛知県内でも、昨年10月から本人通知制度を実施している豊川市の場合には、

住民票の写しの交付の場合には、名古屋市と同様に、本籍が入っている住民票の写しを交付する場合にだけ、本人通知がされることになっています。

その反対に、今年4月から本人通知制度を実施している名古屋市の西隣りの あま市の場合 ですと、

本籍が入っているか、いないかに関係なく、住民票の写しの交付の場合には一律、本人に通知されることになります(「あま市住民票の写し等の第三者交付に係る本人通知制度に関する要綱(案)」参照)。

同じ愛知県内でも、市町村ごとに、本人通知制度の具体的内容は、微妙に異なっているというわけです。 


簡裁判事の人事異動 [調査]

昨日、先月1日のブログで、「びっくりした」という題でネタにした、とんでもない訴訟指揮をした裁判官の、簡裁での期日がありました。

私は、何を言われても反論できるように理論武装をした上で、「今回も、いい加減なことを言うようなら、ただではおかないぞ」と腹を決めて簡裁に出向きました。

そうしたところ、裁判官が交代しているではありませんか。

新任の裁判官は、前任の裁判官と違って まともな方でした。

そのため、期日は、(私が、本来の進行と想定しているとおりに)進行して終わりました。

まともになってよかったという安堵感は当然あるわけですが、でも、何か、肩透かしをくらったような気分でした。

前任の裁判官がいなくなったことについて、その場にいる新任の裁判官、書記官、あるいは司法委員に聞きたい衝動にかられましたが、いやらしいので聞けないため我慢です。

急ぎ事務所に戻って、調べてみました。

裁判所のホームページでは、各地方裁判所ごとに、管内の簡易裁判所の担当裁判官名の一覧を掲載しています。

(例えば、名古屋地裁の管内の簡易裁判所ですと、「管内の簡易裁判所 担当裁判官一覧(平成24年6月20日現在)」に担当裁判官の氏名が掲載されています。)

確かに、裁判所の担当裁判官一覧を見ると、前任の簡裁の裁判官の名前が消え、新任の裁判官の名前が担当裁判官として記されています。 

前任の簡裁の裁判官が異動したことは間違いないようです。

また、「管内の簡易裁判所 担当裁判官一覧」は、平成24年6月20日現在となっているので、

前任の裁判官の異動は前回の期日の翌日である6月2日以降、6月19日までの間ということになります。

あとは、官報をチェックすればチェックメイトです。

官報での裁判所の人事異動は、インターネット版「官報」でチェックすることも可能ですが、

裁判官の異動を官報から拾ってくれているブログ(「【官報】法曹界人事:裁判官(判事)の人事異動情報」)がありますので、こちらのブログのチェックの方が楽です。

もちろん、有料の「官報情報検索サービス」を使って調査するのが、漏れがなく、一番正確性が高いと言えるわけですが、ほとんど使わないのに月額2,100円を払い続けるのもどうかと思います。そのため私は有料サービスを利用していません。

官報については、6月7日から6月20日分までの分をインターネット官報を目視で確認してみましたが、前任の裁判官の異動の記載はありませんでした。

【官報】法曹界人事:裁判官(判事)の人事異動情報」でも、人事異動の記述はありませんでした。

裁判官は退官されていないようですが、どうなされてしまったのでしょうか。


弁護士費用保険の補足 [調査]

弁護士費用保険の信頼できるデータとして、日本弁護士連合会の2010(平成22)年度会務報告に掲載されたものがあることが分かりました。

それは、平成18年(2006年)から平成22年(2010年)までの5年間について、「協定会社による弁護士保険商品の販売件数( 推計)」と「日弁連LACへの弁護士紹介依頼件数( 選任)」について、具体的な件数を明らかにしたものです。

下の表がそれをまる写したものとなります。

平成22年(2010年)の弁護士紹介件数は8,194件。平成21年(2009年)の弁護士紹介件数は5,148件で、協定会社の販売件数は約900万件。 …

弁護士保険の普及状況と紹介制度の利用状況.jpg

上の数値と、産経新聞の記事(「「弁護士費用保険」利用者わずか 0.05% 加入1430万件も…」)の「弁護士費用保険の契約件数と利用件数」のグラフの数値とを見比べてみて下さい。

産経のグラフが、この日弁連の「協定会社による弁護士保険商品の販売件数( 推計)と日弁連LACへの弁護士紹介依頼件数( 選任)」を用いて作表されたものであるが、ほぼ確からしいであろうと推測できます。

(平成15年(2005年)以前と、平成22年(2010年)の協定会社による弁護士保険商品の販売件数は確認できませので、断定は出来ませんが…。)

やはり、産経の記事では、日弁連が協定を結んでいな損保会社(例えば、東京海上日動など)が販売した弁護士費用保険については、その販売された弁護士費用保険の件数も、利用件数についても、全くフォローがされていない記事であるようです。

もし、日弁連が協定を結んでいない損保会社の弁護士費用保険の利用率を算定できたとして、

その利用率は、日弁連が協定を結んでいる損保会社での利用率0.05%よりも高いのでしょうか、あるいは低いのでしょうか。興味があるところです。

私の直感としては、「0.05%より低い」と思いますが、どうでしょう。

なお、この日弁連の会務報告(2010(平成22)年度会務報告の「第9 業務」「23. 日弁連リーガル・アクセス・センター」(265~266頁))は、一般公開されていませんので、リンクを貼っていませんので、あしからず。


元特捜部長も処分? [調査]

東京地検特捜部の田代政弘検事が虚偽の捜査報告書を作成した件について、昨日(23日)の産経ニュース(「田代検事の上司 元特捜部長も処分へ」)が、

法務・検察当局が当時の佐久間達哉特捜部長(55)=現法務総合研究所部長=に人事上の処分を科す方針を固めたことが22日、関係者の話で分かった。

訓告処分とするか、国家公務員法に基づく懲戒処分とするか最終調整を進めている。

法務・検察当局は既に田代検事を懲戒処分とすることを決めており、佐久間元部長以外の当時の東京地検幹部についても、訓告処分などとする方向で検討している。来週中にも処分を発表する方針。

 と報じています。

この記事を素直に読むと、法務・検察当局は、

  • 田代検事      → 国家公務員法による懲戒処分
  • 佐久間元特捜部長  →  国家公務員法による懲戒処分か、訓告処分
  • その他東京地検幹部 →  訓告処分など

という処分を来週中にも発表するということになりそうです。

ところで、佐久間元特捜部長に科すことが検討されている「訓告」処分が、どんな処分で、国家公務員法による懲戒処分とは、何がどう違っているのかが記事では全く説明されていません。

そこで調査です。

まず、「訓告」ですが、「訓告」とは公務員に対する不利益処分です。したがって、公務員に対する不利益処分という点では、「訓告」と国家公務員法による懲戒処分は同じです。

相違点ですが、国家公務員法による懲戒処分は、国家公務員法という法律を根拠としているのに対して、「訓告」は各府省庁の内規に基づき科せられるという点で、根拠が異なる点で両者は異なることになります。

今回の佐久間元特捜部長に対し検討されている「訓告」ですが、その根拠とされる法務省の内規は、「法務省職員の訓告等に関する訓令」(平成16年4月9日法務省人服訓第814号)がその内規となるようです。

また、その訓令の運用については「法務省職員の訓告等に関する訓令の運用について(依命通達)」(平成16年4月9日付け法務省人服第815号人事課長通達)によって運用されるということになるようです。

法務省は告示・通達等を一切公表していません。

そのため、「法務省職員の訓告等に関する訓令」も「法務省職員の訓告等に関する訓令の運用について(依命通達)」も本文の確認をしようにも、確認できません。そのため断定的な表現を取ることができません。

ですが、それを補うものとして、総務省が平成21年3月27日公表した「国の行政機関の法令等遵守態勢に関する調査結果」の中に、

各府省庁が職員である公務員の非違行為に対し処分等の手続をどう定めているかを整理した資料(「非違行為に対する即応態勢、処分等の手続の透明性の確保」)があります。

その資料から、「法務省職員の訓告等に関する訓令」に基づいて法務省職員に対し訓告等の処分がなされることとなっており、その運用は「法務省職員の訓告等に関する訓令の運用について(依命通達)」という通達に依っていることが、ほぼ確からしいことが確認できます。

「非違行為に対する即応態勢、処分等の手続の透明性の確保」中の「表3-⑴-⑫ 各府省における矯正措置に係る規程類の整備状況」の法務省の該当箇所(19頁(22頁中))を、画像化して、そのまま下図に引用いたしましたので、ご確認ください。

法務省職員の訓告等に関する訓令.jpg

 訓令における訓告等の実施基準について、同資料には、

第1条  法務省の一般職の職員が国家公務員法第82条第1項各号のいずれかに該当する場合において、服務の厳正を保持し、又は当該職員の職務の履行に関して改善向上を図るため必要があると認められるときは、当該職員の監督上の措置として、訓告、厳重注意又は注意を行うことができる。

2   訓告は、職員の責任が重いと認められる場合に、当該職員の責任を自覚させ、将来における服務の厳正又は職務遂行の適正を確保するため当該職員を指導する措置として行うものとする。

3   厳重注意および注意は、職員の責任が訓告を行うまでには至らないと認められる場合に、当該職員の責任を確認し、将来における服務の厳正又は職務遂行の適正を確保するため当該職員に注意を促す措置として行うものとする。

と記されています。

ところで、上記の実施基準に出てくる「国家公務員法82条1項各号」とは、免職、停職、減給、戒告のいずれかの懲戒処分の対象となる非違行為に該当する事由のことです。 

「訓戒」や「厳重注意」等も、懲戒処分と同じく非違行為を対象としているわけです。

したがって、法務省職員の懲戒処分に至らない非違行為に対して、指導・監督上の措置として、「訓告」や、「厳重注意」、「注意」等の措置がなされ、懲戒処分に至るような非違行為に対しては国家公務員法上の懲戒処分がなされているということになるります。

国家公務員法第81条1項

職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

一  この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第5条3項の規定に基づく訓令及び同条第4項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合

ニ  職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

法務・検察当局は、佐久間元特捜部長を、「訓告」とするか、「国家公務員法に基づく懲戒処分」とするかについて検討中だということですが、

ここに言われている「国家公務員法に基づく懲戒処分」とは、懲戒処分のうち一番軽い「戒告」ということとしか考えられません。

なぜなら、訓告の次に重い不利益処分は、戒告だからです。

なぜ、記事では、含みを持たせた「国家公務員法に基づく懲戒処分」という表現をしているのでしょうか。

気になります。 


朝日新聞厚生年金基金も代行返上 [調査]

朝日新聞社の平成24年(2012年)3月期連結決算は、純利益が前年同期の約3.2倍の163億5千万円と、2期連続の黒字となったということです(22日の朝日新聞デジタル「朝日新聞、7年ぶり増収 利益は3・2倍に」)。

東日本大震災の影響などで新聞発行部数は減ったものの、広告収入はほぼ前年同期並みを維持。

子会社も含めた売上高は、前年同期比2.1%増の4761億7900万円と7期ぶりの増収となった。

営業利益は92億8600万円と減益だったが、厚生年金基金の代行返上に伴う特別利益の計上で、純利益は大幅に増えた。

ということだそうです。 

朝日新聞は朝刊発行部数が800万部を割り込み、読者離れが止まらないと言われていましたが2年連続の黒字でよかったですね。

この朝日新聞社の平成24年3月期連結決算の内容は、子会社である朝日放送株式会社が昨日22日に出したニュースリリース(「親会社等の決算に関するお知らせ」)で公表されています。

 下図は、朝日放送の「親会社等の決算に関するお知らせ」に添付されている、朝日新聞社の平成24年3月決算短信の連結損益計算書となります(但し、連結損益計算書が2頁に跨がっていたため、見やすくするために1頁に加工してあります)。 

確かに、連結損益計算書を見ると、今年度は売上高が100億円増えて、4761億円となっていて、純利益も163億円と、昨年度の50億円の3.2倍に増えていることが確認できます。

また、今年度の経常利益は128億円と、昨年度の154億円から26億円ほど減少していますが、

厚生年金基金代行返上益354億4100万円が特別利益として計上された結果、純利益が昨年度より大幅に増額ということになっています。 

朝日新聞の記事は正確です。

朝日連結損益計算書.jpg

ところで、朝日新聞の厚生年金基金が存在することは、関東信越厚生局が公表している「厚生年金基金一覧(平成23年9月1日現在)」(番号233)で捕捉はしていましたが、9月2日以降に代行返上していることまでは全く気付きませんでした。

「日経新聞の経営改革ブログ」という日経OBの人が書いているブログの中で、「朝日新聞社が年金の予定利率を5.5%から3.5%に引き下げている」という記事があったので、

「このままでは厚生年金の代行分の年金が支払うことが出来ないという流れで、朝日新聞厚生年金基金もそのうち代行返上ということになるんだろうなぁ」とぼんやりと思っていましたが、意外に早かったのにはおどろきました。

朝日新聞は、自社の厚生年金基金のニュースという独占的なニュースソースを持っているわけですが、反発を畏れて記事にすることなく沈黙を決め込んでいるんでしょうね。


愛知県の地方税滞納整理機構(下) [調査]

下表は、総務省が作成している「地方税滞納額及び徴収率(平成21年度決算)」という表です。

この表では、「平成21年度分の地方税ごとの徴収率」と、「滞納繰越分と呼ばれる、過去の会計年度分の滞納地方税ごとの徴収率」が整理して作表されています。

表からは、滞納地方税の徴収率は、都道府県税では、法人税割の都道府県民税が18.2%と最低で、最高な不動産取得税でも徴収率が29.3%しかないこと。

次に、市町村税の徴収率では、法人税割の市町村税が14.1%と最低で、最高なのが所得割の市町村税で、それでも徴収率が21.3%に過ぎないことが分かります。 

滞納繰越分の滞納地方税の徴収率は、このように20%程度にしかなりません。

そんなことから、滞納繰越分の地方税について徴収率30%を実現することは、実際には、夢のまた夢のようです。

 平成21年度対納税額及び徴収率.jpg

そうしたところ、愛知県の地方税滞納整理機構(機構)の平成23年度の徴収率の実績は、下図でも示していますが、

  • 個人住民税                  56.9%
  • 固定資産税・都市計画税  63.2%
  • 国民健康保険税(料)      43.6%
  • その他                       47.5%
  • 平均                          53.3% 

というものでした(「愛知県地方税滞納整理機構の平成23年度徴収実績について」)。 

税目別徴収実績.jpg

この機構が叩き出した「初年度から、いきなり徴収率が5割超の徴収率」という成果は、他県の地方税滞納整理機構も達成していない、偉業です。

絶賛されるべき、すばらしい実績だと言えます。

しかし、この愛知県の地方税滞納整理機構の戦果について、地元の中日新聞を含め、新聞社はどこも報道しませんでした。

機構は、民主商工会からは、「滞納額を一括で払え」、「3回までしか待てない」、「誰かから借りてでも払え」、「さもなければ差し押さえ」というやり方で、脅迫じみた徴収をしていると非難されているようです(津島民主商工会のホームページの「『地方税滞納整理機構』に名を借りた不当な徴税を許さない!」参照)。

民商の主張が真実であるか、どうかなど全く分かりません。

しかし、実際、徴収率5割超の実績を叩き出すためには、滞納者に相当なプレッシャーを掛けなければ、到底実現などできることではありません。

職員が、滞納者に対して、「差押え」という武器を無用に振りかざして、行き過ぎた、民商が言うところの、「脅迫じみた徴収」を行っている可能性がないとは言えません。

新聞社の沈黙は、もしかしたら、それが理由であるのかもしれません。


愛知県の地方税滞納整理機構(上) [調査]

愛知県は、平成23年4月に、地方税滞納整理機構(「機構」)を県内6ブロックに設立し、県と市町村が連携協力して、地方税の滞納整理を行うようになっていますが、

この機構の平成23年度の実績は、県が定めていた目標を大幅に上回る内容のものでした。

愛知県の4月9日の発表によれば、

  • 機構が引き継いだ51億8700万円の滞納額のうち27億6500万円を徴収。
  • 徴収率は53.3%で、目標としていた徴収率30%を大幅に上回った

ということです(「愛知県地方税滞納整理機構の平成23年度徴収実績について」)。

発表の内容は、「愛知県地方税滞納整理機構が目標以上の徴収を実現した 」という内容ということになります。

が、そもそも、この愛知県が設立した地方税滞納整理機構について、愛知県に在住されている人でも、ほとんどの人は知らないのでないでしょうか。

そこで、最初に、この機構がどのな団体なのかを、掻い摘まんで説明をさせていただくことにします。

まず、この愛知県の機構は、一部事務組合などのように地方自治法に根拠を持っている団体ではありません。

任意団体となります。

では、その団体としての形態ですが、

  • 事務処理要領を定め、
  • 県及び市町村の各構成団体が職員を機構に派遣し、
  • 県及び市町村は、機構に派遣された(自分の所の職員以外の)職員を相互に併任する

という、「相互併任による任意組織」と呼ばれている形態を採っています。

この相互併任のイメージは、下図のとおりです(下図は、総務省の地方公共団体の事務の共同処理の改革に関する研究会報告書の11頁から引用したものです)。

相互併任による任意組織イメージ.jpg

ところで、この愛知県の機構は、他の自治体がパイロット的に初めていたものを、真似したものです。

そのためだったからかもしれませんが、愛知県が力を入れて広報をしたという形跡は見当たりません。

例えば、新聞検索で調べてみても、平成22年12月3日中日新聞の知多版の朝刊に「税金の高額滞納者対策チーム発足へ 県と5市5町」と題する、

県と知多半島5市5町は2010年4月から、税金の高額滞納者を対象にした収納対策チーム「知多地方税滞納整理機構」を発足させる。各市町の滞納額を減らすとともに、県職員が持つ徴収の技術を各市町職員が学ぼうと、県内6ブロックで一斉に設立。知多ブロックでは県から2~3人、各市町から1人ずつ職員を派遣し、県知多総合庁舎内に事務局を設置する。市・県民税、固定資産税などの地方税を30万円以上滞納している人に対し、チームで徴収に取り組む。不動産ほか、美術品や家電製品などの動産も積極的に差し押さえ、1市町当たり年間百件の整理を目指す。

という記事ぐらいしか、この愛知県の機構に関する記事は見当たりませんでした。

でも、この中日新聞の記事から、機構が、

  1. 地方税30万円以上滞納する者を対象
  2. 積極的に差押えを行う
  3. 県職員が持つ徴収技術を市町村職員に伝授する目的を持っている

という有益な情報を得ることが出来ました。

愛知県のホームページから得られる地方税滞納整理機構に関する情報としても、

同県が平成23年12月27日に発表した「行革大綱に係る重点改革プログラム」からのものしか見当たりませんでした。

しかも、その「行革大綱に係る重点改革プログラム」連番42では、

  • 県と県内43市町村が協働して徴収する地方税滞納整理機構を平成23年4月1日に県内6ブロックに設立し、それぞれの市町村において徴収が困難であった滞納案件等の引継ぎを受け、県の徴収ノウハウを活用しながら、滞納整理機構に派遣した県職員12名と滞納整理機構に派遣された市町村の職員44名が、ブロックごとに同じ執務室で積極的な滞納整理を行う。
  •  平成23年度は、県全体で概ね4,000件、金額にして約40億円の滞納事案について、市町村から引継ぎを受
    け、県内市町村の平均徴収率18.4%(平成21年度市町村税滞納繰越分)を大きく上回る30%以上の徴収率を
    目指す。 

という内容の、機構の概要と徴収目標をコンパクトに説明した記述くらいしかありません。

地方自治体では、ほとんどの場合、『計画通りの徴収実績を叩き出すこと』など、ありません。ほとんどの場合は目標は未達となっています。 

それは、愛知県も同じです。

そのためもあって、愛知県としては、積極的に、機構の設立や活動を喧伝するわけにもいかなかったのではないでしょうか。

力を入れて広報したのに、目標が未達な場合には、「何をやっているんだ」と非難され、弁解をしなければならないことになるかもしれないからです。 

それが記事の少ない理由だと私は思っています。

県市町村連携による滞納整理.jpg


名古屋市は『ひったくり』日本一 [調査]

我が家では毎朝、名古屋テレビ(テレ朝系列)の「ドデスカ!」という地元情報番組を見ながら、朝ご飯を食べています。

「ドデスカ!」の中で、「名古屋は ひったくり日本一 」というニュースが流れてましたが、「あれっ」と思いました。

大阪が30年以上、ひったくり日本一だという記憶があったからです。

そこで調査です。

大阪府警が出している「ひったくりの現状(平成23年)」では、ひったくりの件数が、大阪が1761件に対し、愛知は1500ぐらいの件数で、大阪が、ひったりく日本一 で、愛知は第5位のようです。

愛知が5位とは、変ですね。

さらに調査です。「愛知県」、「ひったくり」でグーグルのニュース検索すれば、ニュースの元ネタを見つけることが出来るかもしれないと思い、その検索条件で検索をしてみました。

そうしたところ、日テレで昨夜流れた、題が「ひったくりの対策強化 愛知県警(愛知県)」という、

被害者の9割以上が女性という犯罪・ひったくり。去年の被害の届け出件数をみると、全国の政令市のうち、最も多かったのが名古屋市。大阪市と比べると、200件以上も多く発生している。

こうした事態を受け、愛知県警は対策強化に乗り出した。

とのニュースが引っ掛かりました。

そのニュースの内容は、私がドデスカ! で聞いた内容と ほぼ同じ内容のものでした。

元ネタは、愛知県警が、テレビ各社に報道させるため、発表した広報ニュースだったようです。

ニュースは、正確には、「名古屋市が、政令指定都市の中では、ひったくりの件数が一番だった。大阪市と比べて、200件も多かった」という内容のもので、

愛知県と大阪府のひったくりの件数を対比した内容ではありませんでした。

で、次に、「名古屋市のひったくり件数は、ところで昨年は何件だったのか?」、「大阪市は何件だったのか?」という疑問が湧いてきました。

ニュースでは件数は報道されていません。

愛知県警察のホームページから、平成22年のひったくりの件数が 1457件 であったことは分かりましたが、平成23年のひったくりの件数が 何件であったのかは、ひったりくり件数の更新がされていないために分かりません(愛知県警察のホームページの「ひったくりの実態」)。 

「困ったな」と思い、あてずっぽうに、「政令指定都市」、「ひったくり」、「大阪市」 でグーグル検索をしてました。

そうしたところ、大阪市がホームページ上で、「大阪市の犯罪発生状況」がアップされていることが分かりました。

そこで、見つけた「大阪市の犯罪発生状況」のページをチェックしてみました。

そうしたところ、「平成23年中 主要政令指定都市別街頭犯罪発生件数(暫定値)」を、エクセル表にして、公表していることが分かりました。

下図がその「平成23年中 主要政令指定都市別街頭犯罪発生件数(暫定値)」です。

ひったくり件数政令指定都市.jpg

この図では、平成23年のひったくり件数が大阪市は800件。

これに対し、名古屋市は1042件で、大阪市より242件多くなっています。

これで、この「平成23年中 主要政令指定都市別街頭犯罪発生件数(暫定値)」が、名古屋市が大阪市よりひったくりが200件多いことの根拠となっていることがが分かりました。

この表からは、大阪市がひったくりの件数を、1007年から800件に、207件減らしていることが分かります。大阪市も頑張っていることが数字から分かります。

これに対し名古屋市は、犯罪率が大阪市より高いし、自動車盗や車上狙いは大阪市よりも多いんですね。

私などは、大阪は景気が悪く、名古屋より犯罪率は高いし、窃盗も多いと思っていましたが、そうではないのですね。

この大阪市がやっているように、都市毎の犯罪発生件数を公表し、警察に競わせるということはいいことではないかと思いました。 


尾西毛織厚生年金基金 3 [調査]

 朝日の先月30日の記事では、前述したとおり、尾西毛織厚生年金基金の平成22年度(平成22年4月1日~23年3月31日)の期末の財政状況を次のように報じています。

尾西毛織基金の積立金は25億円で、将来の年金給付のために必要な額の6割にとどまる。年金受給者1800人を現役世代300人が支えており、年間の取り崩し額は5億8千万円に及ぶ。

ところで、「年金倒産」で示されているD基金の財政状況は、平成21年度(平成22年4月1日~23年3月31日)年度末です。

「年金倒産」のD基金が、尾西毛織厚年基金のことであるならば、基金の翌年の財務状況が、朝日の記事での、尾西毛織厚年基金の財務状況ということになります。

D基金の平成21年度の財政状況と、朝日の記事による、尾張毛織厚年基金の平成22年度の財政状況は、連続していなければなりません。

さてどうでしょう。

下表「D年金と尾西毛織の対比」は、D基金の平成21年度と、朝日の記事での、尾西毛織厚年基金の積立金等の数値を整理して並べた表となります。

対比.jpgこの表を見る限り、D基金の次年度の財務状況が、朝日の記事による、尾西毛織厚年基金の平成22年度の財務状況とは連続していると言えそうです。

ただ、年金受給者の人数については、正直、はてな?です。

平成21年度の約2000人の受給者が、翌年度に、200人も減って、1800人となってしまうようなことは通常、考えられません。

もしや、朝日の記者が、厚生労働省の役人から、「尾西毛織の加入員は300人」、「加入員1人が6人の年金受給者を支えている」との内容の情報提供を受け、年金受給者を「300人×6人=1800人」と計算し、1800人として記事にしているのかもしれません。

年金受給者の点には、大きなはてな?が残りますが、D基金は、厚年基金の規模等からして、やはり、尾西毛織厚年基金のことで間違いないと言えます。

ところで、朝日の記事は、尾西厚年基金は、

「(年金積立金が)将来の年金給付のために必要な額の6割にとどまる」

と記事にしていましたが、

平成22年度末で、最低責任準備金(厚生年金の代行分)の不足額がいくらとなのか、その数字を示していません。

基金が、尾西厚年基金であるのであれば、平成22年度末の最低責任準備金の不足額は、簡単に推計できます。 

平成21年度の期末は「年金倒産」の図表6-1がありますので、貸方の年金積立金31億円を、25億円に換えて作表すれば出来上がりです。

下の「平成22年度の年金バランスシート(推定)」がその出来上がりです。

平成22年度バランスシート試算.jpgただ、ここでは、最低責任準備金(厚生年金の代行分)は多少変動していることになるわけですが、そこまでは把握不可能ですので、その点は捨象しています。

また、事業所の任意脱退がないことを前提としています。

この推計を前提にすると、最低責任準備金(厚生年金の代行)は ▲23億円 の不足。

積立金は、最低責任準備金の52%(=25億円÷48億円)しかないことになります。

ですが、朝日の記事では尾西毛織厚年基金の最低責任準備金の積立率は 60% となっています。

 もし仮に、この朝日の記事が正しいのであれば、

最低責任準備金の額は約42億円(25億円÷ 0.6 41億6667万円 ) ということになります。

最低責任準備金は48億円のはずなのに、41.6億円?

6億円以上も少ないことになりますが、どう考えたらいいんでしょうか ? 

尾西毛織債務縮小.jpg

一番可能性が高そうなのは、平成22年度中に、尾西厚年基金から任意脱退した事業所があり、その事業所が6億円の最低責任準備金の穴埋めをして基金から脱退し、加入員も約400人から300人へと 100人減少し、年金受給者も 約2000人から 1800人へと 200人減少ということなのではないかと思われます。

年金受給者が減少しない限り、最低責任準備金48億円が大幅に変動することは考えられません。事業所の任意脱退によって、基金の最低責任準備金の額が減った(縮んだ)と考えるのが正しそうです。

もし、そうであるならば、よく、危機的な時期に、揉めることなく、事業所は任意脱退できたものです。

※ 厚生年金基金からの任意脱退

厚年基金に加入している事業所が、基金の代議員会で3分の2の同意を得るとともに、事業所に属する加入員(=被保険者)の過半数の同意を得た上で、厚生年金の代行分と加算分の負担分を一括拠出して穴埋めすることによって、厚年基金から脱退する制度のこと。

(なお、鹿児島県建設業厚生年金基金のホームページの「任意脱退の手続」の説明が、分かりにくい中でも、一番分かりやすそうです。)


尾西毛織厚生年金基金 2 [調査]

宮原英臣著「年金倒産」(プレジデント社)では、指定基金のうち、財政回復計画が提出できないほど、財政状況が危機的状況にある「D基金」の状況について次のように述べられています(同書195~197頁)。

D基金であるが、平成21年度の年金バランスシートは図表6-1のように最低性任準備金(国の厚生年金の代行分)は48億円であるのに、年金純資産は31億円しかなく、差し引き▲17億円の代行割れとなっている。代行分の年金給付に必要な額を3割以上も割り込んでいる。

D基金の損益計算書は図表6-2のようになっている。基礎収支を見ると、掛金収入2億円に対して年金給付費は8億円となるので、毎年▲6億円の赤字が発生している。平成21年度は、幸い運用が好調で運用収益が4億円もあったので、全体の赤字は▲2億円で済んだ。

純資産は31億円しかないので、毎年の基礎収支赤字が▲6億円発生するということは、運用収益がゼロであったとすると、D基金の積立金はあと6年でゼロになる。

平成21年度の時点で、D基金の加入員数は約400人だったが、その一方で年金受給者数は約2000人に上っていた。現役加入員1名がOB 5人を支える構造になっていた。

D厚生年金基金は地方のある産業組合を母体としているが、産業としては長い歴史と伝統を有している。日本の高度成長期を支えた業種の一つでもあるが、近年は製造コストの安い海外製品に押されて国内では退潮傾向にある。事業所の多くは規模の縮小を余儀なくされて、廃業・閉鎖が相次ぎ、加入員数は年々減少してきた。

ここまで、財政が悪化すれば、いっそ基金を解散してしまえばいいのだが、そこで問題となるのが代行不足分の一括拠出である。D基金が解散するとなれば、▲17億円の代行不足分を加入する事業所がそれぞれ負担しなければならない。加入者一人当たりの平均にすると、約430万円の拠出金となる。これを一括で拠出しなければ厚年基金を解散できないのだ。

加入事業所の中には、加入者数が2人以下という零細事業所も数多くある。そのような零細事業所にとっては、巨額の一括拠出金負担は倒産や廃業の引き金になりかねない。廃業が相次ぎ加入員数の減少が加速すると、残った事業所の負担がますます増えてくる。このままでは年金制度を守るために事業所の倒産が相次ぎ、ひいては地域の産業を壊滅させる危険性する出ている。

 

このD基金が、どの厚生年金基金のことであるかは、朝日の記事と読み比べてみれば一目瞭然です。

基金とは、尾西毛織厚生年金基金のことで、ほぼ間違いないでしょう。 

下に、本文で引用されている図表6-1と図表6-2を、さらに引用させていただくことにします。

D社.jpg

年金倒産 ― 企業を脅かす「もう一つの年金問題」

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  • 作者: 宮原 英臣
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2011/10/28
  • メディア: 単行本