6000万円を詐取した大阪の弁護士 [困惑]
大阪の弁護士が6000万円を詐取したとして昨日、逮捕されました(毎日jpの記事「詐欺容疑:6000万円詐取の弁護士を逮捕」参照)。
先月は福岡の弁護士の4000万円を使い込み、今度は大阪の弁護士が6000万円の詐取です。
弁護士に対する風当たりが強くなると思って、記事を読み始めました。
逮捕された弁護士の名前は「田中英一」氏。
どこかで見聞きした名前のような気がしたため、記憶を手繰ってみました。
少し、考えて分かりました。
逮捕された弁護士は、
(多分、知っている人は極めて少ないのではないかと思いますが、)
医業未収金やクレジット債権などの、比較的少額な小口大量債権の回収を専門とされている
弁護士法人開明法律事務所の田中英一弁護士
です。
この田中英一弁護士が代表者を務めている開明法律事務所は、
私が知っている限りでも、10以上の病院での医業未収金の回収業務の受託されているはずです。
ちなみに、入札に関した情報を提供している「入札速報サービス」というホームページで、
開明法律事務所が競争入札に参加し、落札をしている(役務に関した)落札情報を見ることができます。
この入札速報サービスから、開明法律事務所は今年の4月以降だけでも、
大阪市から市営住宅の使用料の収納事務と市営住宅退去者の滞納家賃収納事務など4件の
新規受託先を獲得していることが分かります。
この開明法律事務所の報酬体系は、完全成功報酬制です。
開明法律事務所の完全成功報酬の内容は公表されていませんので、
推測となりますが、回収額の30~35%が報酬額ではないかと推測されます。
完全成功報酬制という報酬体系であると言うことは、債権回収ができなければ弁護士事務所の方が干上がってしまうことになります。
そのため、開明法律事務所の債権回収の回収率が何%程度なのか、大変、強い関心を持ちますが、
この回収率について、
田中英一弁護士は「月刊新医療」という雑誌の2008年3月号の「自治体病院等に対する医療未収金回収業務の企画提案と実績」という記事の中で、
田中英一弁護士が用いているデータベースを駆使した債権回収システムでの実績が、
(受託債権の平均金額は約11万円であり、) 回収率は受託債権の属性により異なるが、その平均値は、概ね民間病院50 %、自治体病院 30 % となっている。
と述べられています。
この回収率が本当であれば、「すごい」の一言です。
確かに、開明事務所では、回収業務を受託した後、
督促書の送付を月1回の頻度で送付しているようですし、
しかも、督促書の文面を定期的に変更し、督促書の送付を行っているようでもあります。
回収のために、きめ細やかな配慮がされていると思います。
下の「支払催告」と「最終通知」は、いずれも、開明法律事務所が大手携帯電話会社の代理人として、
携帯電話料金を滞納している者に郵送した督促書となります。
「支払催告」を無視して連絡してこない者に送り付けられるのが、「最終通知」ということになります。
「支払催告」と「最終通知」の二つの文面を見比べてみれば分かることですが、
まず、文書の体裁が変えてあります。
遅延損害金も期限途過日数ごとにキッチリ計算がされています。
さらに、債務者ごとにバーコードと管理番号を付して管理がなされていることが分かります。
なるほど、開明法律事務所の回収システムは先進性を備えていることは間違いないところです。
回収率が、他の回収業者よりもアップしていることは間違いないところでしょう。
(それがどの程度のアップなのかは分かりませんが。)
ですが、毎日の記事は、
田中容疑者は数億円の借金があるという
ということです。
こういう記事を読むと、「本当は儲かっていなくて、赤字だったのではないか」という疑念が湧いてきます。
もしかすると、田中英一弁護士が構築したとする、
データベースを利用した先進の債権回収システムを用いて、小口大量債権の回収業務を行い、回収額の30~35%の完全成功報酬を弁護士報酬として得るというビジネスモデル
には、無理があったではないかとの感想を持ちます。
いずれ分かることです。
今後の報道に注目したいと思います。