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覚せい剤の再犯率、40代は 72% ?? [困惑]

清原和博氏(48)の覚せい剤取締法違反被告事件の東京地裁の先月31日の判決の内容は、懲役2年6月、執行猶予4年の判決でしたが、

産経ニュースでは清原氏の再犯を危ぶみ、その論拠として、

警察庁の統計によると、覚醒剤の再犯率は平成19年(2007年)以降、9年連続で増加しており、平成27年(2015年)は 64.8 %。 年齢が上がるほど再犯率は高まり、20代未満は 16 %、20代は 36 %、30代は 58 %だが、40代で 72 %、50代以上で 83% に上がっている。

と、警察庁統計が年齢が高まるほど覚せい剤事犯の再犯率は高くなっていることを挙げています(産経ニュース2016年6月1日「再犯率高い薬物、覚醒剤…  『自分の寿命が来るまで戦いたい』誓った清原被告」 )。

 

ところで、産経ニュースが記事で引用する、警察庁の統計とは、警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課が平成28年3月5日発表した「平成27年における薬物・銃器情勢 確定値」中の、5頁の「表1-5 覚醒剤事犯の再犯者率」のことであろうと思われます。

と言うのは、「5-1 覚醒剤事犯の再犯者率」の表を下にそのまま引用しておきましたが、同表の示す 平成27年における再犯者率、年齢別再犯者率は、

再犯者率 (%)          64.8 %

  年齢別

    20歳未満           16.0 %

    20~29歳          36.0 %

    30~39歳          57.9 %

    40~49歳          72.2 %

    50歳以上           83.1 %  

というもので、産経ニュースの「覚醒剤の再犯率」と ほぼ同一だからです。

 

覚せい剤再犯者率.png 

 

しかし、警察庁薬物銃器対策課の「表1-5  覚醒剤事犯の再犯者率」は、

「再犯者率」についてのもので、「再犯率」についてのものではありません。 記事は「再犯者率」を「再犯率」に すり替え、読者の理解を誤らせるものとなっています。


 

「再犯者率」と「再犯率」の違いを説明しないといけないようなことは思ってもいませんでしたが、荻原チキ、浜井浩著「新・犯罪論」で 浜井教授は、両者の違いについて、

「‥‥ 再犯者率 と 再犯率 と勘違いして、 再犯者率の上昇を さも 再犯率が悪化しているかのように報道してしまうのです。 再犯者率と再犯率は まったくの別物です。

再犯者率は 検挙人員に占める再犯者、つまり検挙歴のある人の割合にすぎません。

再犯者自体は減っていても 再犯者率は上昇します。‥‥」

との説明をされています(同書48頁)。

 

例えて言えば「再犯者率」は、覚せい剤で検挙された40歳代の人を 檻に100人集めたとして、再犯者率72%だというのは、そのうちの72人が検挙歴がある人だ、ということ。

「再犯率」の方は、

再犯率72%と言うのは、100人中、72人が再び、覚せい剤で検挙される

とことを言い表しています。

 

「再犯者率」と「再犯率」は、まったくの別物です。 

 警察庁薬物銃器対策課の資料では、覚せい剤の 再犯率については 何も触れていないのに、

「再犯率」と謝った表現をするのは いかなることを意図しているのでしょうか。それとも単なる誤解なのでしょうか。

 


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