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成熟した労使関係か? [豆知識]

久しぶりに、労働争議が年間に何件ほどなのか 確認してみました。 

確認するのは 3年ぶりですが(2013年5月26日のブログ「ストライキは年間二桁しかないんだ」参照)、厚労省が発表している「平成26年労働争議統計の概要」で確認してみたところ、

争議行為を伴う争議件数は 平成26年(2014年)は80件だったということで、前回調査した平成23年(2011年)の57件よりは増えています。

その間の年次推移を見てみると、

57(H23) → 79(H24) → 71(H25) → 80(H26) 

という結果で、低空飛行という傾向は変わりませんし、増加と言っても 微増 に過ぎないことになります。

 

ところで、労働争議統計では昭和32年(1957年)以降の統計しか掲載していません。労組法が制定された昭和20年(1945年)から昭和31年までがどうだったのか、気になりませんか。  

 

総務省統計局のホームページの「19-32  労働組合数及び組合員数(エクセル:52KB) 」に、「19-33 行為形態別労働争議件数及び参加人員(昭和20年~平成16年)」が掲載されていることを見つけました。

これで 昭和20年から昭和31年までの分の 争議行為の件数を補うことができます。 

 

下表が 「争議行為を伴う争議」の件数の、昭和20年(1945年)から平成26年(2014年)までの年次推移をグラフ化したものとなります。 

私は 争議行為の件数は戦後直後が一番多かったのだろうと思っていましたが、グラフは、そうではなくて、昭和40年台とかの方が多かったことを示しています。

意外な結果でした。 

 

 争議行為件数(1945~2014).jpg


普通預金や定期預金からの利息の徴収 [豆知識]

マイナス金利についての知識を整理する上で役に立ちそうだと思い、清水功哉著「[緊急解説]マイナス金利」(日経プレミアシリーズ)を読みました。
   
新書で172頁と手頃でしたが、20分の立ち読みですませばよかったと反省してしまうような本でした。
 
 
とは言うものの、全く得ることがなかったわけではありませんでした。それは、
    
「日銀に事務局を委託している金融法委員会(金融関係の法務、実務に通じた学者や弁護士がメンバー)という組織も16年2月19日、普通預金や定期預金の金利としてマイナスの値を定めて利息をとることは「できないと考えられる」との見解をまとめた。
    
ただし、口座手数料をとる形で実質的にマイナス金利を実現する手はある。金融法委員会も「預金口座を通じたサービスの対価を預金約款に従って徴収する余地はある」とした。」
   
との箇所(同書106頁)のことで、 私は「金融法委員会」というのがあり、その金融委員会というところがそのようなことを言っていることなど まったく知らなかったからです。
   
書籍代961円には見合ってはいませんが、新たな知見を得ることができました。
     
      

「金融法委員会」をGoogle検索してみると、ちゃんとホームページがあります。
    
そのホームページに掲載されている、2016年2月19日付「マイナス金利の導入に伴って生ずる契約解釈上の問題に対する考え方の整理」という題の5頁のペーパーに、「普通預金や定期預金の金利としてマイナスの値を定めて利息をとることは『できないと考えられる。』と書かれていることになります。
   
そこで内容確認をしてみましたが、 
    
4.  預金について
    
銀行その他の預金受入金融機関は、市中金利がマイナスとなった場合に、普通預金・変動金利定期預金などに適用される店頭表示利率としてマイナスの値を定め、その絶対値を用いて計算した金額を利息支払日に預金残高から差し引くことができるか。
      
     
この点、金銭消費寄託における利息も、通常は、金銭消費貸借における利息と同様に、預金入金融機関が預金者に支払うべきものであり、預金者が支払うべきものとは解されない。金約款(規定)上も、預金者からの支払は予定されていない。
   
したがって、寄託の対価又預金口座を通じたサービスの対価を預金約款に従って徴収する余地はあるにしても、市中利がマイナスとなった場合に、普通預金・変動金利定期預金などに適用される店頭表示利としてマイナスの値を定め、その絶対値を用いて計算した金額を利息支払日に預金残高か差し引くことは、預金当事者の合理的な意思解釈によれば、できないと考えられる。
   
がその箇所となります。
   
根拠は、「当事者の合理的意思」 ということです。
      
       
銀行の前身となる ゴールドスミス は手数料をとって、お金を預っていましたが、今日はそうではないというわけか。

「法令データ提供システム」の法令用語検索 [豆知識]

法令データ提供システムの 法令用語検索 を使えば、

検索しようとする、特定の用語が使われている 法令とその条文 を検索が可能です。

 

「債権回収」を例に 法令用語検索 では 何ができるのかを試してみます。

まず、検索窓に 「債権回収」 と入力して検索すると、用語検索結果一覧画面に 「該当件数 36件」 と表示され、その下に、

36件の法令について、「該当法令名」と「該当法令番号」を記した 一覧表が出てきます。 

 

36件の法令は、検索単位を「法令単位」として検索した結果となりますが、「本則中の条単位」を検索単位にして検索してみますと、

検索結果一覧画面に「該当件数 80件」と表示され、その下に、

「該当法令名」と「該当法令番号」に加えて、「条番号」が記された 一覧表が表示されることになります。

下図は、「本則中の条単位」で検索した際に、該当件数80件と表示された「検索結果一覧画面」のキャプチャー画面ですが、このような画面が出てきます。 

用語検索結果一覧画面(「債権回収」) (2).jpeg         

 

「検索結果一覧画面」のすぐ下に「本頁の全案件の内容を表示」をクリックすると、検索用語が赤字で表示されている、80件の法令の条文を一覧することが可能です。

個別の条文を選択して確認してみたいときには、左端の「選択」欄をチェックし、「選択した案件のみ内容を表示」をクリックすれば 個別の条文の用語が使われていく箇所を確認できます。 

 

ところで、「債権回収」について、検索結果一覧画面に出てくる法令の条文を見てみますと、すべて、サービサー法、つまり 債権管理回収業に関する特別措置法(平成十年十月十六日法律第百二十六号) と関係したものでした。

「債権回収」という用語は、サービサー法制定前は、法文上存在しなかったことになるようです。意外。

 


国民生活基礎調査と労働力調査における「非正規の職員・従業員」 [豆知識]

厚労省は、国民の健康、医療、福祉、年金など国民生活の基礎的 な事項に関し、1886年(昭和61年)から 国民生活基礎調査 という調査を実施しています(「平成26年 国民生活基礎調査の概況参照)。

この国民生活基礎調査の「用語の説明」では、「正規の職員・従業員」「非正規の職員・従業員」について次の説明をしています。

                                        記 

9. 「正規の職員・従業員」及び「非正規の職員・従業員」は、次の次の勤め先での呼称の分類による。

(1)  正規の職員・従業員とは、一般職員又は正社員などと呼ばれている者をいう。

(2)  非正規の職員・従業員とは、以下の呼称で呼ばれている者をいう。

ア  パート、アルバイト 

就業の時間や日数に関係なく、勤め先で「パートタイマー」、「アルバイト」又はそれに近い名称で呼ばれている者をいう。

「パート」か「アルバイト」かはっきりしない場合は、募集広告や募集要領又は雇用契約の際に言われたり、示された呼称による。

イ  労働者派遣事業所の派遣社員

労働者派遣法に基づく労働者派遣事業所に雇用され、それから派遣されて働いている者をいう。この法令に該当しないものは、形態が似たものであっても「労働者派遣事業者の派遣社員」とはしない。

ウ  契約社員

専門的職種に従事させることを目的に契約に基づき雇用されている者又は雇用期間の定めのある者をいう。

エ  嘱託

労働条件や契約期間に関係なく、勤め先で「嘱託職員」又はそれに近い名称で呼ばれている者をいう。

オ  その他

上記ア~エ以外のものをいう。(以下略) 


非正規の職員・従業員を、 「パート」、「アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員」、「嘱託」と分ける基準が こんなんだなんて ご存じでしたでしょうか。 
     
「派遣社員」と「契約社員」については、「派遣社員」が「労働者派遣法に基づいて労働者派遣事務所に雇用されて、働いている者」、「契約社員」が「専門的職種に従事させることを目的に契約に基づき雇用されている者又は雇用期間の定めのある者」という定義に基づいて分類されています。
          
ですが、「パート」、「アルバイト」、「嘱託」については、『呼称』がどうかによって分類されることになるそうです。結構、いい加減ですね。
     
      
   
ところで、先月29日のブログ(「マクドナルドのアルバイト」)で引用した、厚労省の「正社員転換・待遇改善に向けた取組」のページの「非正規雇用」の現状と課題」[283KB](同資料1頁目の【正規雇用と非正規雇用労働者の推移】は下に引用)という資料では、
非正規労働者を 「パート」、「アルバイト」、「派遣社員」、「契約社員」、「嘱託」、「その他」の6つに分類しています。
 
脚注をみてみると、
    
5)非正規雇用労働者:勤め先での呼称が「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」である者。
     
との説明がされています。
           
こちらは総務省統計局の 労働力調査 をベースにした整理がされているようですので、「労働力調査 用語の解説」を見てみると、
 
<雇用形態>
     
会社、団体等の役員を除く雇用者について,勤め先での呼称により,「正規の職員・従業員」,「パ-ト」,「アルバイト」,「労働者派遣事業所の派遣社員」,「契約社員」,「嘱託」,「その他」の7つに区分した。
    
なお,「正規の職員・従業員」以外の6区分をまとめて「非正規の職員・従業員」として表章している。
 

と解説されています。勤め先での呼称による分類

 

労働力調査では、「労働者派遣事業者の派遣社員」も、「契約社員」も、(国民生活基礎調査の場合とは違い、) 勤務先での呼称による分類であるかのような解説がされていますが、

国民生活基礎調査と、「労働者派遣事業者の派遣社員」と「契約社員」については定義が違うのも変な話なので、

解説の方が正しくないのではないでしょうか?

 

正規雇用と非正規雇用労働者の推移.jpg 

「守衛長の見た帝国議会」 [豆知識]

憲政記念館の書庫に保管されている、守衛長(旧帝国議会時代の院内警察の長)や守衛が、「事故録」、「守衛報告」、「守衛長報告」として残した事件の顛末書を素材に、憲政記念館で憲政資料の調査・収集・展示をされていた渡邊行男氏が著した「守衛長の見た帝国議会」を 読みました。
   
 
衆議院内で、議員同士間の殴打事件が頻発しているには 驚きます。
   
意見に賛成しないというだけで、本当に、すぐに殴ったりしています。それだけ真剣だったのかもしれません。
        
 
トリビアを一つ。    
   
会期の延長など あまりなかったためなのか、大正14年(1925年)9月には、
 
(前々年の関東大震災のため試験会場がないという特殊事情があったためなのかもしれませんが、)                                                              
閉会中の衆議院・貴族院を、弁護士試験の受験会場として使い、試験が行われていることが本の中で出てきます。
    
   
衆議院と貴族院の両院を使って大正14年9月11日に予定されていた弁護士試験の当日に、受験生が「試験委員に違法あり」と騒いで、試験をボイコットしたため試験を終えることができず、翌週18日には、警察官に警戒をしてもらい、再度、試験を実施することになったとの顛末が、下記のとおり、記されていました(112~113頁)。 
                                                             
 
 
〇弁護士試験受験者騒擾のこと 
    
同年九月十一日  同
    
本日、目下両院内に於て執行中なる約千五百名の弁護士試験受験者は、午前九時入場後、試験委員に違法ありと称して受験を肯定ぜず、委員長に面第を強要し、或は正門内広場に集合して演説を為す等、徒に騒擾を事として時間を空過し、午後二時頃より三々五々首相官邸に到りて漸く四時頃全部退出し、遂に試験を執行する事能はざらしめたり。
    
又本日十八日試験施行の際は、警視庁相川監察官、宮沢日比谷署長以下百数十名の正私服警察官来院警戒せり。 
 
     
                

守衛長の見た帝国議会 (文春新書)

守衛長の見た帝国議会 (文春新書)

  • 作者: 渡辺 行男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 新書

 

信託銀行の「遺言整理業務」の手数料 [豆知識]

年度末なので記録を整理していたら、とある信託銀行が出している「遺産整理業務」のパンフレットが出てきました。

「遺産整理業務」とは、信託協会のホーム「よくあるご相談(Q&A)」では、

Q  信託銀行等の遺産整理業務とはどのような内容ですか。

A  信託銀行等の遺産整理業務は、相続の開始後に相続人全員の委任を受け、信託銀行等が代理人となって財産調査、財産目録の作成を行い、「遺産分割協議書」に基づく遺産の分配・債務の支払・相続税の納付等の遺産相続手続を行います。

との説明がなされている、信託銀行が取り扱う、相続関連の業務です。

 

この「遺言整理信託」については、一般に「報酬が高い」と言われているものです(DIAMOND onlineのダイヤモンド社書籍オイライン「相続に困ったら最初に読む本」の著者曽根恵子さんの2014年12月8日の記事 「費用は割高、アドバイスも期待できない  遺産整理よりも分割案、二次対策が重要」参照)。 

 

パンフレットは、依頼者の方にお願いして、信託銀行からもらっていただいたものでしたが、すっかり忘れていました。

「遺言信託」のパンプレットもそうですが、「遺産整理業務」のパンフレットは、信託銀行の店頭にも置かれてなどいません。

店内のお客様担当の行員に 「パンフレットをください」と言っても、「ご相談をしていただいた上でしか、お渡しできないことになっている」などと言われて、パンフレットを渡してはくれません。

試していただけば分かることです。

 

さらに、信託銀行の相談窓口でパンフレットを欲しいと言っても、信託銀行の行員は遺言整理業務契約のクロージングが見込めそうな、「これは」という客にしかパンフレットを渡してくません。

パンフレットはそういう代物です。 

 

では、やっとのことで入手した「遺産整理業務」のパンフレットですが、手数料についてパンフレットでは、

 

手数料等(平成24年4月1日現在)

遺産整理業務の手数料

相続・遺贈財産に係る当社所定の相続評価額(※)(消極財産控除前)に対し、A、Bの計算を行った合計額とします。

 A  当社にて契約中の預金・信託商品などの金銭債権および当社が募集・販売・仲介した投資信託・国際・保険商品・金融商品などに対して  -  0.315%

 B  上記A以外の財産に対して

●  5,000万円以下の部分  ……………  2.1%

●  5,000万円超1億円以下の部分 …  1.575%

●  1億円超2億円以下の部分  ………  1.05%

●  2億円超3億円以下の部分  ………  0.84%

●  3億円超5億円以下の部分  ………  0.63%

●  5億円超10億円以下の部分  ……  0.42%

●  10億円超の部分  …………………… 0.315%  

※遺産整理業務の最低手数料額は上記計算式に関わらず105万円といたします。

※遺産整理に関し、特別の手続きを要する場合は、規定の手数料以外に別途、特別の手数料をいただく場合があります。(例 : 海外に相続人がいる場合の海外渡航費用など)

  (全て消費税混み)

 

(※) 相続財産評価の例

  (略) 

 

◆ その他諸費用

以下の費用をはじめ遺産整理実行に必要となる実費はお客さまのご負担となります。

●不動産登記に関する登録免許税や司法書士手数料

●戸籍謄本、固定資産評価証明書などの取り寄せ費用

●預貯金などの残高証明書などの発行手数料

●鑑定評価手数料

●不動産売却手数料

※準確定申告、相続税申告などにかかる税理士報酬など必要な場合があります。

 

と書いてあります。

 

ため息が出ませんか。 


即応予備自衛官 [豆知識]

逮捕者の職業が「即応予備自衛官」と報じるニュースで、

「即応予備自衛官」と呼ばれている、有事の際に自衛官として働いてくれる、非常勤の特別職国家公務員がいることを知りました(防衛省・自衛隊のHP「即応予備自衛隊とは」)。

 

予備自衛官については何とはなく、聞いたことがありましたが、

即応予備自衛官は、3種類ある予備自衛官制度の一つになります(防衛所・自衛隊のHP「予備自衛官制度の概要」)。

即応予備自衛官は年間30日の訓練に参加しないといけないため、即応予備自衛官を雇用してくれる企業に対し年額51万円の雇用即応予備自衛官雇用企業給付金を支給することにより、即応予備自衛官の雇用確保を図ってもいるんですね(同HP「即応予備自衛官雇用企業給付金」)。 

 

予備自衛官の員数は、

予備自衛官        47,900人

即応予備自衛官    8,175人

予備自衛官補       4,600人 

で、結構な数です(同HP「防衛省・自衛隊の人員構成」)。 

 

予備自衛官については 自衛隊法第66条第2項 で 47,900人と、即応予備自衛官については 同法第75条の2第2項で 8,175人と、規定されています。ですが、予備自衛官補 4,600人 については 同法第75条の9第2項 では「防衛省の職員の定員外」と規定するだけで、員数が規定されていません。

「防衛省・自衛隊の人員構成」では「定員数は法令上の定員」と記載されていますので 予備自衛官補の定員の根拠規定はどこかに規定があるのでしょうが、残念ながら見つけることができませんでした。

 

ところで、予備自衛官補には 技能区分枠での採用があり、「法務」枠での弁護士、司法書士の採用ttるようになったことご存じでしたか。 


ワーク・ライフ・バランス [豆知識]

「ワーク・ライフ・バランス」って、「働き過ぎは減らして、家庭生活を大切にしましょう」という考えのことだと思っていました。
  
   
でも、「ワーク・ライフ・バランス」とは、
 
老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態
 
と定義される概念のようです(平成19年7月24日男女共同参画会議 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門委員会「『ワーク・ライフ・バランス』推進の基本的方向 報告」参照)。 
 
    
 
内閣府のホームページの「仕事と生活の調和とは(定義)」には、ワーク・ライフ・バランスが 他ではどのように定義されているかを整理していますが、
   
働き方は自分が決める 
   
が、ワーク・ライフ・バランスの中核をなしている考え方の一つであることは間違いなさそうです。
 
     
 
と言うことは、
   
ワーク・ライフ・バランス と ワーカホリック という働き方は 何ら矛盾しないことになります。
   
   
誤解をしていました。  
 
 

閏年に関する法令上の規定 [豆知識]

新聞のコラムを見ていたら、閏年の法令上の根拠が 明治31年勅令第90条 にあるようなことが書かれていました。
     
総務省法令データ提供システムで明治31年勅令第90号を調べてみると、 
   
明治三十一年勅令第九十号(閏年ニ関スル件)
(明治三十一年五月十一日勅令第九十号)
    
神武天皇即位紀元年数ノ四ヲ以テ整除シ得ヘキ年ヲ閏年トス但シ紀元年数ヨリ六百六十ヲ減シテ百ヲ以テ整除シ得ヘキモノノ中更ニ四ヲ以テ商ヲ整除シ得サル年ハ平年トス
  

というものが出てきます。やはり、この明治31年勅令第90号が 閏年の定めに関する現行法 であるようです。

 

ところでここに出てくる、「神武天皇 即位紀元元年」とは何時のこと なのでしょう。

昭和15年(1940年)が「紀元二千六百年」の紀元節であったことは、私の年代としては知識としては知っていますが、「神武天皇即位紀元元年」について法令上、どう定義されているのでしょう。

 

明治5年太政官布告第342号に書かれているようで、国立国会図書館近代デジタルライブラリーでこの太政官布告を確認してみると、

〇第三百四十ニ號  (十一月十五日)(布)

今般太陽暦御頒行  神武天皇御即位ヲ以テ紀元ト被定候ニ付其旨ヲ被爲メ來廿五日祭典被執行候事  但當日服者参 朝可憚事 

という規定で、神武天皇御即位が定められているわけではありません。

 

グレゴリウス暦への改暦に関しての明治5年の太政官布告(明治5年太政官布告第377号)の方にも何も触れられていません。

総務省法令データ提供システムで「神武天皇」でキーワード検索をしても、ヒットするのは明治31年勅令第90号だけです。 

紀元前660年 は、日本人であれば常識ということなのでしょうか。

 

レファレンス協同データベース」と呼ばれる、国立国会図書館が全国の図書館等と共同で構築している、調べ物のためのデータベース の質問の中に、今回のブログの内容と関連している質問がなされているのを見つけました。

明治31年勅令第90号や、明治5年太政官布告第342号が現行法上も有効なのかを尋ねたものですが、同じような疑問を持つ人が世の中にいるんですね。 

 


地裁・区裁・簡裁の新受件数(明治8年~平成11年) [豆知識]

林屋礼ニ先生の「明治期民事裁判の近代化」では、司法省民事統計年報を整理して、明治8年(1875年)から平成11年(1999年)までの、民事訴訟の第一審新受件数の推移をグラフ化した表が125頁に掲載されています(下図は同頁のグラフを引用させていただいたものとなります。)。

区裁判所とは、戦前の、大審院-上等裁判所-地方裁判所-区裁判所 と四種類設けられた裁判所の一つで、地方裁判所とともに第一審裁判所となった裁判所のことです。

 地裁・区裁・簡裁の新受件数(明治8年~平成11年).jpg

明治8年の民事訴訟の第一審新受件数は 32万3588件 であったということです。

明治初年の日本の人口は 3555万人で、現在の3分の1弱に過ぎなかったということですから、

人口が3倍強である今日的に見れば、地裁・簡裁の第一審民事訴訟が 年間100万件 提起されているという感覚ということになります。 

 

明治8年以降の紛争事件数は勧解(今日の調停に相当する制度)の事件数を加えるとかなりの数に数になることを「司法省民事統計年報」から知った学者からは、ほんらい日本人は権利の主張に積極的であったのに、その後、政府によって訴訟の抑制政策が採られた結果として事件数が減じてきたという見解が唱えられてきているそうです。

 

こんな話し、初めて聞いて、驚かれませんでしたか。 

 


明治期民事裁判の近代化

明治期民事裁判の近代化

  • 作者: 林屋 礼二
  • 出版社/メーカー: 東北大学出版会
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本